第7話閑話

「こんにちは桜川様」

「こんにちは」私はいつものように学友達に挨拶をかえす。

 数少ない男子生徒達は顔をうつむかせて赤くなりながら隅にかたまっている。

 ここは3年前までは周辺でも有名なお嬢様学校で近年の少子化で男女共学になった学校のせいか、女生徒の間では以前の風習が未だに残っている。

 そして男子生徒はそれになじめず、それでも憧れのようなものをもって私たちを見つめている。

 私は女生徒達のこんな雰囲気も嫌いではないけれど、それだけでは満足できない想いを持ち続けていた。

 まあそうよね。こんなお嬢様学校で冒険をしたい、なんて思うのがおかしいれかも知れない。だからそんな想いを学友達と共有できないでいる事でその想いがより一層強まったのかもしれない。

 男女共学になった事で、男の子達にそれを期待したけれどこんな有様ではね。

 そんな時に姉の愚痴を聞いた。「私たちの町にもやっとダンジョンが出来たのに入れそうも無いハズレダンジョンだったなんて」

 それを聞いて私は自分の眼でもそれを確かめたくなって学校が終わってまっすぐその家へ向かった。

 なにしろこの町の近辺にはダンジョンが少なかった。

 やっと土日や休日を利用して探検に行ってもそういう時は他の人も多くてまともに魔物に会うことすら難しい。結局、時間と資金の赤字になってしまっている。

 それでも何故かダンジョンに惹かれてしまうのはやめられない。

 そして彼に出逢った。


「それで瑞穂、朝倉さんと一緒にダンジョンに行く事にしたちの?

大丈夫?男の人と二人なんて。

私も窓口に来た朝倉さんを見たから、悪い人では無いと思うけれど男の人は狼になってしまうものよ」

「うーん。朝倉さんは私をテイムしちゃったから責任感で言ってくれたんだとは思うけれど、お母さんの前で『私の夢を応援したい』って言ってくれた時ちゃんと私の事を見てくれてるって気がしたの。

 そして、ふとお母さんが言ってた私たちのお父さんの事を思い出したの。『パパはたよりないとこもいっぱい有ったけど、私の事をしっかり見ててくれた』って」

「あー。そう言えばお父さんは瑞穂が生まれるちょっと前に死んでしまったものね。

 確かに窓口で見た朝倉さんは頼りなさそうだったけど、ちゃんと慌ててた私を落ち着かせて手続きをしっかりしてくれたわ。

 そうかぁ。朝倉さんにお父さんを感じてしまったのかぁ。そう言われればそんなお父さんの雰囲気に似ていたわ」

「私もあんなに焦りながら瑞穂について一生懸命になって考えてくれてる朝倉さんを見たらパパを思い出してしまったわ」

 気が付いたらママが私たちの部屋に入って死んだお父さんを想い出すように熱のこもった遠い視線を空に向けながら話しかけて来た。

「でも、瑞穂。ちゃんとお付き合いは学生としての範疇に納めるのよ。

 それ以上のお付き合いは卒業してからにするのよ」

 いやだ、ママ。私はそんな気持じゃなくて、純粋にダンジョンを探検したいだけで………。

「そうかぁ。瑞穂に先を越されちゃうなんてねぇ。

 町の役場なんて若い元気な男の人なんていないから私なんてボーイフレンドもつくれないでいるのに」

 だから、そんなんじゃないって。

 焦りまくる私を二人は面白がっているだけに違いない。

 でも、朝倉さんの事を考えると、彼は私の事をどう思ってくれているんんだろうと考えると胸の奥に暖かいものが宿るのを感じた。

 これってテイムされたからかしら。それとも。

 一人になって瑞穂はベッドの中で考え続けていた。

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