track.5 神木

//SE 柔らかく、弱い雨の音


「雨……少し弱まってきたね。」


「次、ちょっとあそこに行ってみない?」(誘うように)


「ほら、あそこにあるとても大きな木よ。」


「ね?大きいでしょう。あの木は御神木って呼ばれてるのよ。」


「気になるかしら?ふふっ、じゃあ、お姉さんと一緒に行ってみよっか。」


//SE 二人が同時に歩き出す、濡れた砂利を踏む足音、微かな衣擦れ音


「雨ひとつない空もいいけれど……こうやって、うっすらと雨があるところを濡れながら歩くのも、また悪くないわね。そう思わない?」


//SE 砂の上を走る音(坊やの軽快な足音)


「あら、こらこら。坊や、いきなり走っちゃ危ないわよ?」(少しづつ遠ざかる、優しいな声)


//SE 砂のうえを走る音(坊やの軽快な足音)

//SE 砂の上を歩く音が近づいてくる(お姉さんの歩く音)


「もう、いきなり走っちゃダメじゃない。転んで怪我でもしたら大変よ?柔らかくて綺麗な肌が勿体ないことになっちゃうわ。」(優しく諭すように)


「ふう……。(気を取り直すように)うふふっ、それにしても坊や、走るの早いのね。お姉さん、もう坊やには敵わないわね。」


//SE 微かな雨音、風で揺れる葉の音


「すぅ……はぁ……。」(大きく深呼吸)


「この土の濃い匂い、まるで大地が呼吸しているみたい。それに、この木の香りも。」


「この香りを嗅ぐと、なぜか遠い昔を思い出すわ。永い時の中で、ずっとそばにあった、安らぎの香り。」


//SE 木に触れるような微かな音


「ごらん坊や。この木は楠って言うのよ。この御神木のそばにいると、どこか懐かしい、すっとするような香りがするでしょう?心が洗われるようね……。日常の些細な悩みが、この大いなる自然の中に溶けていくような…そんな感覚。」


//SE 頭上から鳥のさえずり(鶯)


「あら、鶯かしら?今年も来てくれたみたいね。毎年、いろんな生き物がこの木に集まるの。」


「上を見てごらん。枝葉が幾重にも伸びて、木の下なのに雨が降りかからないのよ。まるで天蓋みたい。不思議でしょう?」


「この楠は、どんな時もこの地を見守り、根を張り続けてきたわ。その太い幹には、何千、何万という雨粒が吸い込まれ、この大木を育んできたの。まるで、私の心臓が、この地の鼓動と共にあるようにね。」


//SE 風で木の葉が揺れるざわめくような音



「この木はこの神社では1番言われのある木でね。古からこの辺り一帯とともに成長したと言ってもいいくらい、歴史がある特別な木なのよ。」


「あそこ……上の方、見える?縄のようなものが見えるでしょう?」(指さすように)


「背が足りなくて見えにくい?……ほら、乗って。」


//SE お姉さんがしゃがみこむ音


「じっとしててね。よっ……と。(少し力を込める)見えるでしょ?おんぶなんていつぶりかしら?ふふ、もうずいぶん久しぶりね。」


「坊や、軽いのね。羽みたいだわ。」(柔らかい笑顔を向けながら)


//SE 微かなお姉さんの呼吸音


「あそこに見えるのは注連縄っていってね。とても昔に巻き付けられた物だから、上の方にあるの。この木が他の木と比べて神聖だってことを表してるの。」


「つまりね。簡単に言えば、この木は果てしなく大切なものなの。」


「何十年も残り続けるように、幾重にも編まれたあの縄は、坊やの腕よりも太いのよ?」


「よっ……と。」(背負い直す。)


「御神木は私にとって唯一の友達…いや、私の一部のようなものなの。」


//SE 静かな風がお姉さんの髪を揺らす音

//SE お姉さんが静かに息を吸い込む


「私がこの世界に存在する、その数少ない証。」


「ずぅっと昔から、私と共に、この世界を見てる。」


//SE 木々のざわめき


「もちろん、この神木は坊やの成長も見てきているのよ。」


「少し前まであんなに小さかったと思ったのに、もうこんなに大きくなってしまって。」


「ん?何を言ってるのかって?」


「ふふっ、気にしなくてもいいのよ。坊やにもきっと、いずれわかる時が来るから。」


//SE 神木の葉が風に揺れる音

//SE 柔らかく、弱い雨の微かな音

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