第六話「人気者のにいちゃん」
「よっ、りょう。どう〜? 最近!」
言いながら、笑顔で俺の頭をぽんぽんしてくるしんくん。
――
小さい頃、漢字だけ見て“しんくん”と呼び間違えてからずっとこの呼び方なんだ。可愛いだろ、小さい頃の俺。
「ってか、またちょっと背伸びた? 成長期だねえ」
うるせぇよ、って言いつつちょっと嬉しいのは内緒だ。
しんくんは、一八〇ある俺より少し身長は低いけど、いつもこうやって頭をぽんぽんしてくる。それといつも身長のこと言ってくる。
いつまで経っても子供扱いだなぁ。
「そんなことより、校舎のほう来るなんて珍しいじゃん。どうしたの?」
「いや、たまたま用事あってさ。ついでに顔でも見とこうと思ってね〜」
旭と顔の雰囲気は似てるけど、やっぱり表情は正反対だなって常々思う。いつもニコニコしてるし。
ピアスばちばちに開けてるとこは同じだなって……。旭よく先生に怒られないよな。
「あ、そういやさ。旭、最近どう?」
声を少しひそめてニヤニヤしながら聞いてくる。ぎくりとした。
――あの日、少し気まずくなってから……いまだに微妙なままだ。表面上はいつも通りだけど、なんか心のどこかで引っかかってる。
ちらり、と旭のほうを見る。つられてしんくんも、目線をやる。
それに気づいた旭は、無表情のまま軽く手をあげた。
「それがさあ。聞いてくれよお……っと思ったけど、休み時間終わっちゃうわ」
「おっと。じゃあまた放課後帰ってきたら僕の部屋きなよ」
「おっけー、んじゃまたあとで」
教室を後にするしんくんに手を振って、席に戻った。
なんだか、教室が静かになったな。しんくんは生徒たちからも人気だし、当然っちゃ当然か。
後ろを向いて、旭に話しかける。
「しんくん、なんか今日テンション高くなかった?」
「……しらん」
うーん……やっぱりなんか変だ。今のはどことなくトゲあるし……。
ふむむ。と悩んでいたら、「涼平くん」と背後から声をかけられた。ルイだ。
「あのさ〜、さっきの人……仲ええん?」
「ん? あー。まぁ昔から知ってるし、よく遊んでもらってたからなー」
……そういえば、ルイがいる
ってことは、ルイもしんくんのこと知らないのでは……?
と思って口を開きかけたとき、ルイがうつむいてるのに気がついた。
「……ルイ? どした?」
「へ!? あ、いや! なんもないよ〜!」
笑顔。……だけど、なんかいつもと違って“嘘くさい”。
俺、ルイに対しても何かしたか……?
考えても答えは出ない。でも絶対なんかある反応だった。モヤる。
どいつもこいつもなんだってんだ。
自分で選んだ人の脳内覗き見してぇ。ほんと不便な能力だ。
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