10.買い物をしよう


ステンマルクの門をくぐると、少し行ったところに冒険者ギルドがある。


「とりあえずギルドで座ろう。」

俺はそう言って。ハンナとギルドに戻る。


ギルドの酒場で、飲み物だけ頼んで、朝のパンの残りを二人で食べる。

基本的に持ち込みは禁止だが、ここで買ったものだし、席も空いているからいいだろう。


ギンガにもパンを一切れやる。


「午後はどうしますか?」ハンナが聞く。


「買い物だな。とりあえずロープが欲しい。あとギンガ用のハーネスもな。」


「リンさんに聞いてみましょう。」


俺たちはギルド職員の少女、リンのところに行った。

リンは胸は発展途上だがそれなりにかわいらしい14歳受付だ。


「リン、ロープと、それからギンガにつけるハーネスを売っている店はないか?」


「ロープはいろんな使い道があるから、冒険者グッズの店ならどこでも売ってるわ。値段は太さと長さ次第ね。


ハーネスって、引っ張ったりするのに従魔に着ける胴輪ね。それなら、まあ中古でいいわね。


従魔用品店の格安コーナーを探してみるといいわね。



銀の月亭」の二軒隣に従魔用品店が、あるわよ。


たぶんロープも売ってるわね。ハーネスにつけるフックとかもあるから、そのほうがいいかも。何が要るかは店で聞いたほうがいいよ。」


なかなかありがたい情報だ。


俺はリンに礼を言い、二人と一匹で従魔ショップへ向かう。




従魔ショップといっても、従魔を売っているわけではなく、従魔のグッズを売っているだけだ。


「いらっしゃい。」若い女の子の店員が迎えてくれた。



リンくらいの年かな。赤毛で短髪で、ズボン姿なのは動物と触れ合うことが多いからなのだろう。


「あら、可愛い狼ね。名前は何?私はランよ。」


「俺はアレン。こいつはギンガ。それからこっちがハンナだ。」



「ギンガくんね。よろしく」


「ウォン!」

俺たちはどうでもいいのかよ。 この赤毛の姉ちゃん、ちょっと失礼だな。


金を払うのは俺だぞ。



「あら、ごめんなさい。アランでしたっけ?何をお探しですか?」


「アレンだ。ギンガにハーネスをつけたい。引っ張ってもらうんんだ。」


「新品だと高いしね。この子、きっと大きくなるからすぐ買い替えね。だとすると…」ランはバックヤードに入り、少ししてからちょっと古ぼけたハーネスを持ってきた。


「これで合うかしら。つけてみるね。ギンガちゃん、いい?」


「ウォン!」ギンガは直立不動になった。



ランがハーネスを調整する。

「こんなものね。 アレン、他に何か買う?」


「ロープが欲しい。こいつに引っ張らせるんだ。」

ヒモの端につけるフックも欲しいな。」


「10メートルで銀貨5枚ね。あと、ヒモの端に付けるフックを2個で銀貨1枚。 合計銀貨6枚ね。 ハーネスは無料で貸してあげるわ。」


おお!それはありがたい。


「ギンガくんが大きくなって、サイズが合わなくなったら返してね。」


「ありがとう恩に着るよ。じゃあ、銀貨6枚。」



俺はロープと金具を受け取る。フックも二つ買うが、まずは一つつけてみる。


「この辺に、木の関係のゴミ捨て場はあるかい?壊れた馬車とか、たらいとか捨ててあるとこ。」

ランはいぶかみながらも場所を教えてくれた・


街の北西と北東の塀の近くには大きなゴミ捨て場があるようた。壊れた馬車とかなら、西側の職人街に近いほうがいいだろうということだ。


俺たちは礼を言い、北西のごみ捨て場まで歩く。


「ハンナ、つまらなければ帰ってもいいぞ。」

俺が言うと、


「いえ、アレンさんについて生きます。」という。


またアレン「さん」になってるし、字も何か変な気がする。

まあ、今はいいか。


それっぽい方向に歩いていくと、目的地についた。

生ごみとかは別の場所なので、臭くはない。


いろいろな物が捨ててある。これはもしかしたら通うことになるかもな。


ガラクタ漁りをしている連中がけっこういる。


子供も多い。


「さすが王都だな。ゴミにしても使えそうなものが結構ある。」

俺tが言うと、


「孤児院の子供たちが喜びそう。」ハンナも言う。


俺はハンナに言う。「手を切らないように気を付けて、めぼしいものをさがしてみてくれ。

ギンガも、ケガしないようにな。」



「はい。」「ウォン!」


俺は、荷車の残骸のようなものを見つけた。

、t

車輪はなく、底板もいくつか抜けているが、1メ―トル四方くらいで、枠もついている。


おお、これだ! 俺はそれを引っ張り出すとギンガを呼び、番をしてもらう。


あと、1メートル半くらいの細い板を3枚も調達してそれで俺の目的は達成だ。



あとはこれを直すためにはトンカチと釘がいるな。


金槌はギルドで借りられそうな気はする。

あとは釘か。


まあ、道具屋で買えるだろう。


「こんなものがありました。」



ハンナが持ってくる。

見ると、ちゃんとした木箱だ。


開けてみると、トンカチやバールのようなもの、それから釘とかが入っている。


古いけど、特に問題はなさそうだ。



「間違って捨てちゃったんですかね。」ハンナが言う。


「ああ、そうだな。有効活用しような。」俺は答える。


俺たちは、ゆっくりとギルドに戻る。

荷台は一人で運ぶと大変だったので、時々ハンナと二人で持った。


ギンガは、「僕の役目は?」とちょっと不満そうだ。


「これは、お前のための物だから、心配するな!」俺はギンガに言い、ご機嫌をとる。



なんとかギルドに戻り、裏側へ回る。

ギルドの裏側は庭になっていて、金のない冒険者がそこで寝たり、作業をしたりしている。

朝の洗顔用の井戸もここだ。



俺たちは拾ってきたものを庭に並べる。


「ハンナ、あとはいい。お前は、薬草の見分けのつけ方をリンに聞いて、できれば実物を買っておけ。」


「え、もったいないよ。絵を見ればいいし、実物借りたら覚えるよ。」


「そうじゃない。長い時間観察するには、それが必要だ。」

俺がそういうと、ハンナは「あっ」といい、鞄から昨日納品できなかった草の束を取り出した。


「リンさんに、この中に薬草があるか聞いてきます。」


「ああ、そうしてくれ。ただ、高い薬草も見分けないといけないからな。安い薬草をちゃんと覚えたら高い薬草も買え。金は俺のギルドに預けた金で買える分までな。」


「…とりあえずリンさんに相談してきます。」

ハンナは走っていく。



俺が荷台を修理する作業をしていると、ハンナが戻ってきた。


「私が持っていたものの中に、普通の薬草がありました。あと、明日の夜まで中薬草、上級薬草を貸してくれるそうなので、借りてきました。」


「そうか。じゃあ、それぞれの薬草をずっと見続けて、色、形とか全部完全に把握しろ。

花の形、花びらの形、枚数、葉っぱの付き方、形などすべてだ。


ちょっと見ただけで、どれだか絶対にわかるようにしろ。

だいたい、薬草というのは草取りスキル保持者であるお前の飯のタネだ。この辺を覚えなければ、いつかお前は行き倒れて死ぬぞ。」


「…」

ハンナは神妙な顔をして聞いてくる。


「あの、いつまでに覚えればいいですか?」


「今夜中だ。


明日の朝覚えてなければ、覚えるまでギルドの部屋で見続けろ。」


「そうしたら外へは?」

「連れて行かない。 アダムさんにも謝って、さっきの金も返す。」


「絶対に覚えます。」


ハンナはそう言って、部屋に戻っていった。・

これだけ言えば、彼女としても真剣にやるだろう。


俺は大工仕事を続ける。

荷台の底を直し、、その下に二本の板を平行に取り付ける。


下の板の先を少し削って浮かせる


何を作っているかって?ま、あ犬ぞりのようなものだ。

スキーの板よろしく、二本の板を取り付ける。


そして強めのぬるぬる魔法を板にかける。


ぬるぬるがうまく馴染んだころ、俺は横でおとなしく待っていたギンガのハーネスの後部二か所に、それぞれロープの先端をくくりつける。それをまた長いロープに引っかけっる。


(ロープを繋いだりするフックやリングなどはもっと沢山いりそうだな。


そのロープを持って荷台に乗り、「よーし、ギンガ、ゆっくり動いてみろ。」という。

ギンガは力を入れてそりを引くと、そりが動き出す。


一度動いたらそのあとはスムーズだ。よし、問題ない。

ただ、荷台にも二か所くらいロープを留めたほうがよさそうだ。


「よしギンガ、完成だ。明日はこれを使うぞ!」

ギンガは「ウォン」と嬉しそうに鳴いた。



























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