第17話:名はひとつ、想いはふたつ

夜。

丘の上に、俺とラビッチュ――いや、アルネアがいた。

星空が降り注ぐような光の中で、彼女は静かに羽耳を揺らしている。


「……キュ……いや……あの頃……わたしは……。」


か細い声が漏れた。

羽耳が震え、瞳にかすかな記憶の光が宿る。


「覚えているんだな、アルネアだった頃のことを。」


「……守った……こわされた……また……呼ばれた……。」


その声は、悲しみと誇りをまぜた響きだった。


俺はゆっくりと近づき、彼女の額に手を置く。


「……でもな、アルネア。」


「……?」


「お前は、俺の相棒のラビッチュだ。

 草原で笑って、泣いて、俺と一緒に戦ってくれた、かけがえのないラビッチュだ。」


ラビッチュの羽耳がぴくりと動く。

その瞳に、ふっと優しい光が灯った。


「……ラビッチュ……。」


「そう。

アルネアであることも、ラビッチュであることも、どっちもお前だ。

どっちも大事で、どっちも俺にとっての“相棒”なんだ。」


「……キュ……。」


涙のような光が、羽耳の先からこぼれ落ちた。


「だからさ……受け入れようぜ、全部。

お前がアルネアであることも、ラビッチュであることも……。」


俺は両手でその小さな体を抱きしめる。


「――俺とお前は、一緒だろ?」


「……カ……ノン……。」


はじめて、はっきりと声になった。


「……わたしは……ラビッチュ……でも……アルネア……

 どちらも……あなたの……ともだち……。」


胸の奥が熱くなる。

星片が俺とラビッチュの間で光を放ち、ふたつがひとつに溶け合うような感覚が広がる。


《魂同調》

真名:アルネア=ラビッチュ

魂の記録が統合されました


眩い光が丘を包む。

ディルとニール、サリウスが遠くでその光を見上げていた。


「……やったな、カノン……!」


「すごい……あれが、魂の同調……!」


光が収まったとき、俺の腕の中でラビッチュ――アルネアは静かに微笑んでいた。


「……これからも……ずっと……。」


「……ああ。これからも、ずっとだ。」


羽耳が夜風に揺れ、星がきらりとまたたいた。



---


ラビッチュはラビッチュであり、アルネアでもある。

そのすべてを受け入れたとき、ふたりの魂は真に一つとなり、これから先の冒険へと踏み出す。


「行こう、相棒。」

「キュー……アルネア……ラビッチュ……!」


そして――

少年とモンスターの物語は、誰も見たことのない未来へと進みはじめた。

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