《第九章》いざ、コラボカフェへ!!

 十一月二日。土曜日の午前中。

 わたしは姿見の前に立って、凛ちゃんとスマホでビデオ通話していた。

「凛ちゃ~ん、このコーデ、おかしくない~?」

 スマホのカメラを姿見に向けて、全身をカメラに映す。

 凛ちゃんが顎に手を当てて言った。

「え~っと、白いカチューシャに、赤いワンピース、白いカーディガン、白いくつ下ね。あ、ちなみにくつは何をはくつもり?」

「白いロングブーツ。前にいっしょに買ったやつ!」

「ああ、あれね! それとさ、バッグはあれ? 白いショルダーバッグ?」

「うん、そのつもり」

「オッケー! いいと思う。かわいいよ」

「ほんとに? よかったぁ~」

 わたしは、ほっと胸をなで下ろした。

 オシャレ上級者の凛ちゃんに認められたら、安心して氷室くんと会えるよ。

(――あ、ちなみにわたしの服やくつ、バッグは、凛ちゃんと買ったものなんだ!)

 ママからお金をもらったら、凛ちゃんといっしょに買いに行くの。

 凛ちゃん、古着屋にくわしくて、予算内で最高のものを選んでくれるんだよ。

「ふふ、氷室くんとのカフェデート、楽しんできてね~」

「えっ!? そんなんじゃないからっ! いっしょに推し活をしに行くだけだからっ」

 わたしは早口で言った。

「はいはい。――あ、そうだ。次のお菓子だけどさ、フィナンシェが食べたいで~す!」

「了解で~す! コーデチェックしてもらったから、いつもより多めに作るよ」

「本当? やったぁ! それじゃ、がんばってきてね~。切るよ~っ」

「はぁ~い! ありがとね~っ」

 と言って、凛ちゃんとのビデオ通話を切った。

「も~っ、凛ちゃんたらっ。デートじゃないのに~っ」

 『デート』だって意識しないようにしていたのに、意識しちゃうじゃないっ。

 わたしは左胸に手を当てて、すぅ~はぁ~と深呼吸をした。

「とにかくっ、今日は目いっぱい楽しんでこようっと」

 何て言ったって、『涙のダイヤモンド』のコラボカフェに行けるんだもん!

 氷室くんと思う存分推し活するぞ~っ! とわたしは気合いを入れた。


 氷室くんとの待ち合わせ場所は、コラボカフェが開かれているカフェの前。

 カフェの場所は、都心にあるビルの地下一階!

 待ち合わせ時間より十分早めに向かうと、ビルの前に人影が。

(あ! 氷室くんだ……って、うわ、うわ、氷室くんの私服、超大人っぽい!!)

 白いシャツの上に黒いジャケットを着て、黒い細身のズボンをはいている。

 つやつやの革ぐつの色は黒。ショルダーバッグの色は、青!

(ちゃんと蓮さまのイメージカラーのアイテムを持ってきてる~っ!)

 わたしは、ドキドキしながら氷室くんに近づいていった。

 すると氷室くんがこっちを見て、わたしに気づいた。

「あ、萌木さん!」

「氷室くん、お待たせしちゃってゴメンね?」

「いや、おれも今きたところだから……って、その赤い服、結花をイメージしたの?」

「あ、うん、そうなの。結花ちゃんのイメージカラーを身につけて、コラボカフェを楽しみたいと思って。そう言う氷室くんも、蓮さまのイメージカラーのバッグにしたんだね」

「うん、そうなんだ。このバッグ、蓮のイメージに合ってるなって思って買ったやつでさ」

 と言って、氷室くんが青いショルダーバッグをポンポンとたたいた。

「いいね。すごくステキ!」

「ありがとう。萌木さんも赤い色、すごく似合ってるよ」

「ほんとに? よかったぁ~」

 例えおせじだったとしても、ほめられるのはすっごくうれしい!

「――っと、予約時間が近づいてきたから、カフェに行こうか」

 氷室くんが青い腕時計を確認して言った。

「うん! 行こう行こう。楽しみ~っ!」

 興奮して胸がドキドキしてきたよっ。

「おれも、すごく楽しみ」

 氷室くんは弾んだ声を出すと、ビルの階段を降りていく。

 そのあとに続いて、わたしも地下に降りていった。

 二人で地下一階に着くと……何と! カフェの入口横に、結花ちゃんと蓮さまの等身大パネルが設置されていた。二人ともエプロンをつけている。

「……氷室くん、このパネル撮ってから中に入らない?」

「そうしよう。おれも撮りたい」

 二人してバッグの中からスマホを取り出し、パネルの画像を撮った。

 カシャ、カシャと無言で何枚も撮っていく。

「ふう。満足したぁ~」

 と言って、わたしはスマホをしまった。

「おれも満足。それじゃあ中に入ろうか」

「うん。入ろうっ!」

 氷室くんはうなずくと、カフェの扉を開いた。

 カランカランとベルの音が鳴って、すぐに店員さんがやってくる。

 氷室くんはスマホの予約画面を店員さんに見せると、スマホをしまった。

「こちらへどうぞ」と言って、店員さんに席まで案内される。

(うわわわっ、壁一面に『涙のダイヤモンド』のポスターがはってあるっ! しかもポスターごとにイラストが違う。すご~い!)

 ほえ~っとイラストを眺めながら、わたしは店員さんについて行った。

 テーブルまでくると、テーブル横に置いてあった手荷物かごにバッグを入れる。

 そして、氷室くんと向かい合うようにしてイスにすわった。

 テーブルの端にはメニュー表が立てかけられている。

 店員さんは、「ご注文が決まりましたらお呼びください」と微笑んで去っていった。

 氷室くんがメニュー表をテーブルの上に置き、二人で眺める。

「実はおれ、何をたのむか決めてきてるんだ。コラボカフェの特設サイトのメニュー表をスマホで見てさ。蓮をイメージしたメニューを注文するつもり」

「わたしも見てきた! 結花ちゃんのコラボメニューにしようと思ってる」

「それじゃあ注文しようか」

「うん!」

 とうなずくと、氷室くんが片手を上げて店員さんを呼んでくれた。

 氷室くんが「お先にどうぞ」と言うので、わたしから注文することになった。

「えっと、結花のストロベリーミルクと、結花の愛情たっぷりイチゴのショートケーキの二つでお願いします」

「おれは蓮の北極ソーダと、蓮特製・金粉入りバニラアイスで」

 店員さんは注文したメニューを復唱すると、「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」とにこっと笑って言い、去っていった。

 店員さんがいなくなると、わたしはテーブルに身を乗り出した。

「氷室くん、今日はほんと~に誘ってくれてありがとねっ」

「いや、おれのほうこそいっしょにきてくれてありがとう。男一人でコラボカフェに行くのは、さすがに勇気が出なくてさ……。萌木さんがダメだったら、あきらめてた……」

 ほっとした様子で氷室くんが言った。

「そうだったんだ! 役に立ててよかった~」

 と明るく言うと、氷室くんがふっと笑った。

 わわっ、今、胸がドキッとしちゃった!

 急に微笑むなんて反則だよっ。

(て言うか、氷室くんの笑い顔ってステキだなぁ~ってダメダメ! 氷室くんとわたしは、ただの推し活仲間なんだからっ。変に意識したらこまらせちゃうよ!)

 わたしはメニュー表に視線を移して言った。

「あのさ、わたし、コラボメニューといっしょに『涙のダイヤモンド』の単行本を撮りたいんだけど、いい?」

「うん、もちろん。そのあとでおれも撮るよ。単行本の一巻を持ってきてるんだ」

「わたしも一巻を持ってきたの。それじゃ、撮らせてもらうねっ」

 わたしはバッグの中からスマホと一巻を取り出した。

 メニュー表の横に一巻を置いて、スマホを操作し、メニュー表といっしょに撮る。

「うん。キレイに撮れたっ」

「じゃあ、次はおれが撮るね」

「どうぞどうぞ」

 わたしはスマホをテーブルの端に置くと、一巻をバッグの中にしまった。

 今度は氷室くんがバッグの中からスマホと一巻を取り出して、メニュー表といっしょに撮る。とてもしんけんな表情をしていた。

「よし。満足した」

 と言うと、氷室くんもスマホをテーブルの端に置き、バッグの中に一巻をしまった。

 すると店員さんが「お待たせいたしました」とタイミングよくやってきて、テーブルの上に食べものと飲みものを並べていった。

 そのあとで、わたしと氷室くんに、銀色の小さくて平たいふくろを二つずつくれる。

 最後に「当コラボカフェは七十分制となっております」と説明し、「どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」と微笑んで去っていった。

「萌木さん、このふくろの中にステッカーが入ってるの、知ってる?」

「うん! コラボカフェのサイトで確認してきたから知ってるよ」

「そっか。それじゃ、どのキャラが当たったか確認しよう」

「うん!」

 わたしと氷室くんは、店員さんからもらったふくろを丁寧に開け始めた。

 あのね、『涙のダイヤモンド』のコラボカフェでは、一品注文するごとに一枚、漫画のキャラクターが描かれたステッカーをもらえるんだ。

 どのキャラが当たるかはランダム!

 わたしは結花ちゃんが当たりますように! と祈りながら、ふくろの口を開けた。

 ドキドキしつつ、そっと取り出したら――

「あっ! 結花ちゃんのステッカーだっ」

 中から出てきたのはエプロン姿の結花ちゃん!

「お、おれは蓮が当たった!」

 上擦った声で氷室くんが言う。

「えっ、やったね! 推しが当たったね!」

「萌木さんこそ、推しの結花が当たってよかったな」

 興奮した様子の氷室くんに「うん!」と大きくうなずいた。

「ふふっ、二つ目のステッカーはだれかなぁ?」

「開けてみようか」

 と氷室くんが言い、わたしたちは二つ目のふくろを開けた。

 中に入っていたのは…………またまた結花ちゃん!?

「わわっ、結花ちゃんが出た!」

「おれは蓮! こんなキセキってあるんだな……」

 氷室くんがステッカーを見て、目をぱちくりさせている。

「ねぇ、よかったらわたしの結花ちゃんと蓮さま、交換しない?」

「いいアイデア! 交換しよう」

 わたしと氷室くんは二枚目のステッカーを交換した。

 ステッカーに描かれていた蓮さまもエプロンをつけていて、カッコいい!

「わぁ~、結花ちゃんと蓮さまがそろうなんてラッキ~!」

「運がいいな、おれたち。蓮と結花はやっぱり二人いっしょがいいよな」

「そうだね! 婚約者同士だもんね。家に帰ったら部屋に飾ろっと!」

「おれも。部屋の机の上に飾るよ」

 わたしと氷室くんはテンション高く言うと、ステッカーをバッグの中に大切にしまった。

 万一よごれたら大変だもんね!

 それからわたしと氷室くんは、テーブルの上に置かれた食べものと飲みものを、スマホで撮っていった。カシャ、カシャと色んな角度から撮っていく。

「――ふう、満足した。氷室くんは?」

「おれも満足。それじゃあいただこうか」

「うん!」

 わたしは、結花のストロベリーミルクをストローで飲んだ。

 イチゴの甘さと酸っぱさがミルクと調和していて、とってもおいしい!

「わぁ、おいし~っ」

「蓮の北極ソーダもおいしいよ。さっぱりしてて、炭酸もきいてて、おれ好み」

 すっごくうれしそうな表情で、氷室くんが言う。

 そんな氷室くんの顔を見ていたら、こっちまでうれしくなってきちゃった!

「うふふ。それじゃあ次は、結花の愛情たっぷりイチゴのショートケーキを食べようっと。大きなイチゴがケーキの上に乗ってて、おいしそ~っ!」

 わたしはフォークで、ケーキの上に乗っているイチゴを食べた。

 あ! ちなみにわたし、好きな食べものは最初に食べるタイプ!

 おなかがいっぱいになる前に、おいしく食べたいなって思ってさ。

(イチゴ、甘酸っぱくてみずみずしくて、超おいし~っ!)

 幸せ気分でケーキを一口食べてみたら……わっ! ケーキもめちゃくちゃおいしい!

 スポンジの間に入っているイチゴもたっぷりで、超ぜいたく~っ。

「ケーキもすっごくおいしい! 氷室くんは?」

「蓮特製・金粉入りバニラアイスも、バニラが濃厚でおいしいよ。金粉がアイスに散りばめられてるのも、蓮らしいと言うか」

「ふふ、だね~っ。お坊ちゃまの蓮さまらしいメニューだよねっ」

 と返すと、わたしはまた一口、ケーキを口に運んだ。

 うん、やっぱりおいしい!

 わたし、今、超幸せ~っ!!

「――あ、そう言えばなんだけどさ……一つ、聞いてもいい?」

 氷室くんが食べる手をとめて言う。

「えっ? 何?」

 ケーキを飲みこんでから、わたしは聞いた。

「萌木さんは、どうして『涙のダイヤモンド』のファンになったの?」

「ファンになった理由? ……えっとね……実はわたし、ファン歴は短いんだけどね?」

 と前置きすると、わたしはフォークを皿の上に置いた。

 氷室くんになら話してもいいか……と思い、口を開く。

「転校前の学校で、今年の春、体育祭をやったんだけど、こう見えてわたし足が速くてさ。女子のクラス対抗リレーでアンカーを任されたの。みんなでたくさん練習したんだけど、わたし本番で転んじゃって、ビリになっちゃったんだ……」

 今でもあの時の膝の痛みを覚えている。

「そのせいで、クラスの女子たちから距離を置かれちゃったの。仲のいい幼なじみはいたんだけど、違うクラスでね……。その時にママが『涙のダイヤモンド』を貸してくれたの。強い結花ちゃんに勇気をもらって、不登校にならずに済んだんだ~」

 わたしが「暗い話でゴメンね」と言うと、氷室くんは「ううん」と首を横にふった。

「萌木さん、ずっとがんばってきたんだな……。えらいよ」

「ありがとう。そう言ってもらえるとうれしい。人の期待に応えることはニガテになっちゃったんだけど……いつか克服できたらなって思ってる」

 と話をしめくくると、わたしはテーブルに身を乗り出した。

「それで、氷室くんは? 氷室くんはどうして『涙のダイヤモンド』のファンになったの? 男子のファンってめずらしいなって思ってたの」

「ああ、それは……萌木さんは、おれの将来の夢に引かなかったから、話すよ」

 と言うと、氷室くんは意を決したような顔つきになった。

「おれが『涙のダイヤモンド』を初めて読んだのは、小一の時なんだけど、当時のおれ、すごく内気だったんだ。友だちもいなくて、漫画オタクの母さんの漫画を毎日読んでて、その中に『涙のダイヤモンド』もあったんだ。おれ、結花と出会うことで人に心を開いていく蓮みたいに、強くなりたいと思って、ハマったんだよ」

「そうだったんだ……。でも、それじゃあどうして、クラスのみんなを寄せつけない雰囲気を出してるの?」

 わたしが首をかしげると、氷室くんは苦々しい顔つきになった。

「それはね……おれの父さんと母さんは、おれが『涙のダイヤモンド』のファンだって知ってて、普通に受け入れてくれてたんだけど、小三の時、大好きだった母方のじいちゃんに、何気なく『涙のダイヤモンド』を読んでるって話したんだ」

 そこで一息つくと、氷室くんは話を続けた。

「そしたら、少女漫画なんて読んでるのか? って引かれてさ。それから人と距離を置くようになったんだ。本音を出すのがこわくなってさ。少女漫画家の夢も、父さんと母さん以外で話したのは萌木さんが初めて。萌木さん、本当に引いてない? ムリしてない?」

「ムリしてないっ。わたしはぜっったいに引かないよっ!」

 キッパリと言うと、氷室くんは目を見開いた。

 強い目力で氷室くんを見つめる。

 すると氷室くんが肩の力をぬいた。

「……ありがとう」

 と言って、ふわっと笑顔になる。

 わたしの胸が、ドキン!! と高鳴った。

(は、はわわわっ、そんな無防備な顔をされたら、ドキドキしちゃうよ~っ!)

 わたしは心の中であわてながら「う、うん!」と、どうにか返した。

 氷室くんは、どこか満ち足りたような顔になると、アイスクリームを食べ始める。

 だからわたしもケーキを口に運んだんだけど…………うん、味が分かんないや。

 もう、胸がドキドキどころかドンドコ鳴っていて、食べるのに集中できない。

 そして……そのあとの記憶は、ちょっとあやふやだ……。

 二人で『涙のダイヤモンド』の話をしつつ食事をしたのは、覚えている。

 だけど、何の話で盛り上がったのかは、よく覚えていない。

 食べ終わったあとは、二人で店内をぐるっと回って、壁に飾ってあるポスターを見て、それからお会計をして……コラボカフェを出た。

 そこで「ちょっと寄り道して帰るね」と言った氷室くんと別れて、わたしは家に帰ってきた。多分、ほえ~っとした顔をして道を歩き、電車に乗っていたと思う。

(いや~、よく無事に帰ってきたよ、わたしっ!)

 今は、赤いワンピース姿のまま、ベッドの上で大の字になっている。

 ほへ~っと天井を見上げながら、氷室くんの笑顔を思い出していた。

(ステキな笑顔だったなぁ~。あの顔、全然、氷の王子じゃなかったよ……)

 わたしはしばらくの間、氷室くんの笑顔を思い出していた。


 その日の夜。

 お風呂上がりに、わたしは自室のイスにすわって、凛ちゃんとビデオ通話していた。

 今、氷室くんとコラボカフェを楽しんできたことを、話し終えたところ。

 凛ちゃんが頬づえをついて言った。

「ねえ、氷室くんのこと、好きになっちゃったんじゃないの?」

「……やっぱりそう思う?」

「うん。もう認めちゃいなよっ」

「う~……そうかも。わたし、氷室くんのこと、好き、なんだと思う……」

 言葉に出したとたん、何だか心の中がスッキリした。

(――うん。わたし、氷室くんのことが好きなんだ!)

 そんなわたしの顔を見て、凛ちゃんが「ふふっ」と笑った。

「認めたね? ――で、いつ告白するの?」

「こ、告白っ?? さすがにまだ告白する勇気はないよ~っ。交換ノートを続けていって、いつか告白できたらな……とは思うけどっ」

「ふ~ん。告白したらオッケーしてくれると思うんだけどなぁ~。でも、そうだね。あせって告白しなくても大丈夫か。ライバルもいないと思うし」

「氷室くんのことを『氷の王子』って呼んで、したってる子はいるけどね……」

「大丈夫だって。氷室くんが本音で話せるのは陽菜だけなんだから、自信を持って!」

「ありがとう~。そう言ってもらえると安心するよ……」

 わたしは、ほっと肩の力をぬいた。

「あ、でもね、わたし、氷室くんがクラスのみんなに心を開くお手伝いができたらなって思ってるんだ。まだ、どうすればいいのかは分からないんだけど……。氷室くん、本当はみんなと仲よくなりたいと思ってるはずだから」

「……あんたはいい子だね。今のままだったら氷室くんを独占できるのに、そうしないで氷室くんのために動いてあげようだなんてさ……」

 凛ちゃんが優しい顔になって言った。

 わたしは何だか照れくさくなって、「えへへ」と言って頬をかく。

「でも陽菜らしくていいと思う。あたし応援するからがんばって! 相談にも乗るし」

「ありがとう! すっごく心強いよ」

「ふふふ、そのかわり~お菓子はいただくけどね?」

「ふふっ、言うと思った~!」

 と言って、わたしたちは笑い合った。

 そのあと、話題が変わって、今度は凛ちゃんの学校での話を聞いた。

 部活の話や好きな先輩(!)の話を聞いて、たくさんしゃべって、また話そうね~って約束して、ビデオ通話を終えた。

 凛ちゃんとのおしゃべりは、本当にあっと言う間!

 住んでいる場所は離れちゃったけど、スマホがあればつながっていられる。

 スマホの開発者に(そしてスマホを買ってくれたパパに)、感謝しなくちゃ!

「――さてと、そろそろ宿題を始めようっと。そのあとで交換ノートを書こう! ……そう言えば、来週の月曜は文化の日の振替休日で、学校がお休みなんだよね。交換ノート、早くわたしたいのになぁ~」

 ちょっと残念と思いながら、わたしはスマホを机の端に置くと、頭を勉強モードにして宿題に取りかかった。

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