姉から告白されました

夢乃間

禁断の恋

第1話 姉から告白されました

 今日から夏休み。しかも親は旅行に出かけて二週間は帰ってこない。姉さんも家にいるけど、最近あんまり顔を合わせないし、実質今日から一人暮らしだ。深夜まで起きていても、お昼過ぎに起きても、誰も文句は言わない。今年の夏休みは充実した日々を送れそうだ。




「あの、さ。私、アンタの事……好き、だったりするんだ」      




「……は?」




 風呂上がりのオレンジジュースを飲もうとした矢先、目の前にいる姉さんから告白された。




「……え? いや、えぇ? どしたのいきなりさ」




「……いい。忘れて」




 そう言って、姉さんはリビングから出ていった。




 リビングに一人取り残された僕。とりあえずオレンジジュースを飲んで落ち着こうとしたけど、困惑し過ぎてオレンジジュースをどう飲むのかが分からなくなっていた。飲むという単純な事も出来ない程に、姉さんが放った言葉は強烈な一撃だった。




「……待って……え、待って待って! え、え、ちょちょ待って待って待って!!」




 誰に対しての待てなのかは自分でも分からなかったが、そう言わざるを得ない。だって本当に待ってほしいんだもん。




 結局オレンジジュースを一口も飲まないまま、僕は二階にある姉さんの部屋へ行く事にした。いつも当然のように上っていた階段が、今は断頭台のように思えてならない。何度も行くか迷ったが、このままでは頭の中が姉さんの言葉で一杯になってパンクするので、渋々行く事にした。




 階段を上って二階へ行き、僕の部屋の隣にある姉さんの部屋の扉をノックした。




「姉さん。あの、ちょっといいかな?」




 反応が無い。どうやら死んでいるようだ。




 冗談はさておき、僕はもう一度ノックしてみた。しかし、今度も反応が無い。躊躇いはあったものの、さっきの言葉の真意を問いただす権利が僕にはある。意を決し、姉さんの部屋の扉を開けた。




 姉さんの部屋は暗闇に包まれていた。もう夜の二十時だというのに、明かり一つ照らしていない。僕は暗闇の中、手探りで電気を点けるボタンを見つけ、部屋の電気を点けた。




 眩い光に一瞬視界を奪われ、目が光に慣れた頃、姉さんの部屋の全貌が明らかとなった。




「な、なんじゃあこりゃぁぁぁぁ!!!」




 僕の小さい頃の服を着た人形が棚に並べられ、壁に掛けられている板には僕単体か僕と姉さんのツーショット写真が埋め尽くしていた。ベッドには抱き枕が置いてあり、どうやって作ったか、僕が寝そべった姿のシーツが被されてある。




 部屋の何処を見ても、僕に関する物が置かれてあって、姉さんの部屋と言うよりかは、僕の博物館のようだった。強烈でちょっと気味が悪かったけど、姉さんが僕を嫌ってるわけではない事を知れて安心したりもした。




 後の僕は、きっと今の僕に対して警告するだろう。何故なら、僕は今この瞬間、姉さんの部屋にいながら、姉さんの姿を捉えられていなかったからだ。




 背後から聴こえる扉が閉まる音と、鍵が掛けられる音。気付いた時には既に遅く、僕はベッドに押し倒され、姉さんが僕の体の上に跨った。




「ね、姉さん……? その、手の込んだ冗談だよね?」




「ハルト」




「な、何かな、姉さん」




「観念して」




 僕のファーストキスは、強引に奪われてしまった。しかも実の姉に。乱暴で痛いキスだったけど、姉さんの唇の柔らかさが確かに感じられた。




 血の繋がった相手とは恋人にはなれない。いくら家族の間で合意を取れたとしても、他人が認めるとは限らない。様々なリスクがあるからだ。だからこそ、男である僕がしっかりと断るべきなのだ。




 しかし、悲しいかな。同じ血が流れてるとはいえ、姉さんは僕とは似ても似つかない美人でスタイルが良い満点な女性だ。そんな女性から迫られて、ハッキリと拒否できる程、僕は女性経験が豊富な訳ではない。




 夏休み初日。僕は姉さんに色々な初めてを奪われてしまいました。

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