第7話 保管庫が建造されました
「なんか新しい建物が増えてる」
先ほどの窓から保管庫が建てられたと描いてあった。
俺は棚の保管庫をゆっくりと開いた。
きしむような音とともに、中には木箱のような収納箱がいくつか積まれていた。
【保管庫】
・血止草 ×3
・魔獣の革(小) ×2
・牙の欠片 ×1
・魔獣の肉 ×1
・???の残骸 ×1
「……お、ちゃんと入ってるな」
知らないうちに建物が瞬時に立ち、あっちで手に入れた物は転送と同時にここへ移動。
なんとも不思議な場所だ。
「ぐちゃぐちゃってほどでもないけど、肉が他の素材の上にどんと乗ってるのはちょっと嫌だな……」
クラリスが覗き込み、くすりと笑う。
「適当に放り込まれてないだけいいんじゃない?」
「それもそうだな」
ノアは魔獣の肉を取り出し、においを確かめる。
焼けていない獣臭さが強いが、完全な腐敗臭はなかった。
「火さえあれば──ってとこか」
クラリスは小さく頷くと、隅に置かれていた設備の一つを指差した。
「あれ、もしかして……調理台?」
ノアが近づいて確認すると、粗末な金属の台に、焼き焦げの跡が残っていた。
五徳のような枠が乗っており、下部には着火装置の痕跡がある。
「……点かないな」
「燃料切れかも。あるいは、この世界じゃ機能しないか……」
【調理設備:要修理】
→ 必要素材:鉄片 ×2 / 簡易燃料剤 ×1 / ツールキット(小)
「なるほど……これは真っ先に修理候補ね」
ノアは魔獣の肉を戻しながら、小さく息を吐いた。
「また、藁で焼くか」
「寝床がどんどん薄くなるわね」
二人は苦笑しながら、それぞれ拠点内の椅子に腰を下ろした。
天井の薄明かりがぼんやりと照らす中、しばしの静けさが訪れる。
──だが。
「……クラリス。今、音聞こえたか?」
ノアがぴくりと耳を動かす。
「音?」
彼女もすぐに身を起こし、周囲に意識を集中させた。
──カツ、カツン……カツ……。
金属と何か硬いものが当たるような、断続的な足音。
それが、拠点の外……ではなく、内側のどこかから聞こえてくる。
「……この拠点、俺たち以外に誰かいたか?」
「さっきまではいなかった。見かけてないし……」
ノアは剣を抜き、クラリスも弓ではなく槍を構える。
足音は徐々に近づいてきていた──
「上の階層から……?」
小さな階段の先、薄暗い通路の向こうに、人影のようなものが浮かび上がった。
だが、そのシルエットは人間にしては妙に細長く、関節が不自然に反っていた。
「っ……違う。あれは……人じゃない」
クラリスが低く呟いた瞬間、その影がこちらに気づいたように、ゆっくりと首を傾げた。
──キィ……ギチギチ……ギィィ……
異様な軋み音。
それはまるで、サビた関節を無理やり動かしているようだった。
「来る!」
ノアが前に出て、剣を構える。
その瞬間、影がカタリ、と首をもう一度傾け──
そして、まるで合図のように、一斉に別の音が周囲で鳴り始めた。
──カン……カン……カン。
それは、何かをノックするような規則的な音。
「……囲まれてる?」
「いや、待て。これ……警告音?」
直後、拠点の一角に設置されたパネルが、唐突に赤く点滅を始めた。
【警戒モード移行】
【識別不能個体が近接領域に進入】
【外部封鎖プロトコル起動まで、残り02:00】
「なにこれ……!?」
「まずはこいつらを排除して──!」
その瞬間、頭上から何かが飛びかかってきた。
ノアは咄嗟に身を翻し、剣で受け止める。
ガキィン!と硬質な衝突音──飛びかかってきたそれは、まるで人形のような外殻を持った存在だった。
「……機械?」
歪んだ構造をした存在は、無言のまま、再びナイフのような腕を突き出してきた。
──新たな、敵性存在。
だがそれは獣とも、生き物とも違う、“何か別のもの”だった。
何なんだ、こいつら……
ノアは飛びかかってきた敵の重みを受け流すように回避し、剣を振るった。
だが──手応えがない。
刃が確かに敵を斬ったはずなのに、金属の外殻を弾くように火花が散っただけだった。
「……チッ、固すぎる!」
敵は人間に似た骨格をしていた。だが、関節の動きは断続的で不自然。何より、どこにも“生”を感じさせなかった。
「右来るわ!」
クラリスが叫び、槍で別の個体の突進を横から弾いた。だが弾かれた個体は倒れることもなく、すぐに姿勢を戻し、また襲いかかってくる。
「人形みたいに、壊れなきゃ止まらない……!」
ノアは唇をかみ、思い切り踏み込んで構え直す。
「なら、壊すまでだッ!」
剣を横に大きく薙ぎ払う。勢いで敵の片腕を弾き飛ばすと、クラリスがすかさず追撃に入った。
「そこ!」
槍の穂先が関節部を貫通。確かな破壊音と共に、敵の動きが一瞬止まる。
「……止まった?」
だが、次の瞬間──
──ギチッ、ギギギ……
崩れた個体の背面が、カクンと跳ねるように再起動を始める。
「まだ動くのかよ……!」
ノアは息を切らしながら周囲を見回す。
拠点内には、同じような個体がすでに五体以上侵入していた。
そのどれもが、剣や槍では破壊に時間がかかり、倒しても“修復”されるように再起動を繰り返す。
そして──パネルの赤い点滅が加速していた。
【封鎖プロトコルまで残り:01:00】
「クラリス! なんかあの数字どんどん減ってるぞ!」
「わかってる! でも数が多い!」
クラリスの声が、これまでにない緊張感を帯びる。ノアもそれを察して、呼吸を整えながら周りをなるべく見渡して状況把握に努めた。
その瞬間、足元の床板が突如として浮き上がった。
「下からも来るぞ!!」
ノアが叫ぶのと同時に、床下から這い出してくる別タイプの個体──四肢が異常に長く、関節が蜘蛛のように折れ曲がった“這う敵”が現れる。
「こいつら……!」
ノアは剣を逆手に構え、斬撃ではなく打撃に近い力で敵の頭部を叩き潰した。
──ベキィッ!
割れた外装から火花が散り、内部で小さな爆発音が起きる。
「中のコアを壊せば停止する!」
「弱点……頭部中央か!」
クラリスも気づき、槍ではなく再び弓に持ち替える。
「構えて、……いける!」
──シュッ!
矢が一直線に飛び、敵の額に突き刺さる。火花と共に、その個体は完全に沈黙した。
【敵性反応:減少中】
【制圧率:37%】
現れた窓が変化する。──敵は明らかに“減っている”。
「押せるぞ……!」
「こっちからも来るッ!」
新たな二体が同時に突撃してくる。
ノアは地面を蹴り、一体の懐へ飛び込むと──自らバランスを崩すように転がり込む。
「──っらぁあああッ!!」
横回転の勢いを活かし、剣を下から突き上げる形で、敵の頭部を吹き飛ばした。
「うまいッ!」
クラリスもすぐに残る一体へ矢を撃ち、左肩を砕く。追撃に回り込んで槍で心臓部を貫くと、爆発するようにその個体も崩れた。
【敵性反応:大幅減少】
【封鎖プロトコル中断。警戒モード継続中】
──窓の光が、赤から橙色へと弱まる。
「止まった……?」
ノアが警戒を解かぬまま、周囲を見回す。
もはや敵性個体の反応はなく、破壊された残骸が床に転がっていた。
「……終わった、か……?」
数秒間の沈黙の後、ようやく、拠点全体の緊張がほどけるように空気が落ち着いていく。
ノアとクラリスは肩で息をしながら、それでも武器を下ろさなかった。
◆ ◆ ◆
【拠点防衛:成功】
【敵性個体:全排除】
【敵の破片 ×6/動力核(欠損)×2/壊れた視覚機器 ×1】
【調査レベルに応じて、情報解析が可能です】
【!】新たな施設アンロック候補:
・修理装置(簡易)
・強化研究台(Lv1)
・戦闘ログ分析端末(設計図)
◆ ◆ ◆
「……はあ」
ノアはその場にへたり込むように座り込んだ。
「今度は、機械かよ……」
「この拠点、外だけじゃなく中にも何があるかわからないってことね……」
クラリスもまた床に座り込み、壊れた視覚モジュールを拾い上げる。
「こんなものが動いてたなんて……。でも、これ、解析できれば何かわかるかも」
「そうだな。とりあえずなんとかなってよかったよ」
拠点の静けさが戻る中、二人は互いに苦笑しながら、それでも決意を新たにしていた。
この世界には、まだ“見えていない脅威”が、間違いなく存在している。
もちろんです。これまでの描写を踏まえて、クラリスは冷静沈着な観察者タイプであり、ノアやガイルと比べると直接的な戦闘力は高くないものの、分析力と支援に優れたキャラとして設計できます。彼女はノアと同じく召喚された存在ではなく、拠点の管理者のような立ち位置でありながら、現地でもある程度戦えるようなスペックを持っていると自然です。
⸻
クラリス・エンリル
レア度:★★★☆☆
種族:人間
年齢:18歳
レベル:1
• HP:32
• STR(筋力):5
• VIT(体力):7
• AGI(敏捷):8
• INT(知力):15
スキル:
• 《解析眼Ⅰ》
▶︎ 対象の種族、属性、弱点、状態異常耐性などの一部情報を読み取ることができる。
• 《戦術指示Ⅰ》
▶︎ 味方全体の回避率・命中率を小幅に上昇させる。使用後、クールタイムが必要。
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