12:詰問

モッズコートからブーツまで黒尽くめの男、クロウが何の感情も感じさせない真っ黒な目でルシアン・モローとヴィンセント・ロウを捕らえていた。


「邪魔するぜ、ロウ市長。ちょっとそっちのモローさんに用があってな」


クロウは不自然な様子でポケットに右手を入れたまま、クイッと顎でルシアンを指す。


ミラを背に隠したアレックスは狩りの前の猫のようにその右手をじっと見つめている。



「色々探したがなかなか見つからねぇ。これはご本人に聞きゃ一発だと思ってな。ああ、それとも市長もご存じなのかな?」


にやりと嗤ってヴィンセントに視線を移す。


「⋯⋯一体何の話かな?」


ヴィンセントが返す。こんな状況でもその声はいつもと変わらず落ち着いていた。


「ハハッ流石は市長さん、これくらいじゃ慌てたりしねぇか」


クロウがポケットからゆっくりと右手を出す。

その手にはハンドガンが握られていた。

ルシアンが静かに一歩、ヴィンセントの左側に近寄る。

そんなルシアンに銃口を向け、クロウは続ける。


「教えてくれよ。何処にある?ギャラリーゴーストのお宝ってやつだ。あんたが持ってるんだろ?」


それからヴィンセントに銃口を向ける。


「30年前に盗まれた一番デカいやつさ。そっちの市長さんはもう持ってないみてぇだからな」


ピクリとルシアンの眉が動く。

ヴィンセントは反応しない。


「流石のポーカーフェイスだな市長さん。でもあんたギャラリーゴーストが盗んだ絵をオークションに出しただろ?売り主を辿るのはなかなか骨が折れた」


目を細めたクロウがルシアンを睨みつける。


「修復を手掛けたやつも、な」


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