35話

◆破壊の主の襲来

 12月も半ばとなった。勇と愛は、戦闘への警戒を常に心に留めながらも、表向きは普通の生活を続けていた。繭は日替わりで勇と愛の所に行ったり来たりして、時を過ごしていた。


 そんなある休日。いつものように、セイブ・ストーンが反応。プラネットクラッシャーの活動を知らせた。勇は、繭と共に自転車に乗り込み、愛を探しながらセイブ・ストーンの導きに従った。


「愛ちゃん!」


 セイブ・ストーンを追いかけ走る愛の姿を見た勇は叫んだ。


「勇くん!」

「乗って!!」

「うん!!」


 そして、自転車にて2人のセイブ・ストーンを追いかけプラネットクラッシャーの居場所へと向かう。たどり着いたのは、海辺だった。冬の海風は勇と愛に寒さをもたらした。しかし、気合いを入れ、変身をした。繭の赤子もそれに続いた。


「解き放て!守りの力!!」

「ときはにゃて!まみょりにょちきゃら!!」

「三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!」

「輝く花は広がる微笑み!アースセイバーフラワー!!」

「ねむゆたにぇは、むげんにょみやい!あーしゅせいばぁしぃじょ!!」

「レッツ!セイブ!!」

「れっちゅ!しぇいぶ!!」


 対峙するプラネットクラッシャーは、3人だった。バイオレット、オレンジ、ブルー。そして、そこには、芯、累、勝の姿も。トリプルは言った。


「全員いるね!うまく戦おう!!」

「そうだね!トリプル!!」


 その2人のやり取りが終わった後、シードが言った。


「といぷゆ!ふやわー!こわいこわい!くりゅ!!」


 トリプルとフラワーは、同時に「えっ」と言った。トリプルは、警戒をしつつ言葉を続ける。


「今度は何が来るんだろう?でも、今は戦うしかないっ!」


 トリプルは、プラネットクラッシャーの元へと向かって行った。それを追いかけるようにフラワーもプラネットクラッシャーに立ち向かう。


 そんな光景を見る人影が。恭だ。


「勇兄ちゃん!愛姉ちゃん!頑張って!!」


 そんな恭が遠目で見る戦闘は開始される。ブルーは、「ミッドナイト・ティアーズ」を仕掛けるが、トリプルは盾を巧みに使い、視力を奪われないようにした。


「私の技が!避けられた!!」


 ブルーの悔しそうな声が寒々とした砂浜に響く。バイオレットとオレンジは、どちらも舌打ちをしつつ、「カラミティ!」と声を揃えた。トリプルは言う。


「やっぱり、そう来るよね!」


 カラミティは、トリプルとフラワーの元へと突進してくる。トリプルは、カラミティへ水の洗い流しと炎の焼き尽くしを仕掛け、フラワーは、その拳を叩きつける。そして、カラミティは全滅した。フラワーは言った。


「バイオレットとオレンジ、ブルーの所に行こう!」

「うん!」


 そうトリプルが言った瞬間だった。元々曇り空だった上空に、突如真っ黒な雲が現れる。そこから闇の柱が地上に向かって降りてきた。プラネットクラッシャーたちは一様に固い表情になる。一方、アースセイバーたちは、重苦しい波動を感じた。トリプルは震える声で言った。


「シードの言った、『こわいこわい』ってこれっ?」


 フラワーは、頷くのが精一杯だった。シードは、繭の中に避難した。


 闇の柱に沿って若い男が降りてくる。男は、縮れた長い髪を持ち、頭には太く鋭い2本の角。また、コウモリのような禍々しい翼を持っていた。


 その男の元に、バイオレット、オレンジ、ブルー、勝は急行し、跪く。そして、4人は、声を揃えた。


「ジャイアント・キング・デストロイ様」


 それが聞こえたトリプルは驚愕の声を上げた。


「あ、あれが、ジャイアント・キング・デストロイっ?」

「こ、こわい」


 フラワーは震えた。


 デストロイは言った。


「いつまで待たせんだ!地球の破壊完了報告をよぉ!!」


◆破壊の主の暴挙

 デストロイの怒鳴り声が一帯に響く。プラネットクラッシャーの青い顔が並ぶ。デストロイは、バイオレットとオレンジの胸ぐらを掴み、強制的に立たせた。そして、言う。


「バイオレット!オレンジ!仕置きだ!!」


 そして、デストロイは勝のよりも濃い紫のオーラをまとった拳でバイオレットとオレンジを殴打しはじめる。2人の危機に、芯と累が駆けつけようとする。しかし、トリプルとフラワーはデストロイの力を正確に測った。普通の地球人が近づく事は、死を呼び込むかもしれないと。


「芯さん!!」

「お姉ちゃん!!」


 トリプルは、芯を、フラワーは、累を抑える。


「彩さんの所へ、行かせて!」

「駄目だよ!芯さんが死んじゃうよ!!」

「離してよ!愛!!」

「あの人、危ないよ!お姉ちゃん!!」


 そんな中、累が庇いたかったバイオレットの所には勝が、芯が庇いたかったオレンジの元にはブルーが庇いに行く。デストロイは怒りを露わにし、こう言い放つ。


「身内を補佐出来なかったお前らも同罪だ!俺の勅命遂行しなかったジジイ!!勝手に地球に行きやがったアマぁ!!」


 デストロイは、バイオレットとオレンジを力で出来た紫のロープで拘束しつつ、今度は勝とブルーに殴る蹴るの暴行を加える。そうしながら、デストロイは怒鳴る。


「まだまだ、ぶっ壊す星がゴマンとあるっつーのに、もたもたしてんじゃねえよ!それとも何か?この地球が気に入ったのか?」


 それに答えられる者はいなかった。デストロイは、苛立ちをその声に乗せる。


「壊せ!壊せ!壊せ!!」


 遂に、勝とブルーは、力無く倒れた。バイオレットとオレンジの身内を呼ぶ声が轟く。そんな中、デストロイは、再びバイオレットとオレンジに暴行を加え始める。


「壊せ!壊せ!壊せ!!」


 そして、デストロイはオレンジの腹部に、強烈な蹴りを入れ、バイオレットの頭を掴み地面に叩きつけた。


 トリプルとフラワーは、悲鳴を上げる芯と累を抱えていたが、デストロイが引き起こした惨状に、いても立ってもいられなくなった。


◆破壊の主に立ちはだかる守護者

 トリプルは言った。


「芯さん、ここから絶対に動かないでね!」


 続いて、フラワーも言った。


「お姉ちゃん、こっち来ちゃ駄目だからね!」


 そして、トリプルは、フラワーは、プラネットクラッシャーの元に行った。トリプルは叫んだ。


「やぁめぇろぉ!!」


 フラワーは唱えた。


「セイブ・フラワー・ストーム・ヒーリング!」


 しかし、フラワーの花びらは、プラネットクラッシャーたちの傷を治す事は出来なかった。


「えっ」

「地球人にしか効かないっ?」


 トリプルは、叫んだ。


「フラワー!来たばっかりだけど、芯さんと累さんの所に戻って!!」

「えっ!1人で戦うの?」

「フラワーも、きっと危ない!」


 フラワーは、忸怩たる思いを抱きつつ、即時撤退をし、芯と累を守る事に専念した。


 一方、トリプルは覚悟した。そして、心の中で言った。「場合によっては、オーバーフローをやらなきゃいけないかも」と。そして、口を開いた。


「本当は守る人たちじゃないけど!傷つく人を見ると、放っておけない!ジャイアント・キング・デストロイ!もう止めてあげて!!」


 デストロイは、トリプルを睨む。そして、悪しき波動を浴びせかける。


「ぐああっ!!」


 トリプルは、今まで感じた事のない苦しみに悲鳴を上げた。


「お前、地球の守護者だな?まったく、俺の駒の邪魔しやがって!」

「当たり前でしょ?僕らの星を守りたいって思うのは!そして、今は、特別にプラネットクラッシャーも守る!!」

「わけわかんねぇ事言ってんじゃねぇ!俺が直々に、守護者をぶっ壊す!!」


 デストロイは、再び悪しき波動をトリプルに浴びせかける。それを受け、トリプルは言った。


「セイブ・ウイング・ミラー・シールド!!」


 トリプルの翼は、デストロイにその波動を寸分違わず返した。


「な、なんだとぉ?」


 しかし、さすがにデストロイは倒れない。トリプルは連続で必殺技を繰り出す事にした。心の中で「涼!晴!力を貸して!!」と言いながら。


「セイブ・ウォーター・ソード・レイン!」


 水をまとった剣がデストロイを刺す。


「セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」


 十字の炎がデストロイを爆破する。


「セイブ・ウォーター・クロス・スプラッシュ!」


 十字の水がデストロイの元で弾ける。

 

「セイブ・ファイア・ソード・レイズ!」


 炎をまとった剣がデストロイを刺す。


「くそおおっ!!」


 デストロイは、トリプルの攻撃から逃走を図り始める。上空に向かうデストロイにトリプルはたたみかける。


「セイブ・ウイング・チェイス・ニードル!!」


 羽根の針がデストロイを追いかける。そして、攻撃をする。デストロイは言った。


「なるほどな!お前らは苦戦してたのか!理解した!」


 再び、闇の柱が出現。


「まぁ、時間かかってもいい!守護者を潰し、地球を壊せよ!!」


 デストロイの姿が消えそうになる。トリプルは、上空に飛び、追いかけるが、間に合わなかった。デストロイは、逃げおおせた。


「逃がしたっ!」


 トリプルの悔しい声が空に響いた。

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