第3話 想定外の最悪
「あれ、岩塩あるじゃん」
どうやら「国」という単位になっているだけあって、女帝様による躾……というより、序列付けだろう。は、そこそこ時間がかかっていた。だから岩山の頂上外周を1周と言わず、少しずつ高さを下げながらぐるぐる回っていたんだが。
その途中で、周りとちょっと色が違うというか、氷みたいに白く濁った透明になっている場所があったんだよな。でも触ってもそこまで冷たくない。って事で、試しにスマホで「採取」してみたんだが。そこには「岩塩」の表示があった。
塩は何にでも使う。保存食や料理にも使うが、一部毒草の毒抜きとか薬の味を調えたりとか、量が入る前提であれこれ使うものだ。だから「海水」をごっそり「採取」して「底なしの鏡」で持ち込んだんだが、「岩塩」があるなら話は変わってくる。
「ワゥ?」
「舐めない方がいいぞ、しょっぱいからな」
「ワン!」
良いお返事なんだが、それでいいのか。女帝様と番の竜王の子供で生まれついての竜狼だろお前。生き物の格としてだけなら何ならドラゴンより上だろうが。アホ可愛い大型犬やってる場合じゃないだろ。
と、おチビ自身に言ってもどうやら効果が無いので、見た目よりも実年齢が低いのだと思う事にして。「岩塩」があるという事は、他にも色々有用資源がある可能性が高いって事だ。少なくとも今までの『Magic Sand』シリーズだとそうだった。
ただ、「岩塩」があるって事は、そこそこ無理をすれば一応生きていけなくもないって事でもある。何しろここは番の竜王が言っていた通りなら「
「ワフ?」
と、ここでおチビが「岩塩」から視線を外し、鼻を上げて空気の匂いを嗅ぎ始めた。耳もくるくる動いてあちこちの音を拾っているようだ。これは当然、警戒の仕草である。
「自動転送」先を「底なしの鏡」に設定していたから、右手にスマホ、左手にシンプルで艶控えめな金色の手鏡、といった見た目の「底なしの鏡」を持っている状態だった。
まぁだがおチビが警戒するという事は、何かいるんだろう、と、まずスマホを革鎧の下に作った、飛び出し防止の工夫をしたポケットに入れる。続いて別のポケットに「底なしの鏡」を
「かがみ――――っ!」
しまおうとしたところで。
しゅぱっ、と、何かが「底なしの鏡」を、掠め取っていった。
「な……っ、返せ!!」
「ワンッ!」
かがみかがみかがみ、と連呼しながら走り去っていったそれは、まぁ返せと言ったものの追いつける速度じゃない。……んだが、おチビが流石のステータスで猛追してくれた。おチビぐらい大きければ、何とかあの速度でも見失わない。開けてる場所で良かったとは思ったが。
装備補正を全開に追いかけるが、その何かが青くて細長い、到底人とは思えない大きさと形をしている時点で既に嫌な予感がしていた。そしてそれは、その泥棒が、一見そうとは見えない岩の隙間に滑り込んで消えた事で確信へと変わる。
流石におチビもその穴の手前で止まって、穴の周りをぐるぐる回っていたが、無理に入ろうとしないだけ賢いな。
「……やられた……」
「キューン……」
「おチビは悪くない。あれは、それこそ女帝様ぐらいでなきゃ無理だ」
耳も尻尾も垂れ下がった状態でお座りしてるおチビに、穴を睨みながらそう声をかける。あれは無理だ。むしろ、逃げ切らせずに逃げた先を特定できただけで上等だ。
あぁしかし、女帝様にどう説明したもんか。ギリギリ一応、それこそあのカーゴが壊されたとかで単独行動せざるを得なくなった時とかに備えて、一応3日分ぐらいの準備と最低限の設備、後は無くすと流石に血反吐な高級設備、レア素材はスマホに格納しているが……。
なんて、穴を睨んだまま痛み出した頭を押さえていたところに、ぶわっと風が吹いた。
『
「…………まず弁明させて頂いても宜しいでしょうか」
『ふむ?』
いや。いや確かに、女帝様ぐらいでなきゃ無理だとは言ったが。
というか、終わったのか。終わったんだな。きっと野生の世界における順位付けは終わったんだ。そして終わったから、探しに来てくれたんだろう。たぶんそう。お腹減ったからご飯係を探してたのかもしれないけど。
けど、だな……その、ご飯が。今まさに、盗まれた所、なんだよなぁ……。それも、前提条件を色々説明した上で、絶対厄介な奴が犯人で、何なら既に「底なしの鏡」ごと中身の荷物は失われているっていう……。
あ、キツい。痛い。本当に大事なものは電池消費がかさむのを覚悟の上でスマホに格納していたとはいえ、ここまでの努力が実質無に帰したって言うのを改めて認識すると辛い。
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