第10話

 なにをしたあ、とナオを見ると少し横を向いてヒューヒュー口を尖らせて息を吹いている。お前、口笛なんて吹けないだろうが。

 猫又に進化してから段々と人の真似をするようになった。と言うか人臭い。

「なおーーっ」ナオが啼くとコボルト達は立ち上がって整列して元の方向へ帰る。

ナオはその後に付いて行くので私たちもそちらに向かった。

やがて草や木を組み合わせた家のような物がある村落らしきものが見えてきた。

そして村落の中央には祭壇があってそこには幼女っぽいコボルトが。生け贄かいっ。

あ、桜川さん、そんなジト眼やめて。誤解で無実で私の指示とか妄想とか無いから。

でも、垂れ耳で可愛いくて癒やされそうな子だ。

『救い主様。私はあなた様のシモベです』

 声が頭の中に響いて来る。おおっ。

 話しを聞いて見ると彼女はコボルト達の巫女のような存在らしい。

 そしてこの村を蹂躙していた猪のモンスターをナオが倒したことでテイムマスターの私はナオを使徒として遣わせた救い主扱いらしい。

『私はあなた様のいかようにもお使い下さい』

だから桜川さん、そんな眼でこっちを見ないで。何もしないからっ。


ピコン。またステータスボードが開く。


コボルトが仲間になりました。名前をつけて下さい。

 *** コボルト lv5 見習い巫女

   お告げ


 名前ねぇ、垂れ耳がヘアデザインのようにも見えてとても似合っている。

 お告げをスキルで持ってるから、それで私達に話しかけれたのかな。


ミミちゃん コボルト lv5 シャーマンコボルト

   巫術 心話

ミミちゃんがネームドモンスターに存在進化しました。


 だから桜川さん、そんな眼で見ないで。名前つけるの苦手なんだから。

 それから私たちはミミちゃんに村を案内して貰った。

 村はザ・石器時代って感じ。コボルト達の持ってた武器も石斧や石を尖らせた刃をつけた槍っぽい物だ。でも小さな地味の薄そうな余り生育の良くない作物の生えてる畑もあった。

 畑の作物と狩猟採取でなんとか暮らしているらしい。

 コボルト達はみんな痩せている。コボルトの女の子達はみんな幼女に見えるけど、これが普通らしい。

 ね、桜川さん。私が無実で幼女趣味で生け贄にさせたとかじゃないのを判ってもらえますよね。

 しかし、この畑はいかん!農家見習い的な私にでも判る。

 そこで技術指導をすることにした。

 輪作。堆肥の作り方とその投入。畝の土盛りひとつでも生育は変わる。

 鉄の農機具とか持って来たいけど、私の手から離したらマールのスキルが切れるので大きくなって使えない。それにあまり変革しても人口増加とかで環境が急に変わるのも問題だ。

 できたら自分たちの技術で出来る農耕が望ましいが、農機具が木や石材では効率が悪すぎる。何か考えなくては。

 雑草や害虫はマールが近くのスライム達に声をかけて対応して貰えるらしい。

 後は衛生処理とかだ。トイレはそこらの草むらで済ませてるみたいで自然が豊かな分、中世ヨーロッパのトイレよりマシだが、ここは大江戸方式に共同にしてそれに雑草や残飯などを投入して堆肥化する。

 中性ヨーロッパの女性のドレスが丸く広がってるのもハイヒールが流行ったのも道路の汚物対策だったという。二階建ての家でオマルで取った汚物を二階の窓から声をかけて投げ捨ててたとかコレラが流行ったのも頷ける。

 その頃の大江戸は汚物は近隣の農家が下肥として買い取りに来てたので長屋の共同トイレは大家の収入になったとか、大店とか裕福な屋敷のトイレは良い物を食べてるからより高く買っていったとかサステナブルな循環型社会を築いていたらしい。

 勿論、その頃のようにそのまま使ったら寄生虫や病気も循環させる事にもなるので、雑草などを積んだ所で混ぜたりすると、その発酵熱でこの手のものは少なく出来る。

 臭くて大変な仕事だ。鼻の良いコボルト達には特にきつい事だが、聖職だからと押し通した。トイレには神様がいるんだと。

 一番汚くなるトイレを綺麗に使うだけでも病気は少なくなるものだ。

 トイレの堆肥化する作業は臭くて大変だからその作業員には高い地位を与えるなどかなり意識改革も行った。

 この事で数年後には病気の発生が減少し私がトイレの神様として崇められ、スライムがその聖獣としてコボルト達に扱われる事になるのだった。

 え、桜川さんかい。彼女はコボルトの子供達がお気に入りになって私がナオを連れて農業指導してる間に保育園を造ったり、年長組に簡単な勉強や文字を教えるようにしたり、妊娠や出産の指導をして子供の神様として聖母として奉られるようになるんだよ。

 私の方がテイムしててマスターなのに。

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