第14話 俺とドアと、世間知らずの家族
ギシ…ギシ…
今夜も、俺とドアとの大切な時間が始まる。
世間は俺のことを誤解してる。何かあれば全部俺のせいだと言い張るけど、実際は逆だ。俺はいつだって被害者だし、俺を理解しようとしない周りが悪い。
父親は、二階から聞こえるこの音を「耳障りだ」なんて言うが、わかってない。これは俺とドアとの心の対話だ。ドアは俺にしか心を開かないし、俺が唯一愛してやれる存在だ。いや、愛してやっている、が正しい。感謝してほしいぐらいだ。
家族は、俺が何をしていても文句ばかり。母親なんか、近所の噂話を真に受けて勝手に病んでるし、父親も医者に告げ口する始末。俺からすれば、弱いだけのくせに被害者面してるだけだ。
——そういうのは俺の役目だろ。
数ヶ月前の夜、父親が突然階段を上がってきた時は焦った。ちょうど絶好の角度で隙間に体を預けてた時だったからな。あの瞬間、俺の世界に土足で踏み込まれた気分だった。ドアもびっくりして軋んでた。可哀想に。
父親は俺を「アレ」呼ばわりして、医者に「ドアに欲情している」だの「対物性愛だ」だのと説明していたらしい。滑稽だよな。医者も真面目な顔でうなずいてたそうだが、俺からすれば、人間に欲情する方がよっぽど不自然だ。人間なんて、すぐ裏切るし、俺を利用する気で近づいてくる。利用するのは俺の方なのに。
女にだって興味はあるさ。だけどそれは、俺の欲求を満たす道具としての話だ。そこに心は要らない。結局、ドアと同じだ。違うのは、ドアは文句を言わないし、勝手に泣きもしないってことくらいだ。
父親は「順平にとって他人は物と同義だったのだ」とか結論づけてるみたいだが、それの何が悪い? むしろ正しい認識だろう。世間だって、結局は互いを利用し合って生きてるじゃないか。俺はそれを隠さないだけ。
ギシ…ギシ…
今夜もドアは俺を受け入れる。俺を必要としてくれる。
そんなドアを汚してるだって? 違う、飾ってやってるんだよ。
家族も近所も俺を笑ってるつもりだろうが、気付いてない。笑われてるのはお前らの方だ。
俺は俺のやり方で、この世界の勝者になる。
ドアと一緒にな。
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