Chapter.4 風鈴とマッサージ

//SE ルルテアナが魔道具屋のドアを開き、ドアベルが鳴る音

//SE ふたりが魔道具屋の店内に入っていく足音

//SE ドアが閉まる音


「ふう……やっぱり、お店に戻ってくると安心感がありますね」


//手提げかごを見せながら

「改めてありがとうございます、後輩さん。後輩さんのおかげで、ルリラダケも貝殻もばっちり集まりました!」


「……一日店員さんとして次にやること、ですか?」


「そうですね……」


(ルルテアナが窓を見ると、外はすっかり夕暮れどきになっている)


「思ったより時間が経つのが早くて、もう夕方になっちゃいましたし……今からお店を再開しても、余り人は来ない気がします。だから、後輩さんの一日店員さんとしての使命は、これでおしまいです……」


「…………」


「おしまいでは、ありますがっ!」


//SE ルルテアナが主人公の服の袖を掴む音


//少しばかり掠れた声で

「――まだ、帰らないでほしいです」


「後輩さんは、夜に外せないご予定があったりするんですか……?」


//嬉しそうに

「ほ、本当ですか!? 後輩さんも、まだ、わたしと一緒にいたいと……!?」


「にへへ〜……」


「……はっ、ちょ、ちょっとわたし、今、表情がだいぶ緩んでいたかもしれません……! 忘れておいてください! すっかり、跡形もなく!」


「……かわいい?」


「だ、だから、唐突にそういうことを言ったら、だめですってば!」


//小声で

「だって、どきどきしちゃいますもん……」


「な、ん、で、も、ないです! 後輩さんのすぐに詮索する癖は直した方がいいです! これは先輩命令ですからね? わかりましたか?」


「そうしたら、これから何をして過ごしましょうか……」


//何かを思い付いたように

「……はっ!」


//にこにこしている感じで

「いいことを思い付きました! 聞きたいですか、後輩さん? 聞きたいですよね? そうですよね、それでは心してお聞きください」


「後輩さんが、一日店員さんとして付き合ってくれたお礼として。今からわたしが、日頃から頑張っている後輩さんの疲れを取ってあげます!」


「余りピンと来ていないようですね? 取り敢えず後輩さんにはふかふかの椅子に座ってもらって……少し待っていてくださいね!」


//SE ルルテアナが店の奥の方へ歩いていく音

//SE ルルテアナが店の奥から椅子を運んでくる音


「よいしょ、よいしょ……」


//SE ルルテアナが主人公の前に椅子を丁寧に置く音


「……ふう、無事に持って来れました! さあ、後輩さん、どうぞお座りくださいね」


//SE 主人公が椅子に座る音


「ふかふか、ですか? ふふ、それは何よりです」


「あ、ついでにあれも持って来ましょうかね……」


//SE ルルテアナが店内を歩く音

(立ち止まり、棚にあった風鈴を手に取る)

//SE ルルテアナが店内を歩く音、移動に合わせて揺れる風鈴の音


「見てください、後輩さん。綺麗な風鈴でしょう? 色とりどりのお花の模様が淡く描かれていて、わたしのお気に入りなんです」


「それだけじゃなくて、手をそっとかざすと――」


(風鈴が風もないのに揺れ始める)

//SE 風鈴の綺麗な音


「……ね? 風がなくてもこうやって、美しい音を響かせてくれるんです」


「聞いていると、何だか気持ちが落ち着いてきませんか?」


「ふふ、嬉しいです! そうしたら、この風鈴はそこの壁にかけておきましょう」


//SE ルルテアナが店内を歩く音

(風鈴を壁にかけて、戻ってくる)


「それでは、後輩さん。両手、出してくれますか?」


「ありがとうございます。手の力、抜いていてくださいね……」


//SE ルルテアナが主人公の両手をマッサージする音


「……何をしているか、ですか? 後輩さんの手をマッサージしてあげているんです」


「冒険をすると、やっぱり手に疲れが溜まっちゃうでしょう? これは先輩として、しっかりほぐしてあげないといけませんからね」


「どうですか、痛くないですか?」


「……気持ちいい? ふふっ、それならよかったです」


「それにしても、後輩さんの手、大きいですね……わたしの手とは、全然違います。やっぱり、女性と男性だからでしょうか?」


「大きくて、温かくて……触れていると何だか、安心します」


//少し驚いたように

「……わたしの手も、温かいんですか?」


「何だか、言われてみると照れますね……何ででしょう……」


「…………」


「な、なんか話題を振ってください、後輩さん! 沈黙が、照れを加速させてしまうので!」


「す、好きな食べ物ですか? これはまた、随分とありきたりな話題が来ましたね……」


「そうですね、何でも美味しく食べますけど……後輩さんと一緒に食べると、より一層美味しく感じられるような……」


「……結局照れが加速するんですが!?」


「お、おしまいです! 手のマッサージは、ここまで!」


「そうしたら、次です、次!」


//SE ルルテアナの足音

(主人公の後ろに回り込む)


「今度は、肩の力を抜いていてくださいね。いきますよ……」


//ルルテアナが主人公の肩を揉む音


「ふふ、驚きましたか? 今度は肩揉みという訳です」


「というか、後輩さん、すごく肩凝っていますね……まるで岩石のようです」


「でも、先輩のわたしに任せてください。岩石のような肩を柔らかくするのは、得意分野ですから!」


「お父さんに、時々やってあげているんです。すごく喜んでくれるんですよ」


//少し寂しげに

「……昔は、お母さんにもやってあげていました。多分、今よりもずっと下手でしたけど……ありがとうって言ってくれるのが、子ども心にも、とても嬉しかったんです」


「懐かしいな……」


「……あ、すみません。つい、思い出に浸っちゃいました」


「そういえば。後輩さんは、どんな食べ物が好きなんですか? 先程、聞き返せていなかったなと思って」


「……目玉焼き? それはまた、随分とシンプルなお料理が好きなんですね。ふふっ」


「ちなみにわたしは、卵料理ならスクランブルエッグが好きです。ふわふわなあの食感、堪りません……!」


「え? かわいい!? ふわふわが好きなところが!?」


「だ、か、ら、かわいいって軽率に言うのはだめだって、何度言ったらわかるんですか!」


//耳元でささやく

「……わからず屋さんには、お仕置きが必要ですよね?」


//ルルテアナが主人公の左耳に息を吹きかける


//耳元でささやく

「……別に効かない? もしかして後輩さん、強がっているんですか?」


//耳元でささやく

「ふふ、先輩のわたしは全部お見通しですよ?」


//耳元でささやく

「嘘をつく悪い後輩さんには、もっとお仕置きしなくちゃですよね……?」


//ルルテアナが主人公の左耳を甘噛みする

「……かぷっ」


「あははっ、効いたみたいですね! 大成功です!」


「……あれ? よく考えたらわたし、すごいことをしちゃったような……!?」


「あ、あわわわ!」


「肩揉みをするはずだけだったのに、どうしてこんなことに〜!」

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