第3話
夏休み前の最終日はほとんどが全校生徒を体育館に集めて行われる朝礼とクラスに戻ってからの説明や注意喚起、そして掃除で終わった。
さて帰るかと思った矢先、スマホに連絡が入る。見てみると母親からだった。
今日は遅くなるからスーパーでお総菜買っといて、だそうだ。うちは共働きな上にメーカー勤務の父親は単身赴任で東京にいて、母親は夜勤もある看護婦だった。
年の離れた妹はまだ七歳なので、両親が不在の場合俺が面倒を見ることが多い。
さすがに小二ともなればある程度しっかりはしてきたが、軽いぜんそく持ちなこともあり、なるべく誰かが近くにいた方無難だった。
「どうした?」と河野が聞いてきた。
「晩飯買わないといけなくなった。この分だと昼飯もあるかどうか怪しいな」
「じゃあ食べに行こうか。俺も予備校行く前に食べるし」
「駅前ってスーパーあったっけ?」
「隣のビルの一階にあるよ。小さいけどな」
「ならそこでいいか。昼飯は? 牛丼でも食いに行く?」
「お前は馬鹿か? なんのために三上が掛け持ちしてまでハンバーガー屋のバイトしていると思う? 社員割引で安く買えるハンバーガーを俺達に横流しするために決まってるだろ」
「決まってるのか……」
「しかもその日の気分でモスでもマクドでも選べる。ちなみにモスは半額、マクドは三割引だ」
なんで働いてもいないお前がそんなに詳しいんだよ。この分だと随分お世話になってるな。
「……まあ安くなるならなんでもいいか」
「ああ。最近なんでも高くなって大変だからな。小遣いは有効利用しないと。三上」
河野は三上を呼んだ。帰ろうとしている三上は足を止め、「なに?」と聞いた。
「俺と碓永の昼飯を頼めるか?」
「いいよ。追加で一人五十円ね」
こいつはこいつで商売してるし。詳しくは知らないがバレたらクビだろうな。
「……お前らって、意外と悪いよな」
「それが生きるってことだ。誰もが綺麗に立ち回るだけで生きていけるわけじゃないんだよ」
河野はけろっとそう答えた。まだ悪に染まってない俺は眉をひそめる。
「そういうもんか?」
「まあ、お前もいずれ分かるだろう。行くぞ。腹ごしらえだ」
河野と三上共に歩き出す。俺は小さく嘆息しつつも結局二人について行った。
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