10 minutes

もにもに

副都心警察署「10M課」

A「次の体育何だと思う?」

B「ソフトボールが良い!」

C「俺、サッカー!」

A「お前ら、ただの希望すぎん?笑」


更衣室で、せかせかと着替えながら雑談をしているクラスメイトの会話を聞きながら、体力に自信のない僕は、この後に待ち受ける試練に備え身構えていた。


「大槻の予想はー?」

「持久走…かな…」

自分の着替え終わった制服を詰め込んだ、更衣室のロッカーを1点に見つめながら、僕はボソッと答えた。


「今日は1500mのタイムを測るぞー!」

およそ10分後、体育の先生の意気込んだセリフに、先程から一緒にいたクラスメイト達は一瞬凍りついた。そしてすぐに、彼らは宇宙人を見るかのごとく、細いながらも深い目線で、僕の事を「斜めから」捉え始めた。


この高校に入学して、半年ほど経った高校1年の秋現在。僕はクラスの中でいわゆる2軍…もはや3軍ともいえるくらいのヒエラルキーに属していると言っていい。


理由は自覚している(クラス内のヒエラルキーに理由などはなくて良いが)。人見知りであり、極度の緊張しい。更にはボソボソと話すが故の声の小ささも加わり、最近までは休んでいても認知されないレベルで存在感のない男であった。


しかしこの数週間、目立たないレベル100だった僕が言い当てる様々な「予想」が、クラス内で明らかなトレンド上位になっている。


「人気者」までは遠く及ばないが、今までの人生で少なくとも「チヤホヤ」すらされた事の無かった僕は、コチラに対する数々のベクトルに、拙い笑顔で対応するしかなかった。


そして最終的には「恐怖」のような、漠然とした不安が僕を襲う。脳内で思い浮かべた通りの結果になった体育の件もそうだが、先日は担任の急な欠勤すら言い当てたりもした。


前述のクラス内ポジションでお分かりだと思うが、僕はものすごーく臆病者である。


「自らに予知能力が備わっている気がする…。でもそれって頭がオカしくなったから、そう思うんじゃないか?何ならこの記憶すら、本当は存在しないんじゃないか?」


ここ数日間は家に帰ると、学校にいる時とは比較にならないくらいの不安が、脳内を駆け巡る。そして「しつこくしつこく」煽ってくる。


アメリカの大統領が少し強気な発言をしたから、海を挟んだとある国が、直ぐにミサイルを撃ってきて日本が無くなるんじゃないか…とか。帰り道にミミズが沢山いたから、明日明後日で大地震が来るんじゃないか…とか。よく分からない根拠から不安を増幅させて余計な不安を自ら招き、自分のポテンシャルを下げる事など容易な僕。


そんな感じなのだから、一連の予想的中事件により、「脳内回路が壊れてしまったのかもしれない」などと勝手に思いを巡らせて、自ら「小パニック」に陥るのは、時間の問題であった。


持久走的中の日は特に「ダメ」で、遂には「学校内予言」みたいな、ほぼ聞いたことすらない意味不明ワードを、インターネットの検索エンジンに入力し始めてしまう。そしてその結果不幸にも、荒手のフィッシング詐欺に、僕は引っ掛かった。


スマホを開けば非通知、非通知、非通知…。滞納があるだなんだという、数々のショートメッセージ…。そうこうしているうち、僕のメンタルは小パニックから大パニックに移行する。家族に言う事はしなかったが、たまらず警視庁のサイバー犯罪科に電話をかけ、気付けば体中に冷や汗をビッチリと掻いていた。


「こちら警視庁サイバー犯罪科です」

「すみません!高校1年生なのですが、学校で次の体育の授業科目を当てたり、朝のホームルームの時に先生が風邪を引いて休むのを当てたりしちゃって怖くて…どど、どうしようかなって…」


「……、少々お待ち下さいね」

保留音に切り替った。


ああ、終わった。

めちゃくちゃ頭オカシイ奴だと思われた…。


僕は絶望したのだがこの直後、予想外の展開になる。


「警視庁副都心警察署に「10М課」という部署がございます。お役に立てると思いますので、そちらにお越しください」


何かよく解らないが、警察に電話をしているという事実がある以上僕は怪しむこともせず、寧ろ藁にも縋る思いで、副都心警察署「10М課」なる部署を訪れることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る