第一章「転校生の妄想、開幕5秒で俺に着弾」
第一話「朝から俺が受けにされてる件」
斉藤くんがなんと斜め前の席について数分後。
ホームルーム内で、自己紹介タイムが始まっていた。
そんなときにも関わらず、俺の脳内スクリーンがまた勝手に動き出した。
——え、ちょ待って。これさっきの続きじゃない?
壁ドンされた俺が、壁に背中つけたまま目をそらしてる。
目の前には金髪(たぶん斉藤くん)、顔が近い、近い、近い!
……って、顔寄せてくんの!? 嘘でしょ!?
あー! あーー! これ以上はいけない! 待ってください!
いやマジ無理。お前の脳内、地上波アウト。
ていうか斉藤くん、見た感じかなり小柄で華奢そうだったしこの構図は無理があるだろ。
願望か? 妄想ならなんでもありか?
結局、俺の“受難”妄想のせいで、自己紹介のターンは気づいたら終わっていた。
いや、ちゃんと名前は言ったよ? 呼ばれたときに「
多分顔は上げてなかったけど、まあそれはいい。仕方なし。
脳内の映像がまだチラついてる中、俺は机に突っ伏して現実から逃げていた。
そのときだった。
……トン、トン。
指先で、軽く机を叩かれた。
うわっ誰!? と思って顔を上げると——
「あ、西那くん、やんね〜? ボク、ルイ。さっき前で挨拶しとったよ〜」
「よろしくな、なかよぉしてな〜」
へ。いや待て待て! 本人ンンン!
タイミング悪すぎるぞ!? ついさっきまでお前の妄想見てたんだが!?
地味に関西弁なのギャップですか? ありがとうございますごちそうさまです。
……じゃなくて!
「ボクのこと知っとるん〜?」
「なんかさっきチラッと目が合った気がしてさ〜。ボクのこと見とった?」
\ 死 /
あ、死にました〜。今脳内で爆発起きたよ。軽くビッグバンだよ(?)
無理無理無理、やめてください! 追撃すんな! 地味にクリティカル!
「や、見てない! なんっにも見てない!」
ブンブン手を振って否定した。逆に怪しい気がする。
でも嘘は言ってない。見てたのは“外側”じゃなくて“内側”だから!
「そっか〜? なんか見られとった気がしたからさ〜」
「……もしかして、興味ある?」
\ 再 死 /
腐男子は、二度死ぬ。
なんだこの天使の顔した悪魔は。ゴリゴリに俺のHPを削ってきやがる……。
やめて! 俺のHPはもうゼロよ……!
なんて言ってる場合か!
「……うるさい」
ビクッと肩が跳ねた。
振り返ると後ろの席の旭が、相変わらずの無表情でただ一言だけつぶやいてた。
声ちっさ。でも圧、つよ。
全然怒ってないのに、怒られた感がすごい。
「え? なんか言った〜?」
斉藤くんが首をかしげてこっちを見てる。
やめてくれ、彼は無言圧力型なんだ。怒らせたら怖いぞ。
「ん〜まあいっか。また話そうね〜」
斉藤くんはそう言って、前に向き直った。
また話しかけてくる……と。なるほどわかりません。
でも、ほんと……斜め前の席だから、よく見えちゃうのが痛いところ。
金髪のサラサラなショートボブ。細い首、華奢な肩。
……と観察してたら、チラッとこっちを見た。
青い宝石みたいな瞳、ぱっちり二重をふちどる長いまつ毛、通った鼻筋。
形のいい唇がにっと微笑んだ……気がした。
もうやだ。なんで普通に微笑んでられるんだ。
こっちはいつ妄想の続きが来るのかって、気が気じゃないのに。
「……大丈夫か?」
頭を抱えてたら、後ろから旭が背中をツンツンしてきた。
珍しく心配そうな顔をしている。なんだ。普段とのギャップ萌えを狙っているのか……?
「だいじょばな……い……」
ぐふっ、とまたわざとらしく机に突っ伏してみた。
後ろから「ふっ」と鼻で笑われたような気配がした。さては心配してないな?
……そんなことより、なんだったんだあの妄想は。
ていうか、ちょっと待って? 状況を整理したい。
ひとりは、俺を受けにする妄想を初対面から垂れ流してくる転校生。
もうひとりは、俺が脳内を唯一読めない幼なじみ。
そして俺は、平々凡々な腐男子で——
……これ、どういう三角関係ですか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます