私のじぃじが、最強だった

きまぐれ本舗

プロローグ

 1人の少女の大事な記憶は、母と過ごした束の間の時間だった。

『ママの大切で可愛い愛しい子』

 割れ物を扱うかの様に、優しく髪を撫でる母の手が好きだった。

『ママの大好きな宝物』

 母の腕の中の温もりに抱かれながら、眠るのが好きだった。

『ママのパパ…じぃじはね、とても強くて格好良くて、其れでいて、とても優しくて大好きなの。美和も逢ったらきっと、ママと同じ様にじぃじの事が大好きになるわ』

 母の大切にしてるペンダントに収められた、まだ逢った事の無い祖父の話を聞いて、何時か逢えるのが楽しみだった。

美和みわ…もしママに何かあったら、このリュックを持って、ママと一緒に歩いて教えた家に向かいなさい。決して、知らない人に付いて行ったり、見つかったりしたら駄目。ママとの約束守れる?』

 母が真剣な表情で話す事に、幼いながらも懸命に約束を守ろうとした。

『美和…ママの所に産まれて来てくれて有難う…愛してるわ』


―これからもずっと…母と過ごして行くのだと思っていた。


「………ママ……?」


 母が真っ赤な血に染まって、動かなくなる迄は―

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