そして二人は舞台の上でキスをする。

水無月ナツキ

開演

序幕 舞台の上で

 舞台の上にはボクと彼女だけがいた。


 客席にも誰もいない。

 最低限の明かりしかなくて、薄暗い中でボクたちは向かい合っていた。

 彼女はボクよりも高い位置から顔を近づけてくる。


 その唇が向かう先を、ボクは知っていた。

 ……知っていたけれど、ボクはそれを拒むつもりがなかった。

 これをしたらきっともう後戻りはできない。


 今までとは意味が変わってしまう行為だとわかっている。

 二人の関係性が決定的に変わってしまう、そんな予感がある。

 それでもボクは受け入れようと思った。


 彼女の唇がボクの唇に近づいてくる。

 彼女の綺麗な瞳が。

 綺麗な顔が。


 今にも触れるような位置にある。

 ボクと彼女は見つめ合う。

 そしてボクたちは、二人だけの舞台で。



 ――そっと、キスをした。

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