第2話 知らされた現状

 眩しい光に包まれて目を開けると、そこは見知らぬ――けれど、どこか既視感のある、町とも村ともつかない場所だった。

「……あれ? 転生したっぽい?」

 起き上がり、服や体を確認しながら小さく呟く。

 すぐに頭の中で、あの“声”が響く。

『こちらシステム・アドバイザー。通称しーちゃん。初期転生地点への移動、完了しました~。』

「お前、まだいたのか。てかさ、最後に言ってた“頑張ってください”って……何?」

『……現在この世界は“バッドエンド”ルートに進行中です。』

「えぇ!? なんで!? おれ、ただ好奇心で来ただけなのに!?」

『だって、あなたが作ってたゲーム、あまりにもリアルに設定されてて……実際に存在するこの世界と妙に一致してて……』

「だからって! 作ったわけじゃないぞ!? 偶然だろ!? 偶然!」

『はいはい、偶然偶然。とにかく、現状の世界を救うのはあなたしかいません。よろしく!』

 半ば押し付けるように会話を打ち切られ、新子はため息をつく。とりあえず、情報を集めるべく周囲を見渡す。

「ファンタジーと言えば、やっぱり聞き込みだろ……まずは酒場だな」


酒場にて:元勇者パーティーの生き残りと出会う

 入った酒場の隅、昼間から酔い潰れているドワーフがいた。泣いているのは一人だけなので、すぐに目に付いた。

「あー……話しかけたくねぇ……」

 だが、シーちゃんの「その人がキーパーソンです」という言葉に背を押され、新子は意を決して近づいた。

「……あの、ちょっと話を聞きたいんだけど」

「うっうぅ……あの頃は……おら、間違っちゃいねぇよな……!」

 目の前のドワーフ、名はハガネ・タロウ。元勇者パーティーの戦士で、今は酒浸りの泣き上戸。

 どうにかこうにか、ナダメながら話を聞き出した内容はこうだった:


ハガネ・タロウの語る現状

かつて、勇者アッシュ、猫人ノーラ、自分の3人でクエストを受け続けていた。

成功率は最悪で、失敗ばかり。

ノーラは最後の失敗クエストの後、行方不明。

アッシュは違約金の支払いができず、ギルドに捕らえられ処分待ち状態。

自身はクエスト中に石化を受け、今もなお進行中。あと1ヶ月程度の猶予しかない。

石化解除に必要な薬は高額すぎて到底手が出せない。


「……うわー、これはひどい」

 聞き終えた新子は、しーちゃんに頭の中で相談を始める。

『このルートは“ヒーラー不在”による典型的なパーティーバランス崩壊ですね』

「ってか、なんで3人で物語進めてんだよ! メンバー足りてないだろ!」

『その点については、あなたの活躍に期待してます♥』

「うっわ……雑な投げ方してきたなコイツ」


石化解除への第一歩

「まぁ、いいさ。とりあえず、石化をなんとかしないと話にならん」

 新子は一念発起し、まずは石化解除薬の素材を集めるため、行動を開始する。

「金なんかないし、素材から集めるしかねぇな。よし、ダンジョンに行くぞ!」

『そのためにはまず、ギルドで冒険者登録を済ませてくださいね~』

「はいはい、行ってきますよっと!」

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