初任務

不在着信 ユウジ 今

不在着信 ユウジ 今


ふとスマホを見るとタイミング良く?ユウジからの不在着信が2件表示されていた。殆どの内容を不二田には伝達済みだったので、スマホの画面を彼に見せる事により、僕がユウジへ折り返しをする事が即座に伝わる。


「もしもし?タイトか?突然だが、最初の仕事だ。俺の言う通りに動いてほしい」


記念すべき「初任務」についての話だ。正直僕は「笹島」として捜査員デビューする事を、この時まだ決定していた訳ではない。ただ今日の出来事と不二田の推理話からするに、そうも言ってられないのは明白だった。


淡々としたペースでユウジは任務の内容を話し始める。僕はハナからそれに抗う事などはしなかったが、いかんせん一連の流れが早すぎた。都合上一刻を争うのは勿論理解しているつもりではあったが、流石に色々と準備不足だったので「ちょっと待って!」と、慌て気味に彼の発する言葉を半ば強引に遮る。


ふと少し首を上に向けると、目の前には「イヤホンに繋いで話せ」と促している不二田。言われた通り、Bluetooth対応イヤホンを自分のスマホに接続する。すると今度は「イヤホンの片耳をよこせ」というジェスチャーをしながら「早く早く」と小さく口を動かしている。


ちなみに使用しているのは最近新調したばかり…というか先日署から配給された、公私併用可とされている「新しい相棒」だ。まだ僕の両耳との親和性はそこまで高くないが「これをこうして、あれをあーして…」と、間違えないように一つ一つ動作をクリアして、しっかりと接続することに成功した。


そして「笹島家の一員になった証」の配給品がもう一つ。それは捜査専用のGPS発信機だ。この発信機により示された僕の位置情報が、この後起きると予測されたとある事件に都合良い場所なのだと、ユウジが受話器の向こうで言う。


「今ウチの部署で追っている、とある「ひったくり犯」がいる。そいつの次の犯行が恐らくこの後、今タイトがいる場所から数百メートルの所で発生すると予知しているんだ。いきなり捕まえろ!とかそういう事はないが、少しトリッキーな行動を頼む可能性がある。初手にしては少しヘビーかもしれないが、お前に任せようと思う」


それこそ結構「荷が重そうな」案件のように思えるが、僕には不二田がついている。それが何故かとても心強く、何なら失敗するイメージ等は全く湧いてこなかった。


「また指定の時間の3分前に電話をかける。出来るだけ怪しまれないように現場へと向かってくれ」


ちなみにユウジの脳内では、僕はココに一人でいる事になっているのだろう。どこまで詳細な情報が彼のもとに有るのかは正直分からない。


一旦通話を終えて部屋を出る。会計へ向かった僕は生まれて初めて「領収書をください」と、自ら店員に告げた。


「お宛名は??」と聞き慣れない質問に困惑しかけたが、その時咄嗟に「上様で」と頼れる友人が横から助け舟を出してくれ、無事に事なきを得た。


「苗字とか名前とかじゃなくて平気なの?」

「そういうもんらしいよ、世の中」


店を出てからの会話。大人に少しだけ近づいた僕と既に少し大人な不二田は、指定された現場近くへと平然を装いながら向かった。

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