気弱で病弱な男爵令嬢のポレットは、空気が綺麗なところで療養するために、老竜ファームに滞在することになった。老いた竜、怪我をした竜が余生を過ごす場所である老竜ファームで、竜との日々が始まる。
この物語の中では、竜は神の眷属として存在します。老竜ファームという設定も新鮮です。
怖い見た目ながらも穏やかなトマさんや、口が悪いけど根は優しいフェナン。言葉を発さない竜を心配し、気遣う気持ちはみんな同じ。
竜舎員や竜騎士の竜への寄り添い方や、思いやりに触れ、竜のそばで日々を過ごしていくうちに、ポレットは体だけでなく心にも変化が生まれていく。
切なさと温かさと。心穏やかになれる物語です。
ポレットは持病の療養のため、老竜ファームに滞在することになった。そこで出会ったのは老いた竜や傷ついた竜、そしてそんな竜たちに寄り添う竜舎員たちだった。
竜の設定がとても神秘的で壮大です! 加えて、その裏に大きなドラマが隠れている予感がしっかりとありました。
人は時に身勝手で、周りを巻き込んで色々なものを傷つけたり傷つけられたりするけれど、他者を思うことができるのもまた事実です。
その思いやる気持ちもまた、すれ違ったり現実に阻まれたり、噛み合わないことがあります。
自と他、現実と願いの間で、傷をもつ者たちは何を見つけるのか。
優しく、切なく、夜に淡い光が差し込むような物語。
竜は天空の神様から人間のもとに遣わされた存在。
雌雄の区別もなく、生殖ではなく、人が神に祈ることで地上に顕現し、戦えなくなれば天に還される。
そして、その竜に乗った騎士たちが「強い竜を遣わされた我が国こそが最も神から愛されている」と争い合う世界。
タイトルにもある老竜ファームは、そんな戦うための存在が、戦えなくなった時の行き場所。
老いた竜、怪我をして戦えなくなった竜、元々戦えない理由がある竜。
天に還してしまってもいい存在を生かし続けるのだから、それだけで優しい場所。
そこにやってくる主人公ポレットも、自分の役割を果たせないコンプレックスの持ち主。
男爵令嬢として政略結婚を期待されているのに、持病もちではそうもいかず。
でも、老竜ファームは人も竜もなんだか優しく包み込んでくれます。
ここからポレットがどんな答えを見つけ出すのか、期待がふくらみます!