第3話 登録

 魔力と錬金薬術師としての期待値を師匠に伝えた後、自分の部屋に直行した。

 ベッドにダイブして目をつぶり、解放の儀で覚醒した自分のステータスボードを思い浮かべる。


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アンドレア・クラウディウス 14歳 男

[種族]魔人族/100%*

[魔力量]MAX:S/現:D

[レベル]攻撃力MAX:S/現:D、身体力MAX:B/現:D、知性MAX:A/現:D

[特殊スキル]鑑定MAX=C/現:D、火炎魔法MAX=S/現:D

職種:錬金薬術師・ランクMAX=S/現:D

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 師匠は僕の母親ではなかった。そして、血の繋がりもない。

 師匠の話からすると、僕の父親は『魔人族/100%』の純血。

 師匠は人族と魔人族のハーフ『人間族/50%・魔人族/50%』だ。

 僕が師匠の子供ならクォーターとなる。つまり、『魔人族/75%・人間族/25%』だ。だけど僕は『魔人族/100%*』だった。


 僕は師匠と一緒に暮らしている。そして父はここにいない。

 そもそも一度も見たことがない。


 僕には氏があったからどこかの一族の子なんだと思う。どんな経緯で師匠が僕を一人で育てているのか僕は知らない。物心ついたときから師匠と一緒だったから。


 ベッドの上で転がって、目を開けてみる。

 部屋は月明りでうっすら家具が見える程度の明るさしかない。

 僕は天井を見上げてもう一度考え始める。


 血縁関係のない僕と師匠が一緒にいるのは、父の姉か妹、もしくは父の親戚筋の人、または母の家に養女に入った人、とかかな。

 僕が幼かった頃、師匠はよく父の話をしてくれた。

 武勇伝や父の癖、デートをしたときの話とか。

 本当に嬉しそうに話すんだ。頬を赤くして、そして懐かしそうにね。

 その表情や話の内容からも、師匠と父が恋人同士だったのは確実だと思う。

 だから、父の親戚関係というのは一般的には考えにくい…。

 後は、母の義理の姉妹。養女とかかな。


「でもなあ、師匠から僕の母親の話は一度も聞いたことがないんだよなあ」

 まるで、母のことは知らないと言わんばかりだ。


 「んん~。他に可能性として考えられることは…」


 さらに寝返りを打つ。少し離れたところにある姿見が目に入った。月明かりが反射して綺麗だと思った瞬間閃いた。


 「あっ! わかった!!」


 何か分かった気がした。

 僕は父親の連れ子で、母が死んだ後に父と師匠が恋仲になった。

 だけど、結婚する前に父が死んだ。

 師匠は父を愛していたから、父の血を引く僕を一人にしておけなくて引き取って育ててくれた。


 これなら自然な流れになるよね。

 師匠が僕の母親のことを話さない理由にも納得がいく。


「そうか、そうなんだね。

 でも、それだと僕の両親はもう死んでしまっているということか。

 世界を旅して、いつか父に会いたいと思っていたんだけどな……。」

 話にしか聞いたことがなかったけど、父親は生きている気がしていた。


 なんだかよく分からない気持ちになったけど、疑問が解けたせいか眠くなってきた。

「師匠の話に出てくる……英雄のような……父に…会いたかった…な……。」




 ゴーンと鐘が一回なった。


 いつの間にか、僕は寝てしまっていたようだ。

「そろそろ起きなきゃ」


 しばらくしたら鐘が『3回』鳴る。

 その鐘の音を聞いたら大人たちは働き始めるんだ。

 朝昼晩とそれぞれ鳴り、昼に鳴ったら昼食の時間、夜はそろそろ寝る時間とされている。

 それぞれ、『第一の音』、『第二の音』、『第三の音』という。

 鐘が『3回』鳴る少し前に『1回』だけ鳴るんだ。今みたいにね。


「もうすぐしたら『第一の音』が鳴る。早く支度しなきゃ。」




 朝食を軽く食べた後、僕は急ぎ気味に家を出てツリーに向かって歩き出した。

 なぜツリーに向かっているかいうと、実は、昨日の帰り際、迷宮職員に「今日は登録と講習があるから『第一の音』の時間にツリーに来るように」と言われたんだ。

 これが終わらないと迷宮で探索出来ないらしい。

 今日から師匠とフォレストバレーに行けると思っていたけど、残念だ。

 …いや、「残念」だと思う自分と、師匠と血の繋がりがないと知って気まずいから用事があって「良かった」と思う自分がいるかな。


 遠くからも大樹であるツリーが目立つけど、近くに来るとその大きさがよく分かる。




 勢いよく、ツリーの大きなドアを開ける。


「ようこそ、タワー・ツリーへ。登録でよろしかったでしょうか?」


 ドアを開けると、灰色の長い髪の女性が笑顔で声をかけてくれた。

 ここ、ツリーの1階には迷宮の受付がある。

 昨日もここに来たよね。


「はい。昨日スキルを覚醒したので、今日は登録と講習を受けに来ました」

「では、あちらに並んでください。順番に登録していきますね。お好きな列にお並びください」


 お姉さんが指さした先には、既に5、6人ほどの少年少女が列を作っていた。とりあえず一番少なそうな列に並ぶことにした。



 しばらくして僕の番になった。

 迷宮に入るためにはスキルを覚醒させていることが最低条件となるけど、それをタワーで登録する必要がある。

 登録するためには、女神族の特殊な力を二の腕に流す必要があるんだ。

 担当してくれるのは、聖女以外の女神族の女性だ。聖女は女神族の中でも特別だから滅多に外には出てこない。

 もちろん、聖女以外の女神族も特殊な力を持っているし、数はそんなに多くないため大事にされている。


「お名前をどうぞ」

 僕と同じくらいの年齢の子だ。薄緑色の髪をしている。昨日の聖女は濃い緑色だったので、力の強さが関係しているのかもしれない。


「アンドレアです」

 僕の言葉に頷きながら、少女が僕の二の腕に触れた瞬間、全身を何かが廻ったような感覚がして、カッと腕が熱くなった。


 登録することによって二の腕に紋が現れる。模様は個々人で違うので、唯一無二となる。

 僕の紋は有翼人の模様で濃い赤色だった。ちなみに、昨日の覚醒を終えて僕の髪の色も銀髪の髪から濃い赤色に変化している。

 色は魔法の属性に関係していて、数種類持っている人は複数の色で模様が描かれる。僕は火炎魔法だから赤色なんだ。

 ここら辺の話は、この後の講習で詳しく教えてくれるって言っていたかな。ここら辺の話は、この後の講習で詳しく教えてくれるって言っていたかな。


「は~い、皆さん~。

 全員登録が終わったので~、隣のフォレストバレーに移動しますね~。

 ついてきてくださいね~」


 受付とは別の場所で、先ほどとは違う灰色の髪の女性が先導し始めた。

 どうやら、講習の前にフォレストバレーの中を案内してくれるらしい。

 ツリーの横のドアからフォレストバレーに入る。


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