第14話 ワトの部屋は?

 ワトはほぼ毎日僕の部屋に来るが、僕は中学生の三年前ワトの部屋で宿題して以来、行った事が無かった。

 ワトが毎日押しかけて来るので、あえて会いに行く必要が無いのと、思春期の健全な男子の僕は女性の部屋は気恥ずかしく避けたい気分だった。


 それが、なぜワトの部屋に行く事になったと言うと、夏休みの宿題最後の難関、読書感想文だ! ワトが感想対象の本を選んで欲しいって頼みに寄る。


「おい? サンドバッグにダンベル? 何じゃこの部屋!! こんなの女子高校生の部屋じゃ無いぞ!」


「ジムや道場に行かず、手軽に身体を鍛えられる! 良い部屋だろう」

「いやはや何とも……考え様ではワトらしい部屋と言える?」

「誉めるな! 照れるぞ!」


 全く誉めて無いが、毎日繰り返される会話だな。


「それより、何じゃ! この本箱! コミックだけじゃ無いか!! このコミックの読書感想文書くのか?」

「誰も遣らない事をやる!! フロンティアスピリットだよ」


「無駄に格好良く言ってるが、文学とか読むのたいぎなだけだろ!」


「ホームス! 凄い推理! その通りだよ!」

「いやいや、推理無用の分かり易いワトの事、僕なら全てお見通しだぞ?」

「嬉しい! 小学生の時ホームスが言ってくれた『ワトと結婚する』以来の、愛を感じる言葉!!」


 ん? 今の会話の、何処に愛を感じた? ワトの思考は難解だ。


「バリバリの文学書『芥川龍之介』の『桃太郎』は、平和な鬼ヶ島に侵略殺戮する桃太郎の話、空想科学小説みたいで面白いぞ」

「ん? 桃太郎って、大きな桃がドンブラコの童話だろ?」


「本当の桃太郎の童話は『天界の桃千年に一度、ヤタガラスがツツク、桃は流れ洗濯中のお婆さんが拾う、天界の桃を食べたお爺さんとお婆さん、霊験新かな天界の桃、若返ったお爺さんとお婆さんは、夜励み桃太郎が生まれた』ってのが明治政府と文部省がでっち上げた今の桃太郎の前に、ずっと伝わって来た本当の童話桃太郎だぞ」


「お爺さんとお婆さんが若返って、桃太郎を生むって生々しい話だね」

「芥川龍之介は明治政府でっち上げの、新桃太郎普及の助けとし、桃太郎入りの大きな桃って話を書いたみたいだ、従って龍之介の異色作に成った」


「ホームスのお勧め、感想文、芥川龍之介の桃太郎にする!」





 ワトの感想文。

『今回は、芥川龍之介の異色作【桃太郎】の感想文にした。

 明治政府が改ざんし伝わって来た、桃太郎入りの大きな桃、芥川龍之介はこの改ざんされた桃太郎の童話を普及させるため、この小説を随筆した様だ。


 平和な鬼ヶ島を侵略する桃太郎と犬猿雉。

 殺戮と暴行を繰り返し、宝を強奪し凱旋する。

 この所が、龍之介らしい捻った話として面白く読めた。


 又もヤタガラス桃をツツク、独裁者がまた現れるだろう。

 最後の一文はアドルフ・ヒットラーを思い浮かべさせる。

 龍之介には珍しいSFを感じさせた。』


 ワトってやれば出来る子! 脳筋バカじゃ無かった。


 今回推理の出番は無かったが、ワトにチョッと惚れ直した? 気分だった。

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