特殊能力家系
新年早々急展開だ。まぁ長い目で見たら、それこそココに来た時から「目まぐるしく」はあるのだが。
「それは…ハーメルンとは違うの?」
「全く別だ。これについては警察が長年追い続けている…というよりも世国中の警察が追い続けている、という方が正しい表現かもしれない」
遂に辿り着くところまで辿り着いた。僕を連れ去ろうとしていたのは、世界の転覆すら企む程の大きな組織なのだという。
少し込み入った話をするから座ってくれと言って、ユウジは用意していた資料を作業机に「ぱぱっと」放った。
「カオス」と題され、左上をホチキスで留められている3枚綴りのA4用紙。そしてその書き出しには、特殊能力の血筋は笹島家だけでは無いと書かれている。これはつまり「別の能力を発揮できる特殊能力家系が、世界には数多く存在している」という事だとユウジは言う。
僕ら笹島家の能力といえば、10分後の出来事を脳内再生できる「予知」能力であるが、その界隈においてこの特殊能力自体、相当稀有な存在らしいのだ。
公にはならないが、その能力を利用しようとする組織・団体も多く、果ては企業や政府までもが、世界中に多数存在しているのだという。それは決して善悪を問わない。そういう事でいえば日本の警察も例に漏れず、笹島の血を捜査に取り入れているという事になる。
付け加えて、組織の大きさや資金力について世界レベルで見た時には、今僕達が対峙している「PPOH=ハーメルン」は、ごくごく小規模な部類に分けられるのだとも。
未来予知能力が重宝される理由は明確で、能力者の持つ力の多くが、現在進行系(リアルタイム)でしか発揮する事が出来ないからだ。
例えて言えば少し前に「絶対音幹」と呼ばれる「音の本音」を聞き分けれる天才ピアニストが、巷で話題になっていた。
我々が普段から聞いている音には「表と裏」が存在している。表向きの華やかな音の裏には、それとは異なる感情の「音の本音」が表裏一体、潜んでいたりするのだと。
それを聞き分けて使い分けることで、聞いた人の「心の奥深く」に刺さるメロディを演奏し、その女性アーティストは時の人となった。そして実は彼女自身も特殊能力家系の出身なのだと、ユウジはこの流れで説明してくれた。
この能力もいわば「その場」で発揮されるものであり、我々の予知能力とは少し異なる。それに加え「リアルタイム系」の能力については、その血の出身でなくても、教わる側に素養さえあれば「伝承」する事が可能らしい。
逆にいえば僕らの能力について「他人」への伝承は不可能であり、それも相まって稀有な存在として認識されているようだ。
「ここまでの話でどこまで伝わったかは分からないが…。まずタイトを連れさそろうとした組織の通称は「カオス」という。そこは世界の覇権を手に入れることを最終目標としている恐ろしい組織で、色々な特殊能力者を拉致しては教育を繰り返し、年月が経つほどにその力を増幅させている」
世界史の授業というよりはSF漫画の説明書きを読んでもらっているような気分だ。ユウジは続けた。
「そもそも我々の血は、特殊能力者を積極的に取り込んで利用しようとする悪の組織などの標的になりやすく、もっと言うと「拉致」の対象になりやすい。だからタイトが赤子だろうが何だろうが、関係なく連れ去ろうとするヤツらが現れた。幸いにも能力の発揮時期についての情報が少なく、そいつらはどうやっても能力にありつける事は無かったみたいだがな」
「だから…能力が使えるようになった僕が、改めて狙われてるんだね?」
「そういうことだ。そしてタイトの「命」をというよりは、タイトの存在自体を狙っているという方が、ココでは正しいのかもしれない」
やっと理由がわかってきた事で少しスッキリ…などするわけもない。色々な思いが巡った事で、呼吸が上手く出来ずに酸素が不足している感じがした。なのでそれを解消すべくゆっくりと深呼吸をしようとした時、ふとこの空間に3人目の気配を感じた。
振り向くと、壁に寄りかかってコーヒーを飲むケイの姿があった。彼は既にこの事を知っているようだ。そして優しく僕に近寄り、片方の肩をポンと叩きながら言った。
「喫煙所、付き合ってよ」
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