05.「なんて読むんですか?」
ビニール紐を束ねて広げて作ったボンボンが曲に合わせて揺れている。二組のクラスカラーである緑色のそれは、きっちり揃って上下した。
既に自分のクラスの応援披露を終えた美都は、観席で静かにそれを見ていた。昼下がりの太陽のせいなのか、それとも生徒たちの熱気のせいなのかは分からないが、暑かった。朝考えたのと同じことを脳内で繰り返してから、フェイスタオルに顔を埋める。
ハイテンションな音楽と自分の感情がズレを起こして、変に高揚感が生まれる。それを潰す様にタオルで顔を拭い、そのまま口元を押さえた。ボンボンの緑が光る。
『中田さんの名前はなんて読むんですか?』
メールを始めて間もない頃、美都はそう聞いたことがある。
特に重要性は感じなかったけれど、初めの間違いメールに添えられていた「中田碧」という字の読みをちゃんと知っておきたいと思ったためだった。
「みどりだよ。」と返って来た返事に驚いたのを覚えている。おそらく「へき」と読むのだろう、と信じきっていたからだ。
それから、(きれいな名前、と)
「 」
み、ど、り。
唇だけでその名を言って、今曲が終わって投げ上げられたボンボンを見つめた。
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