第2話
僕には親友が居る。彼には絵の才能があった。
三郷と三玖。似た名前で呼びあった僕らだった。
僕はあの環境ながらに絵を描き続けていた。それは環境に恵まれた彼とは違う点だった。
五歳の時、一度だけ母が絵を褒めてくれた。まぁ、父に「気持ちの悪い絵」だと言われ、破り捨てられてしまったけれど。
それが今の僕への栄養源となってしまったから、憧れの彼に勝てるはずもない趣味を続けている。
結局一番努力する人間が報われることのなかった。僕には努力の才能はあるけれど、彼ある才能はセンスだった。
夏季に行った、学校の絵のコンテスト。彼は見事に最優秀賞に入賞して、僕は三番目の銀賞だった。
彼は褒めてくれた。「素敵な絵だ」って。僕はその彼の良心を受け止めず、受け止めきれず、あからさまに拒絶する素振りをみせてその場を後にしたのだった。彼に負けたという事実があることにも、僕の方が劣っているということも分かっているのに、飲み込まなかった。
でも後に気付いた。
本当の僕はメダルよりも賞状よりも、手作りのケーキや愛が欲しかった。だからそれらに恵まれた彼に嫉妬したのだった。
彼と普段話しているのが楽しかった。言語化も上手で、気を使わなくて良い相手だったから
高校生の時、嫌いになったはずの彼の背中を勝手に追いかけて、
だから殺した。先生が死んでから二週間記念の今日。久しぶりに街中で出会って、声を掛けられたんだ。いつもと変わらない声で「三玖〜」って。
ひどい日差しの中で彼は言った。
「久しぶり。また一緒に絵を描こう。今の自分の顔がどうであるか見たか?君のことはよく知ってる。けど、だから、な?」
彼が僕の犯したことをもうやめろと言っているように聞こえた。
本当にセンスに塗れた人間だと思ったよ。大嫌いだ。でも大好きだった。
「じゃあ久しぶりにおいでよ。」と、家に呼んで、不意を着いて刺して殺して、彼の遺体は車のトランクに詰めた。
家の中に彼が居ると、輝かしさに耐えれなくなって僕自身も死んでしまいそうだったから。
…最後に車に乗ったのはいつだったっけ。
スマホを起動して、日付を見ると、明後日に予定が入っていることを思い出した。
とりあえず疲れた。眠ろうか。
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