症例報告2
【背景】
近年の産科医療の進歩により、分娩管理の安全性は向上しているが、それでもなお子宮破裂は母児の生命に関わる重大な産科合併症である。特に帝王切開既往子宮における分娩管理においては、そのリスクを常に念頭に置く必要がある。一方で、帝王切開歴のない子宮破裂も非常に稀ではあるが存在する。今回、いささか不可解な点を含む子宮破裂の一例を経験したので報告する。
【現病歴】
年齢:29歳
妊娠歴:0妊0産
既往歴:なし
現病歴:
自然妊娠で前医で妊婦健診をしていたが,妊娠34週に突然の腹痛のため前医を救急受診した。経腹超音波所見および胎児心拍陣痛図でも異常を認めなかったが、腹痛が持続するため経過観察入院となった。翌日腹痛の増強、背部痛、血圧の低下を認め、切迫子宮破裂の診断で当院へ母体搬送されることとなった。搬送中に心肺停止状態となり、心肺蘇生処置を行いながら搬送された。当院到着後も心拍再開することなく、死亡確認がなされた。ところが、母体の死亡が確認されたにもかかわらず、胎児心拍は維持されていた。胎児救命の可能性があると判断し、緊急帝王切開術を行った。不可思議なことに、胎児は破裂した子宮の亀裂から上半身を露出している状態だった。胎児は無事摘出され、その数十時間にわたり生命機能を維持していた。
【考察】
通常、母体の心停止後、胎児が生存できる時間は4-5分と言われている。心肺蘇生処置が継続されていたとはいえ、本症例では心停止後数十分経過していたにも関わらず胎児は生存し続けており、極めて稀なケースと言える。また、子宮破裂で胎児が亀裂に嵌りこんでいたという点も、筆者らが検索した範囲では他に報告がなかった。
【結語】
母体心停止数十分後まで生存し、緊急帝王切開術で胎児を救命しえた一例を経験した。しかし、胎児が子宮の亀裂に陥頓していた機序が不明であり、今後類似症例が発見されればさらに考察を重ねていく必要がある。
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