僕が電話をかけている場所
「僕が電話をかけている場所」と聞いてどれだけの人間が響くのかわからない。この小説の作者はレイモンド・カーヴァーだ。聞いたこともある人もいるのかもしれない。1980年代、アメリカ文学を席巻し、ミニマリズム文学を流行らした人だ。彼の
の全集を翻訳したのは。村上春樹だ。村上春樹の小説は一つも好きではないが。彼の翻訳の偉業は本当に素晴らしい。彼は基本的には自分の好きな作家しか翻訳しない。スコット・フィッツジェラルド、トルーマンカポーティ、レイモンドカーヴァー、ティムオブライエンなど、彼が翻訳したものは全て絶品で、小説の素晴らしさと恐ろしさを教えてくれる。自分も英語が多少読み書きできるので、原書を読みながら、簡潔な英語の文体からあれだけの、例えば、抒情をつむぎ出すのは相当な手腕だなと思う。ま、そのことは後々で。レイモンド・カーヴァーはもちろんもう死んでいる。50くらいだったかな、死んだのは。かなりのアル中で、作品のほとんどが酒にまつわる話しで、酒による家庭内、親子関係の不和などが描かれている。アル中といえば深刻キマワリないが、そこを淡々したユーモラスに描いている。なのでなおさら、依存中毒者の恐ろしさが垣間見える。私はレイモンド・カーヴァーの全集を全て読んだが特に「僕が電話をかけている場所」は凄まじい。AAAの若い男の子のエピソードが絶品で読んでいて恐ろしくなる。とにかく目線が彼なのだ。彼の話を聞いた作者からではなく、彼本人の言葉なのだ。それが恐ろしい。優しい口調で彼は語る。自分がアル中になった事を。レイモンド・カーヴァーはそれを冷徹に見つめ書く。そんな事ができるのか?実際、作品としてできているのが素晴らしい。が、読んだ読者は本当に極北に連れて行かれる。どうすればいい?アメリカ文学の最大な位置付けというか存在意義はいつもそうだ。読後感に感じる、どうすればいいのか?という胸ぐらをワサワサさせる気味の悪さ。何かだ。
自分が小学生くらいの時にこんな小説があったのは驚きというよりはアメリカ文化の得体の知れない怪物さか。
では股。
あまり期待するな 鏖(みなごろし) @minagorohsi
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