第2章
記憶の花庭師に案内されながら、エリカは温室の奥へと進んだ。
そこには特別に美しい一角があった。
古い柱時計が中央に立ち、その周りに色とりどりの小さな時計が咲き誇っている。「これは君の祖母の庭だ」庭師が柔らかく言った。
柱時計に近づくと、エリカは息を呑んだ。時計の文字盤に、懐かしい光景が映し出されていたのだ。
幼い自分が祖母と台所でクッキーを焼いている場面、一緒に星を見上げた夜、病床で祖母が手を握ってくれた最後の日...
「祖母は、私との時間を...」
「大切に育てていたのだよ」庭師は頷いた。
「君との思い出は、彼女にとって最も美しい花だった。しかし...」
庭師の表情が曇る。
「君の祖母がいなくなった今、この庭を世話する人がいない。時の花は、愛がなければ枯れてしまう」
実際、よく見ると、いくつかの時計は既に色あせ始めていた。秒針の動きも鈍くなっている。
「私に...何ができるでしょうか?」
庭師は如雨露をエリカに差し出した。
「君がここを継いでくれるなら、祖母の想いも、そして多くの人の大切な時間も守ることができる。ただし」老人の目が真剣になった。
「時の庭師は、自分の時間を犠牲にしなければならない。君の青春も、恋も、未来への夢も、この庭と共に流れることになる」
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