第2話「情報こそ暴力」

「おい、なんだよここ……」


城戸龍司は薄暗いビルの地下を見下ろし、眉をひそめた。

元はゲームセンターの倉庫だったというその空間には、数台のPC、配線がむき出しのルーター群、そして監視モニターが雑然と並んでいる。


「情報中枢――俺の“道場”だよ。まずはここを拠点にする」


そう言った凛一は、ラップトップを開きながら電源を入れた。

起動と同時に、複数の匿名掲示板、闇SNS、警視庁の公開情報ポータルが一斉に表示される。


「……お前、こんなのどこで手に入れた?」


「必要なのは金じゃない。知識とアクセス、そして“信用”だ」


凛一は軽く笑った。


「まず君たちの敵を洗う。城戸組をハメたのは誰か。

だがその前に――味方の中に“敵”がいないか、確認しないとな」


「……裏切り者がいるってのか?」


「君の組の会計担当、木島。今は隠れてるが、既に2件、敵対組織の名義口座に金を送っている」


「……チッ、マジかよ」


龍司が奥歯を噛みしめる。

木島は古株で、組の金の流れを一手に握っていた男だ。だが、凛一の言うことなら疑う余地はない――彼の目の前にあるモニターには、送金記録と日付がすでに表示されていた。


「あと三日でこの情報は“警察”に届く。君たちが気づかなければ、そこまでだった」


「……お前、どこまで見えてんだよ」


「すべてだよ。“パズル”さえ揃えば、あとは理屈で組み立てられる」


凛一は淡々と告げる。


「俺は“力”を持たない。けれど――情報と構造を支配すれば、暴力よりも上に立てる」


その瞬間、龍司の背筋にゾクリとしたものが走った。

目の前の男は、拳も銃も持たない。だが、確かに“支配者の目”をしていた。


「……わかったよ。まずは木島を潰す。その次は?」


「組の中枢を再編する。情報班、資金班、実働班……“企業”と同じだ。

暴力団の“組”ではなく、裏社会の“機構”を作る。すべては、理で動かす」


龍司は鼻で笑った。


「お前、ヤクザを“会社”にでもすんのか?」


凛一は微笑む。


「君たちは、すでにそうなっている。気づいてないだけだ。

違法な商売を正当化する方法も、資金を隠す方法も、俺が教えるよ。必要なのは――“構造”だ」



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その夜、白神凛一の指示で、裏切り者・木島は粛清された。

そしてその翌朝、城戸組の地下室では、新たな

“人員編成表“がホワイトボードに貼り出されていた。


そこに書かれた肩書きのひとつは――


> 『情報統括・白神凛一』



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次回予告


第3話「合法と違法のあいだ」

――凛一が次に動かすのは、街に眠る“金の流れ”。

裏ビジネスを洗い出し、フロント企業の設計図を描く。



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