漫画感想文

遠山ゆりえ

第1話 スミレ♡16歳!!

夏休みが始まりました。なので、読書感想文ならぬ漫画感想文を書きたいと思います。


まず始めに取り上げるのは吉永たける著の『スミレ♡16歳!!』です。2000年代はじめに週間少年マガジン等に掲載されました。実写ドラマ化もされたらしいです。


私がこれを初めて読んだのは、数年前、何気なく無料の漫画をスマホで探していた時でした。特に期待もせず読みはじめたのですが、面白くて一気読みしてしまいました。


女子高生の四谷スミレと友人達とのドタバタコメディーです。笑いあり涙ありの青春劇で、よくあるタイプの漫画だと思いきや、設定が特殊すぎます。


スミレは等身大の精巧な腹話術人形で、ひげヅラのオヤジがそれを操っているのです。なぜかわかりませんが、人形が生徒として学校生活を送っています。オヤジも一緒に……。


そんなシュールな話にもかかわらず、スミレの明るさ、正義感等に生徒と読者は魅了されていきます。(セリフもすべてオヤジの考えなのですがね)


これは、アレだ!日本の伝統芸能の文楽ではないかと私は気付きました。文楽人形は何人かのオヤジに操られていますが、オヤジはいないものとされます。人形の仕草や話の内容に観客は引きこまれ、感動します。セリフは近松門左衛門とかが考えます。


それを人形のスミレと、オヤジひとりが演じている漫画なのです。(舞台が高校で、観客はスミレの即興劇に巻き込まれてます)


そもそも演劇の俳優達は人形のようなものです。脚本家の考えたセリフを自分の心から出たものとして発声します。


そしてこの漫画は吉永たけるという作者が考えました。二次元の漫画世界にオヤジやスミレや色々な登場人物を描き、作者が考えるセリフを言わせます。それを読んで、私達読者は面白がってます。


文学作品も同様です。作者が書いた文字により描かれた世界に、読者は入り込みます。

作品の中の美少女はオヤジが書いたものかも知れませんが、別に作者の顔はちらつきません。


スミレは年をとりません。永遠に高校生のようです。社会人となった、同級生の友人達に出会った回の最終話に、私は不覚にも涙ぐんでしまいました。


残念なことに、作者は筆を折ったようです。

(電子書籍で最終話まで多分無料で読めるはずです)














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