第43話

大正12年。

全壊した家屋からは炎が出ており、黒煙が昇っている。

大きな炎の塊みたいな獣を何とかしずめようと狩衣姿の陰陽師達が頑張っているらしいが、厄災には効き目がない。

「下がって!後は俺が引き受ける!」

すっと鞘から抜き取った刀を厄災に向ける。刀を持つ手が震える。

(俺にできるのかな......)

元号の化身である俺しか、厄災は倒せない。ここで本災ほんさいを倒せなかったら、より人家や人民にも被害が増えるのだろう。

(いや、やるしかない)

「みんなが繋いでくれた時代を......日ノ本の歴史をここで終わらせる訳にはいかない!」


「―――こんな話で良かった?」

カウンターチェアに座りながらお汁粉を食べている大正が、令和に向けて問いかけた。

「凄いね......大正くんって」

「鎮圧はできたけど......その後の後処理が大変だったんだよね〜。壊れたインフラ整備とか」

大正が顔を青ざめながら遠い目をした。どうやら当時のことを思い出しているようだ。

「うわー、大変そう」

令和は口を手に当てながら驚きの声をもらし、密かに尊敬した。

大正十二年、つまり大正が十二歳の時に大きな厄災を鎮圧したことになる。とても自分にはできない所業だと令和は思った。

「でも、大人の令和っちも似たようなもんでしょ?」

「うーん......そうだけど」

令和の手は微かに震えている。

「一番怖いのは、一時とはいえ持ち場から離れてる状態なんです。自分の一つの判断で大勢の人を傷付けてしまうかもしれないって考えたら......怖くて」

「......そっか」

大正は餅を口に運び、お汁粉を飲み干す。

「話も終わったらから俺はもう行くけど―――グッドラック!」

親指を立て、ドヤ顔をする。

「大正くんって無駄に発音が良いね」

「ひと言余計だよ〜」

令和は大正と別れ、ソファに腰を下ろすとビニール袋の中から何かを取り出した。



「あけおめー!このメンバー揃うのも久しぶりだねー!」

「無事に冬期講習から生きて帰ってきた、褒めろ」

「未来の工場長だぞー、やっと滋賀の地に戻って来れた」

「俺もー!」

「お前らなぁ......初詣くらいは静かにしてくれ」

行きたい行きたいと駄々をこねる令和ちゃんを大正くんに預けて、友達と初詣に来た。

久々に見るみんなの顔は、冬休み前より変わってなかった。

「甘酒貰おー」

甘酒を配っている町内会の人から貰い、神社の隅で飲む。

「ぬっく!」

「ウチ、味はあんまり好きじゃない」

「え、じゃあ何で貰ってんの?」

「暖かいから」

「雪掻き大変だったなーお前ら」

ニヨニヨと徳島に避難していた健太が言う。

「お前、滋賀に戻ってきたなら雪掻きを手伝えよ」

委員長が甘酒を飲みながら健太に言った。

その後、お参りをした。

「来年も一緒に来れますように!」

「来年は高校だよなー」

「いつからの伝統だ、これ?」

「そういや小学校に入る前からだよなー!え、凄くね?」

「今年こそバカ四天王がまともになりますように」

お参りを済ませ、境内でダラダラと話していると―――

「にしても寒くね?」

蒼真が手をさすりながら白い息を吐く。

「今年はいつもより冷えるよなー......さぶっ」

「朱里、カイロ何個使ってるの?」

「五個」

私達より防寒対策バッチリな朱里が震えた。そういや、冷え性だったっけ?

そんなやり取りをしていると、ふと委員長が言い出した。

「......雪、強くなってないか?」

「あー......本当」

さっきまでは珍しく降ってるな〜程度だったのに、今は勢いが激しくなってる。

「やべ、早く帰らないと霜焼けなるぞ」

「帰ろ帰ろ」

「家帰ってこたつでぬくぬくしたい」

「はは、俺も......」

その後、吹雪になる前に急いで帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る