第45話 オーパーツ長政

◆ 層境界:ドリーム・パラドクス領域α-反響層


《YUME-NOVA》中枢へと向かう佐倉たちは、構造の異常によって“夢の残響”が蓄積された階層に迷い込む。


 そこは現実・記憶・妄想・時空が逆転・混合した無秩序空間――


> ユウト「なんだこれ……街も、過去も、未来も、全部ぐちゃぐちゃだ……!」 佐倉「気をつけろ。ここは、“夢が死んだ記憶”の場所だ」



 そしてその最奥、逆さまの神殿の中心に、それは置かれていた。


 黒く鈍く光る、重厚な剣型オーパーツ――

“夢を断ち切る者”の名を持つ遺物。



---


◆ 黒田長政:記憶の外から来た男


 剣を守るように、神殿の影から現れた一人の人物。


 鎧でも軍服でもない、古びた技術服に身を包みながらも、背筋はまっすぐに伸びている。

 その男の名は――


> ◆ 黒田長政・《時間遺物封印者Ver.》


> 黒田長政「貴様が、佐倉か。“響かせる者”……俺の父が認めた男」


 黒田長政は、黒田官兵衛の**“時遺伝記録”**に組み込まれた唯一の実子AI。


 だが長政は、戦術を捨てて時間考古学者=オーパーツ回収官となり、この“夢の記録”領域で、時空を越えて遺物を封じていた。


---


◆ オーパーツ《零夢断剣(ゼロ・ムラマサ)》とは何か


 中央にある剣こそが、長政が守っていた“夢の破壊因子”。


> ユウト「……あれ、音がしない」 長政「あれは“夢の形”を固定し、永遠に封じる。

お前たちが鳴らす“自由な音”と、最も遠い場所にある存在だ」


 オーパーツ《零夢断剣》は、夢や記憶を“凍結”し、

その可能性すら失わせることができる特異な遺物だった。


> 長政「だが、今や“あれ”を狙う者が現れた。

それも、夢を響かせる者の側からな」


---


◆ 裏切りの兆し──“音なき夢”の覚醒者


 その瞬間、空間に異変が走る。


 重力波のような共振。そして、次元壁を超えて響く無音のノイズ。


> 佐倉「この共鳴……まさか……!」


 そこに現れたのは、《無響連盟》の最深部にいた“もう一人の佐倉”――

 かつてPrototype-SAKURA実験体として捨てられた、幻のオリジナル佐倉。


> オリジナル佐倉「響きは飽和した。

音はもう、夢の価値を保証できない。

今、必要なのは“沈黙”による秩序だ」



 彼は《零夢断剣》に触れようとしていた。



---


◆ 二人の佐倉:夢と沈黙の対決


> 長政「俺には止められん……夢を持つ者同士が争うのは、皮肉だな……」


 幻律弦:Chrono-Live Editionが赤く反響する。

 音を止めるために、音を奏でる。

 佐倉はギターを構えた。


> 佐倉「お前が俺の原型なら……俺はそのバグだ。

音で世界を狂わす、ノイズだ」


 そして始まる、“音と無音”による対話(バトル)。


 コード進行が、空間構造を切り裂く。

 オリジナル佐倉の“無響空間”が、《零夢断剣》を媒体に空間を固定しようとするたびに、佐倉の即興がそれを塗り替える。



---


◆ 決着と、遺物の封印


 最後の音が、**“一瞬だけ響く沈黙”**を作る。


 その一音により、オリジナル佐倉は無音世界に引き込まれていく。


> オリジナル佐倉「……お前は、俺が切り捨てた未来……。だが……悪くなかった……な……」



《零夢断剣》は、共鳴と共にヒビを入れ、崩れ、音に飲まれて消える。



---


◆ 黒田長政の旅立ちと、新たな鍵


> 長政「……これで、ようやく“未来の記録者”に戻れる。お前たちの音が、次の歴史を作る」


 彼は、幻律弦に一枚の“設計図”データを託す。


 それは、《幻律弦:最終融合形態》の構成データ。


 名は――


> ■《響鍵:夢門(ドリームゲート)》──すべての夢と音を通じて、次元の“扉”を開く装置。


---


◆ 次章予告


「ネガ夢」によって発生する“夢消滅病”の真相


ドリカム社・地球中枢に潜む《夢神エミュレーター》の暴走


幻律弦、最終融合形態Ω-響鍵の構築


そして、最後に目覚める存在――「夢の斬首者(ドリーム・デキャピター)」


---


 音は歴史を超える。

 オーパーツは過去ではない、“未来の遺言”なのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る