俺の股間が伝説の剣だった件

亜逸

伝説顕現篇

 俺こと勇者ブランは、聖女、賢者、剣聖――よくある三点セットな仲間を町に残し、伝説の剣の試練に臨んだ。

 そして、見事試練を乗り越えた俺に、神は告げる。


『見事だ。勇者ブランよ』


 試練の場となった、とある山のいただき

 それを見下ろすようにして輝く後光じみた眩い光が、なおも俺に告げる。


『試練を乗り越えた其方そなたならば、伝説の剣の力を顕現させることができるであろう』


 その言い回しに引っかかりを覚えた俺は、天に輝く光に向かって訊ねた。


「神よ。今の言葉、まるで俺の体に伝説の剣が宿っているように聞こえるが?」

『さすがは勇者。察しが良いな。其方が思っているとおり、伝説の剣はすでにもう其方の体に宿っている。其方が勇者に選ばれたのも、それゆえだ』

「俺の体に伝説の剣が……」


 両手を胸の高さまで持ち上げ、拡げた掌を見つめる。

 俺の体に伝説の剣が宿っていたなんてな。

 なんつうかこう……不思議な感慨を覚えるな。


「それで、伝説の剣はどうやったら顕現するんだ?」

『頭の中で念じるだけでよい。剣よ出でよ――とな』


 一刻も早く伝説の剣を拝みたかった俺は、逸る気持ちに背中を押されながら「剣よ出でよ」と念じる。


 次の瞬間――


 俺の下衣ズボンが木っ端微塵に弾け飛び、


 股間から、神々ごうごうしい剣が生え伸びた。


 下半身が丸出しになったショックよりも、竿と玉がご立派な伝説の剣に変わり果ててしまったことに、俺は茫然自失となる。


「なに……これ……?」

『ナニこれもなにも、見てのとおり伝説の剣だ』


 俺は今一度、股間の剣を見下ろし、光の向こう側にいるであろう神を見上げ、


「ふざけんなぁああぁあああぁあああぁあぁああぁッ!!」


 俺史上最高に怒り狂った大声で叫んだ。


「なんでチ○コの代わりに伝説の剣が生えてんだよ!? おかしいだろ!?」

『ま、待てブランよ! 興奮して剣をぶらんぶらんと振り回すでない!』


 直後、取り乱した俺の動きに合わせて振り回された伝説の剣――その動きを辿るようにして飛翔した斬撃が、空を覆う雲を八つ裂きにする。

 股間のご立派様が本当に伝説の剣だと理解させられるには、充分すぎる光景だった。


 理解したから、四つん這いになって項垂れた。

 その際、下を向いた伝説の剣が地面に突き刺さるも、薄絹を裂いたのかってくらい股間には何の抵抗も感じなかった。


『さてブランよ。其方も、伝説の剣の名を知りたいと思っておるところだろう』

「この流れでよく普通に話を進められるな、おい」

『その名もフルティング!』

「ティルフィングに謝れ」

『その剣があれば、魔王とて容易く退治することができるであろう』

「こんなもんぶら下げて魔王と対峙するのがイヤなんだが?」

山頂ここまで登ってきた褒美だ。我の力で、山の麓までワープさせてやろう』


 言うや否や、俺の体が光に包まれていく――ってあのバカ、このまま俺を山麓に戻すつもりか!?


「ま、待て! まだ聞きたいことが――」


 気がついた時にはもう、山麓に拡がる森の中にいた。

 幸い試練の場となる山は人里離れた場所にあるため、すっかりご立派様になった俺の股間が誰に見られる心配はない。

 ないが……


これの戻し方を教える前にワープさすなや、あんのド畜生ぉおおぉおおぉッ!!」


 ちなみに、大変絶望的なことに、「剣よ戻れ」とか、そんな感じのことを念じても、股間の剣がいつもの竿と玉に戻ることはなかった。

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