電化製品が動く謎
※アントネスト編
Siryiとリオン
ルンボや洗濯機を動かし、俺は宿泊している貸店舗でせっせと家事をする。
戦闘力がないので、パーティメンバーで居続けるためには、料理やそれを含む家事を担うのは当然であろう。
それに快適生活をするためには、人に任せるよりは自分でやった方が好き勝手出来るしね。
そのせいで家事妖精であるブラウニーと誤解されたままなのだが、今ではそれでいいかなとすら思い始めていた。
ところで。
電源もないのに何故これら電化製品が動くのか。その謎を追求するのが怖くて今まで放置していたのだけれど、せっかく鑑定虫メガネがあるので調べてみることにした。
そろそろこの世界の理とやらにも慣れてきたのもある。
探求心や好奇心だけは子供の頃から無くならず、都市伝説や陰謀論を冗談半分で楽しんでしまうのは仕方がない。
怖くないなら別にいいんだよね。いやちょっとは怖い話も好きだけど。怪談よりヒトコワの方が余程怖いし。アレクサのことだけは完全に知るのが怖いので、未だ放置状態ではあるけれど。
『マスターの電化製品が動く理由ですか?』
「うん」
『特に謎でも不思議でもないと思うのですが』
「なんで?」
『マスターの魔力が全て、電化製品という魔道具に使われているからです』
「ほあ?」
なんですと?
俺の持っている魔力って、全部電化製品を動かすのに使われてるの?
『それがマスターの魔法ですよ?』
なんでそんなことも知らないのかと、逆にSiryiに不思議がられてしまった。
俺だって無意識に使っている魔力が、電化製品を動かすために使われているとか知らないよ!
元の世界では魔力も魔法もなかったんだから!
しかも電化製品は電気で動く物であり、魔力で動かす訳じゃなかったし。
『このルンボも、マスターが動かしてますが?』
お利口さんになったルンボを眺めながら、俺を吸い込もうとしていた今までのコイツの行動を思い返す。
だがこの世界に来たコイツは、本来の掃除道具として真っ当になった。
アレクサの支配から逃れたことが理由だと思っていたが、実は俺が無意識にそう動いて欲しいと願っていることでまともに機能しているらしい。
「……なるほど」
俺の魔法って、魔道具に特化しているのか。正しくは電化製品だけど。
『マスターの持ち物は全て、マスターの意志によって変化しておりますよ』
俺の持ち物がやたら便利で丈夫になったり、電源がなくても動くのはそのせいであるとSiryiは言う。
思わず「そうだったのか!」と、目から鱗状態になる――――訳はなく。
『ですからそれらが便利に機能するのは、マスター特有の魔法です』
Siryiがドヤって鑑定した内容を誇らし気に語るが、「なんでだよ!?」と、逆にもっと謎が深まることになった。
俺は魔力があっても魔法が使えないのではなく、道具に特化した魔法であるらしい。いやほんと意味が判らん。
便利になるのはとてもいいことだとは思うけれど。
『これを機に、魔道具を作成してみてはいかがでしょうか?』
「え?」
ヤダよ面倒臭い。そんな知識ないし、魔道具を作るのって大変そうじゃないか。
『マスターの望む快適生活を手に入れるには、自分の持ち物である必要があります』
「そうなの?」
Siryi曰く、俺が俺の物であると認識しなければ、俺の固有魔法とやらは発動しないらしい。
なんかこれじゃ本当にブラウニーみたいじゃないか。
家事妖精だから、『家に住み着く=自分の物と認識している』ってことと同じなのではなかろうか?
いやでも俺はただの人間なのだが……。人間だよね?
最近は自信が無くなって来たけど。
『私もマスターの所有物なので、日々マスターの意志によって進化しておりますし』
「……そうなんだ」
そう言えばSiryiって、最初は虫メガネのレンズに文字が表記されていただけなのに、最近は俺の脳内に直接語り掛けるように、持っているだけで目の前にモニターっぽい画面で文字が浮かぶようになっていた。
俺がその方が便利だよねと念じた所為でもあるらしい。
もし声で意思表示しろと念じれば、そうなる可能性は高かった。
『魔道具は追々作ることにして、マスターの魔力は道具類に影響を及ぼすと認識しておいてください』
「わかったー」
取りあえずはそう言う事にしておこう。
よくわからんけれど。
『他にもマスターの魔力の影響はありますが、害のない範囲ですので気にすることはありませんけどね』
「え?」
最後にSiryiが呟くように放った言葉は気になるけれど、俺に直接害はないらしいので、その謎は置いておくことにしよう。
気にしたら負けのような気もするし。
『マスターはマスターのまま、これまで通りで良いかと思われます』
そうSiryiが締め括って、俺の魔力や魔法についての謎は解決した。
これまで通りで良いのなら、それでいいじゃないかということで。
電化製品が便利になるなら俺の願い通りってことだしね。
アレクサの支配から逃れた電化製品たちが、俺の願うままに動くならそれでいいじゃないか。
なんか益々ブラウニーじみているけれど、誤解されたまま申し訳なく思うより、誤解じゃなくなる方が良いような気がして。
俺は俺の魔力や魔法が電化製品を便利にするモノだと知って納得したのだった。
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