兄弟
「ふーーっっ…」
ケイと出会ってから、彼の喫煙姿を見た回数はそう多くはない。だがその中でも間違いなく、一番特大ともいえる溜息と一緒に、彼はタバコをふかした。
「タイト。血には抗えないよ」
色々と言いたいことはあったはずだが、今の一言に全て集約されていたように思う。それと同時に同じ境遇の人間なんて僕らを含めて、世界で本当に数人かもしれないと思った今、兄弟の有り難さがとれほどのものかを、改めて考えさせられている。
僕はケイに謝ることにした。実は今まで兄弟としてしっかり考えられていなかった。何処か他人事のように大樹の話を聞いていた。長野アイリの件など、色々と詮索しようともしていた。
そして謝罪の中で、非常に大きな割を占めるであろうことがもう一つ。それは人に対する「信用」のリスクを考えず、明らかに「軽んじていた」ということだ。
一対一の関係でいる分には相手に裏切られようと、当事者以外の人間関係に致命的な支障は生まれない様に感じる。だが第三者が絡むことで、どちらの肩を持っていたか等といった、モヤモヤっとした何かが当人らの周りに立ち込める。その様な人間の下品な心の部分や、いわゆる損得勘定に無知すぎた僕が無謀な進み方をした結果、この様な事態を招いてしまったのではないかという反省が、僕の脳内をループする。
「ケイ、ごめん」
「いいよ、何も」
決して詳細を話してはいないが、ケイは僕の言いにくい気持ちそのものを、優しく汲み取ってくれた。と同時に、直視したくない現実をコチラもさりげなく提示してきた。
「良くないのは彼(不二田)が僕らの内部情報を知ってしまっている事だよね」
これに関しては確かに、非常に大きな懸念材料である。そもそもユウジが危機管理能力を問われ、懲戒免職になってもオカしくないレベルだ。
「何にせよ、ここまで来てタイトはどうしたい?」
「ど、どうって…。拉致られるのは嫌だし、かといって死ぬのはまっぴらごめんだし、できれば平和に暮らしたい」
こんな話をしていたら、途方もない不安が襲ってきた。そういえば仲間も居なくなってしまったんだ。独りで暗闇に放り込まれるのだと、僕は本気で思っていた。
「そっか。それは全く俺と一緒だな」
どうやら幸運な事に、僕は独りでは無いみたい。そしてココからは血の繋がった兄弟との共闘かつ、「死ぬまで生きる」上でのライフテーマにもなりうる、長く深い問題と向き合っていく、深く長い時間になりそうだ。
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