第5話 騎士の任命
代表ゴブリンに連れられて、僕は巣穴に戻ってきた。みんながなぜか僕を代表かのように扱う。というか、今更だけど代表ゴブリンって名前分かりずらいな。本物の代表なのかも分からないし。
よし。名前つけてあげよう。代表ゴブリンさんは……
「ディー。」
代表ゴブリン――――改め、ディーを指差して言う。
やっぱり、みんな僕を驚きの目で見つめている。なんなんだろ。
……そういえばなんだけどさ。もしかしてだけど、ディーが本当に代表だったら僕ってめちゃくちゃ失礼じゃね?
自らの言動を顧みる。
――――うん、無礼千万。処刑されても文句は言えない。
やべーな、これ。やけに丁重に扱ってるのは最後の晩餐的なアレかもしれない。
これは、あれをするしかないな。
「ぐっぎゃあぁ!」
相変わらず適当なゴブリン語を喋りながら頭を下げる。日本の伝統文化、DOGEZA☆だぜ!
ディーは俺を無理やり立ち上がらせる。そして、背中に差していた剣を僕に差し出してきた。
ん?なにしろと?
くれるのかな。そうだ、肉切り包丁にするか。
僕はディーの剣を取る。その時、手の中にあった兎から出た宝石――魔石(暫定)が剣に触れた。
緑色の光が弾ける。光は空へと舞い上がると、グルグルと回った。やがて、高度が下がり剣身へと入り込んでいく。
なんか、あれっぽい。武器の強化演出。……あぁ~、関連して思い出したのだが、こっちに来る前にやってたゲーム、まだ全クリしてないじゃん。終わった。
それはさておき、若干錆びていたディーの剣が新品ピカピカになった。それどころか、ほのかな緑色で発光している。
もちろんこうなるって知ってましたけど。だから、剣を受け取って魔石をぶつけたんですけど。
ほんのほんの少しだけ動揺しながら、剣をディーに返す。
ゴブリンたちは、完全に僕を王みたいな視線で見ていた。僕は返すように、ニヤリと笑う。
これは……
――――無礼千万と帳消しだな。
✾ ✾ ✾
ディー視点
我らが王をお守りして、巣穴へと辿り着いた。早速皆へと事情を説明した。
族長であった我の言葉だからか、皆はすんなりと受け入れることができた様子だ。もしかしたら、皆も王の威光を感じ取っていたのかもしれない。
ふと、我が王を見る。王は我を指差していた。
何か粗相をしまっただろうか。我は自らの行動を顧みる。
分からない。なぜ王は我を……
「ディー。」
……!?王は我を、ディーと呼んだのか?あの有名なゴブリンエンペラーの右腕であったと伝えられる
その瞬間だ。急に狼狽した王が膝を折り、頭を地面につけた。これは…土下座?
見たことはないが、最上級の謝罪の意を示す物だったと記憶している。王はなぜ…。
「ぐっぎゃあぁ!」
訳:この程度ですまない!
――――まさか我をディーに例えたことを謝罪しているのか?我が器もディーという伝説に収まる物ではない。そういいたいのか?
なんという至福だ。ならば、我もゴブリンエンペラーを上回る王としよう。
我は王を立たせると神話の場面を思い出しつつ、王に剣を捧げる。たしか神話だと、エンペラーは剣を謎の力で強化したとあった。まぁ、さすがにそこまでいくとは思わないが。
王は剣身に手を触れた。その瞬間、爆発するように王の手の中から神聖で暖かな光が広がる。緑色で万物を癒すような光。天へと立ち昇った光はゆっくりと我らに降り注ぐ。
やがて、光をふんだんに吸った剣は新品同然になっていた。それどころか、緑色に光っている。まるで、魔剣のように。
いや、本当に魔剣なのかもしれない。もはや王は何が起こされても不思議ではない。
我らが王。この祝福をすべて貴方様のために使わせていただきます。
王はやはり超然とした微笑みで笑っている。
一体、王はどこまで先を見据えているのだろうか。
――――――――――――――――――――
これで第一章が終わりです!
いかがでしたか?
ゴブリンたちの勘違いの加速を楽しんでいただけたならよかったです。
とりあえず、第一章くらいは読んでやるかって来てくださった人!
神様です。ありがとう。
さて、第6話からは第二章『ゴブリンの文明発展の話』が始まります。
第一節は『火の話』!
王(?)となった主人公ゴブリン(自覚無し)は、ゴブリンの集落を発展させていきます!行きつく先は……火の神!?
おっと、喋りすぎてはいけませんね。
ぜひこれからもお楽しみください。
あと、第1話にも書きましたがぜひとも、お星さまをください。御礼参りすることを誓います。目指せランキング500位入りです。
お星さまがくれば…
喜びます。狂喜乱舞します。
丸兎
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