2話
春川は、講義が終わるとノートを閉じながら、峻の様子を横目で見た。相変わらずぼんやりした顔で黒板を見つめている。
そういえば、講義中に腹の音が聞こえたな。さすがにあれはごまかしようがない。
「…お前、また朝飯抜いただろ」
わざと軽口みたいに言う。
峻は俺の言葉は無視し、背伸びをしてゆっくりと後ろに反り返り天井を見上げた。
「天井のあの装飾ってなんだ?」
「装飾?ああ、あの太陽みたいなやつな。俺たち学生の未来を照らしてくれてるんじゃないの?特にお前みたいなやつを。」
峻はちょっとむっとした表情をしたが、すぐにいつものようにやる気のない顔に戻った。
しかし峻の奴、最近ほんとに覇気がない。就活も進んでないようだし、バイトのシフトもやたら多い。何もかも面倒くさがって、ただ流されているだけ。昔からズボラなところはあったが、最近はそれに拍車がかかっている。
おそらく、自分でもヤバいとは思っているのだろうが、既に考えることすらも放棄しているようだ。そういうところが、ちょっとイラつくし、心配でもある。
そんな峻の様子は、彼のノートの文字にも表れている。小さくて少し斜めに傾いて、全く覇気が感じられない。
「飯、行くか?」
なるべく軽い調子で言った。
峻は「おう」とだけ言った。
駅前の定食屋は、安いのに量だけはしっかりあって、いかにも学生御用達だ。
「唐揚げ定食、だろ?」
からかうように言うと、峻はわずかに顔をしかめたが、結局それを頼む。
飯をかきこみながら、くだらない話をしているこういう時間が俺は好きで、いつまでも続けばいいと思う。峻とは古い付き合いだし、性格は違うのになぜかウマが合って話が弾む。2度と出会えない親友だ。
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