第15話

 世の中が動き始めたその鳴動を知る事も無く、私は次の探検まで菜園の手入れに平行してうちのダンジョンの入り口を偽装したりしていた。

 桜川さんにも見つかってしまう位だから少し隠れるように入り口を隠すように物置をコンパネや垂木を買ってきて建てる。

 大きめの小屋で壁には農具のスコップや鍬、草刈り機などが掛けてある。

 奥は一段高くして半分はビニールなど農業資材を置く。

 左側はロッカーのように鍵をかけれるようにして農薬庫のプレートをつけた。

 農家では農薬に劇薬を使う事も多いのでこうした鍵のかかるロッカーを持っている事が多い。だがこれは偽装で上棚もあってそこには確かに幾つかの農薬が置いてあるが、床は簡単に開いてダンジョンの入り口が現れる。

 ダンジョンの実際の入り口を隠す農薬庫の扉を資材を置いてある方に開くと桜川さんが着替え出来るスペースにもなる。ダンジョン装備にここで着替えれば桜川さんが少しは目立たなくなる。

 これでちょっとは安全だ。


 そしてまた土曜日がやって来た。

「今日もよろしくお願いします」

 桜川さんは今日も可愛い。

 私たちが小さくなった後にミミちゃんはナオに載って貰った。

 二層のコボルト村を過ぎてミミちゃんの案内で三層を目指す予定だ。

 しかしコボルト村に入るとコボルト達が一斉に土下座して来た。

 なんだ、これ。

 彼らを落ち着かせて話しを聞くと、先週荒れ地に積んでおいた堆肥が突然現れた大きな虫に荒らされてしまったらしい。

 堆肥はそろそろ切り返しをしなければと言う所だった。

 堆肥は何回か混ぜないと良い堆肥にならないので少し熟成させる予定だったのだ。

 とりあえず現場をみるか。

 荒れ地に入ってみると土の感触が違う。あんなに堅かった所が柔らかな地味の良い土になっている。

 少し離れた別の堆肥を置いているところにそいつは居た。ミミズじゃないか。

 ミミズは土を肥えさせる優等生だ。ミミズの糞は高級肥料として売られている位だ。

 しかもあの荒れ地がいつで耕やす必要も無い位の良い畑になっている。これは使える。

 ワームちゃん達をうまく使えば畑起こし不要だ、

 休耕地を造ってそこに堆肥をいれてから使えるようになるまで寝かせる必要も無い。

 まあ、下肥の確保もあるから限度があるだけろうが、畑起こしと言う大変な作業から解放されるのは大きい。機械なんて持って来てもコボルト達には使えないしな。

 衛生環境も整えるようにしたし、少しずつ増える人口に合わせて畑を増やそう。

 ワームちゃん達は私を見るとすり寄ってきた。

 大蛇位の大きさに見えるワームが寄って来るのをみても何故か怖いとか余り気持ち悪いとか感じない。テイムした仲間達に感じる繋がりに似た物を感じる。

 しかもシッポを、いやミミズだからお尻かな。そこを振りながら近づいて来る。

 犬かいっ。思わず突っ込んだら地面に転がりながら後部を振ると言う器用なことをやってくる。お前らミミズとしてのアイデンティティーとしてどうなんだ。

『な、なにか可愛いですね』桜川さんも同じ仲間と感じてしまうせいか気味悪がらない。

 もしかしたらうちの畑に居たミミズの一部がここに入ってワームちゃん達になったのかも知れない。テイムしてはいないが仲間扱いにでもなっているのかお告げが少し通る。


 ワームちゃん達には定期的に堆肥を作るからそれで畑を肥やして欲しいと交渉した。

 ワームちゃん達はこちらに来て少し進化したのか、あんな硬い大地も耕してくれるようだ。

 作物を植えてる所は準備中で荒らさないようにして貰った。

 後は巫女見習い達に任せても大丈夫だろう。彼女たちもお告げを持っているから何となく通じるようだ。

 ちなみにワームちゃん達は私が犬かよっ、て思ったせいか畑に寄ってくる害獣を巻き付いて地中に落とし混んでしまうという番犬ならぬ番みみずとしても活躍したので畑の守り神として愛されるようになるのだった。

 私はトイレの神様のままなのに。


 それはさておき、私たちはミミちゃんに案内して貰って第三層に向かうのだった。

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