第19話
俺はその日、探索者協会の岩手本部に呼び出されていた。
俺は冒険者になって魔法使いのジョブを得た時に勝ち組になったと思ってその勢いで稼げるダンジョンもあるし都会でもある岩手本部へ田舎から出てきた。
その魔法使いのジョブが思ったよりハズレだった。魔法のレベルを上げないと使い物にならないからだ。しかも、魔法使いになった途端に武器での攻撃レベルが上がり難くなった。
それでも以前ならクランと呼ばれる探索者のグループで育成と言う手もあったのだが、ファンタジー金属の確認で状況が変化した。
大手のクランもより深層を目指すようになり、魔法使いのようにレベル上げに手間のかかる事はしなくなったのだ。
大手のクランに所属出来る魔法使いは攻撃が出来るようになったレベルの者しか雇わなくなったのだ。
魔法使いは魔法レベル1で種火(チャッカマン)、2で灯明(非常灯)、3で湯沸かし(やけど)で3になってやっと牽制に使えるかな、と言われており、5でやっとなんとか魔物に実質的なダメージを与えると言われるが、それが遠いのだ。
「真城と申しますよろしくお願いします。
郡司さんですね。魔法レベル2。
あなたに暫く勤務して欲しい場所があります。但し、秘密厳守で了承した場合はそこで最低三ヶ月は常駐して貰います。
業務については守秘義務が課せられますので公開後もこちらの指示に従って下さい。
それではこの書類にサインを」
俺は金の事もあって一も二も無くサインした。
「詳細は現場に着いてからお話しますが、何度も結果が判るまで魔法を使って貰う事になります」
俺は組合で待っていた女性に案内されて町外れの真新しい建物に着いた。
中には宮司と巫女が待っていてこれから起工式も行うようで巫女が場を整えながら四角く紐で区切った場所に土盛りして、榊の枝を挿したりしていた。その向こうには………ダンジョンじゃないか。ダンジョンでこの施設の起工式?
たしかにこの辺りならダンジョン効果の範囲で魔法も使えるけれど。
厳かに式次は済み、宮司がお参りしてた何かを記した銅板を私に渡した。
「この魔方陣をこのポイラーのここに置いてこの魔石にチャッカマンを唱えて一個ずつ置いて下さい」俺を案内してきた真城さんが指示してきた。
俺は機械の事は良く判らないが、燃料パイプなどに繋がってる様子がない。俺は機械の上の板を嵌めてチャッカマンを唱えた魔石を置く。魔石はそれにピタッと付着した。
「温度上昇。圧力まだ変化なし」機械の計器担当が報告する。
え、魔石で熱があがるのか。俺は驚いた。そんな話しは聞いた事が無い。
「もう一個、先ほどと同じように」
真城と言う女性は驚いた様子も無く、淡々と進める。
「温度、倍加。圧力微増」
係員も驚いたように続けている。
そして三個目からは更に三倍になり、四個目はさらにその四倍。
どんどん温度が上がっていくようだ。やがて水が沸騰して膨張して蒸気タービンを回す。つまり魔石が発電に使えるようになるのか。
係員も興奮しながら「臨界点到達!本当に蒸気タービンが動き出しました」と叫んでいた。
「全体を一度停止したい時は、この魔方陣に触れて魔力を流し、再起動は更にもう一度。
郡司さんはこの作業の監督者としてここに勤めて貰います。
温度の微調整にはもう二枚、方陣板を渡して起きますので係員と相談しながら使って下さい。
それと残りの魔石の保管もお願いします。この起動した魔石はエネルギーを使い果たすと崩壊しますので、魔石がどのくらい持つのかを記録したり、また崩壊したぶんの魔石補充も仕事です。
それとこの祭壇への朝の拝礼もあなたの仕事です。これはハズレダンジョンですからたまにはゴブリンとかスライムが沸くことがありますのでその対応の為です」
魔石の崩壊?魔石は壊れない事で有名だ。溶鉱炉に入れても無事で取り出したら熱も帯びてないと言うまるでそこにあるのに物理的に存在しない謎の物質だったはずだ。
魔石の発電と言い、崩壊と言い、俺はとんでもない事に巻き込まれている事を改めて感じた。
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