第10章『明かされた黒き陰謀』
刺客が倒れ、森には静寂が戻った。クライヴは、自らの手に戻ってきた『無銘ノ剣』の感触を確かめるように、強く握りしめる。「クライヴ、大丈夫……?」。リリアーナが心配そうに声をかける。「……ああ。お前たちのおかげだ」。彼は仲間たちに視線を送り、静かに、しかし力強く頷いた。一人では、決してこの場所には立てていなかった。
「さて、こいつが黒幕の手がかりってわけだな」。ガルドが、刺客が身につけていたポーチを逆さまにする。中から出てきたのは、数枚の金貨と、羊皮紙でできた一通の指令書だった。そこには蛇が剣に巻き付いているような、不気味な紋章が刻まれている。「この紋章……エルフの古い伝承に出てくる、混沌を崇める教団の印に似ているわ……」。リリアーナが眉をひそめた。
指令書に書かれていたのは、特殊なルーン文字を組み合わせた暗号だった。クライヴはそれに既視感を覚える。「この文字の形、俺が武器に特性を刻む時に使うものと似ている」。二人の知識を合わせ、解読を試みる。やがて明らかになった内容は、彼らにとってあまりにも衝撃的なものだった。
「『炎剣』は商業都市へ。『風槍』は山岳地帯へ」。そこには、彼らがこれまで回収してきた武器の名前と、その引き渡し先が正確に記されていたのだ。全ては、偶然ではなかった。「どういうことだ……?」。クライヴは愕然とした。彼の武器は、ただ無秩序に流出したのではない。何者かが、意図的に、紛争が起きやすい場所へとばら撒いていたのだ。
「ふざけやがって……!」。ガルドが怒りに拳を震わせる。「つまり、俺の森に魔獣が湧き出したのも、こいつらの仕業って可能性が高いってことか!」。全ての点が、線で繋がった。彼らがこれまで戦ってきた相手は、皆、この巨大な悪意の手のひらの上で踊らされていたに過ぎない。そしてその元凶は、クライヴの武器だった。
「俺のせいだ……。俺が、あんなものを作ったから……」。再び自己嫌悪に陥りかけたクライヴの肩を、ガルドが力強く叩いた。「馬鹿野郎!お前一人のせいじゃねえだろ!悪いのは、その武器を駒としか見てねえ、どっかの誰かだ!」。その単純明快な言葉が、クライヴの心を救う。「そうよ、クライヴ。私たちは、その悪い奴らを止めなきゃいけないのよ」
そうだ。罪の意識に苛まれているだけでは、何も変わらない。彼の胸の内に、罪悪感とは違う、静かで冷たい感情が湧き上がってきた。それは、人の想いが宿る武器を、ただの道具として弄ぶ者たちへの、紛れもない怒りだった。「……ああ。俺は、俺の作った武器を、これ以上好きにはさせない」。彼の瞳に、鋼のような決意の光が宿る。
「指令書の切れ端に、次の地名が書かれてるわ」。リリアーナが別の羊皮紙の欠片を指差した。「南の鉱山都市……。そこに何かがあるはずよ」「『震天の槌』。鉱山の採掘用に作ったものが、今は奴隷を支配する道具になっているらしい」。クライヴの言葉に、リリアーナは強く拳を握りしめる。
旅の目的は、この瞬間、変わった。それはもう、単なる武器回収ではない。世界を裏から操り、人々を苦しめる巨大な悪意との戦いだ。「よし、決まりだな!次の目的地は鉱山都市だ!」「ああ。必ず、黒幕の尻尾を掴んでやる」。三人の決意は、これまでになく固いものとなっていた。
クライヴは、改めて『無銘ノ剣』を握りしめた。この剣は、もう自分一人のものではない。仲間との絆の証であり、悪を断ち切るための刃だ。彼の個人的な贖罪の旅は終わりを告げ、世界を救うための戦いが、今、幕を開けた。三人は新たな決意を胸に、次なる戦いの地、鉱山都市へと向かって歩き出した。
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