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阿々 亜

症例報告1

【背景】

 周産期医療が発達した現代の先進国(我が国を含む)においても、依然として妊娠・出産は母子ともに生命のリスクと隣り合わせであり、我が国の周産期死亡率は減少傾向ではあるものの、現在も出生1000対3-4例程度と言われている。今回、極めて不可解な子宮内胎児死亡の一例を経験したので報告する。

【症例】

年齢:28歳

妊娠歴:0妊0産

既往歴:なし

現病歴:

 妊娠17週3日に胎児発育不全精査のため当院紹介となった。各種精査の結果、母体に大きな問題はなく、胎盤の付着位置や血流等にも問題はなかった。胎児発育不全の明らかな原因は指摘しえなかったが、今回の妊娠・出産の背景に社会的問題を抱えており、そのことでストレスを抱えているとのことで、ストレス要因が大きく影響しているのではないかと推測された。その後も胎児発育は不良で、1か月後に胎児心拍の停止を確認した。翌日分娩誘発を行い、胎児の娩出を試みた。しかし、羊水と胎盤の排出はあったが、胎児本体が娩出されなかった。エコーで子宮内に残存していると思われる胎児を確認しようとしたが、胎児の像は確認できなかった。CT、MRIでも確認したが、子宮内に胎児は確認できなかった。

【考察】

 子宮内死亡確認翌日に胎児娩出を試みたが、胎児は子宮内になかった。まず考えられるのが流産だが、発育不全であったとはいえ胎児はかなりの大きさになっており母当人が気付かないうちに流産していることはありえない。次に、なんらかの要因で胎児が子宮内で溶解したという可能性であるが、仮に子宮内感染などがあったとしても、痕跡も残さず消えてしまうというのは理解しがたい。

【結語】

 現状、今回の事象は胎児の消失としか表現のしようがなく、当院では納得のしうる機序を考察しえなかった。今後、類似の症例が蓄積されることがあれば、機序の解明や予防策等を検討していきたい。

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