窓越しの君に

周りに胸の内を吐露する相手もいない。

自分にだけ、課せられた仕事にも嫌気がさしていた。

週に一度帰るか帰らないかのマンションへ向かう。

その途中、足が止まった。

いつも開いているのか、閉まっているのか分からない店があった。

不思議と吸い込まれるように僕は店に向かう。


薄らと見える店内には古本がたくさん並んでいる。

ふと店内を覗くと、柔らかな照明、古びたどこか懐かしい雰囲気。

奥にはカウンター席と小さなキッチンが見える。

そんな中、カウンターに1人、コーヒーを片手に本を読んでいる女性がいた。

疲れきった僕にはその光景全てが絵画のように見えた。

その女性の仕草、表情、その全てが、僕を惹きつけて止まない。

儚げな表情に柔らかなニットの温もりが、窓越しに伝わってくる。


それが、僕と彼女の最初の出会い。

でも、まだ彼女は知らない。

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