第4話

「『今年こそ結婚します!』って毎年言ってるんだけどなぁ」

昼休みに女子スタッフ同士で話していたときだ。

数ヶ月に一度ある社長との面談の後、平間主任がボヤいていた。

苦笑するメンバーたち。

この職場の独身・既婚者は半々。死別や離婚で独り身になった人、母子家庭の人などスタッフの家庭事情は実に様々だ。

平間主任はおそらく二十代後半から三十代前半だが、タレント並みに可愛いかった。

だのに今の仕事に就いて、出会いなんてほとんどないのにもったいない…と思った矢先、

「平間さんの男性の好みってどんなんですか?」

と誰かが訊いた。

「あたし?あたしお相撲さんがいいの!相撲部屋の女将さんになりたかった」

間髪入れずに答えた平間主任に、へーっ!と私を含め後輩たちが声を上げた。

「あー、お相撲好きだよねぇ」

古株の先輩がうなづく。


お相撲さん、、、相撲部屋?!


あまりにはっきりした答えと好みに、爽快さを感じつつ感心した。

(…平間主任なら女将さんだって夢じゃないだろうに)と私は思った。

話は少し沸いた後、別な話題に流れた。

休憩室はスタッフの出入りが激しいので、話題が長続きしない。それが良くも悪くもスタッフ同士の関係を程よくあっさりしたものにしていた。





数週間経ったある日の昼休み。

休憩室に入ると、平間主任が窓際の席に座ってケータイを見ながらサンドイッチを食べていた。

ここは時間差で皆が順繰りに昼休憩を取る。

だから休憩室は入れ替わり立ち替わり、メンバーが入っては出てゆく。

その時間小さな休憩室は、たまたま平間主任と私、二人だけだった。



互いに何を話すでもなく黙々と昼食を食べる。いつも賑やかな休憩室だがとても静かだ。

せっかく二人きりだから、何か話そうかと思い私は声をかけた。

「あの。平間主任はずっとこの仕事を続けてきたんですか?」

「ううん。前は違う仕事に就いてたよ。保母さんだった」

「保母さんですか!あの…なんで辞めちゃったんですか?」

「んー。ファンクラブみたいのできちゃって」


?!…ファンクラブ??!


一瞬何のことなのか意味がわからなかった。

だが、話を聞くにつれて平間主任のモテぶりは尋常じゃなかったことを私は思い知る。

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