路上占い、あれこれ③【占い師は頼まれる】
崔 梨遙(再)
1話完結:2719文字
十年以上も前のこと。大阪のミナミの週末の夜。その日も僕は路上で占いをしていた。片方は美奈子、華奢。片方は福子、いい体格をしていた。自衛隊のスカウトが来そうだ。そういえば、僕も若い頃に何度か自衛隊に勧誘されたことがある。2人の顔に関しては・・・ご想像にお任せしたい。
「占ってもらえますか?」
アラサーかな? まあ、僕よりは明らかに年下だ。女性2人組が目の前の椅子に座った。
「何を占いますか?」
「恋愛と結婚!」
「私も!」
「恋愛と結婚は似て非なるものですから、恋愛と結婚、2つ占うことになりますよ」
「恋愛と結婚って、違うんですか?」
「違いますよ、恋愛に良い相手が結婚に良いとは限らないんです。恋愛に良い相手と結婚に良い相手は別です」
「じゃあ、恋愛と結婚でお願いします」
「はい・・・」
「出ました・・・」
と、占った結果を伝えていると、美奈子が口を挟んだ。
「崔さんが付き合ってくれたらいいんですよ!」
「いやいや、僕、今、彼女がいるから」
「じゃあ、合コンのセッティングしてくださいよ!」
「えー! 面倒臭いわ!!」
しかし、押しに弱い僕は合コンのセッティングをOKしてしまった。
最初に勤めていた会社の同僚(ちょっとイケメン)を1人呼べることになったが、もう1人がタイミングが悪くてつかまらなかった。
「合コン、1人しか来ないから延期する?」
美奈子に聞いたが、
「早く合コンしたいです! 1人でもいいです! でも合コンの前に打ち合わせしませんか?」
何の打ち合わせか? わからないまま美奈子と会った。“寿司が食いたい”と言うから、回らない寿司屋に連れていった。しかし美奈子は雑談ばかり。打ち合わせじゃないの? 僕は何が何だかわからなかった。
寿司屋を出て、美奈子を駅まで見送ろうとしたら、美奈子が何か言いたそうだった。
「何? 何か言いたいことがあったら言うてや」
「ホテルには行かへんの?」
「行かへんよ。僕、彼女がいるって言うたやろ?」
「ホテルに行くと思ってた。彼女がいるとしても」
「合コンを楽しみにしときや、ちょっとイケメンな人が来るから」
合コン。
女性陣は盛り上がっていたが、同僚は盛り上がっていなかった。同僚は美奈子と福子がお気に召さなかったらしい。
居酒屋を出て、女性陣が“カラオケ! カラオケ!”と言っていたが、同僚が道の端で吐き始めた。悪酔いしたらしい。僕は同僚の背をさすっていたが、女性陣は吐いている同僚の腕を引っ張って、“カラオケ行こう!”と騒いでいた。
“吐いてるのに心配しないのか?” 僕は引いた。
「同僚がこんな状態やから、今日はこれで解散や!」
しぶしぶ女性陣は帰って行った。すると同僚が復活した。
「あれ? 吐いてたのに元気になったやんか」
「俺、いつでも吐けるねん。さあ、嫌な女達はいなくなったから飲み直そうや」
僕は、同僚にも引いた。一晩に二回も引いてしまった。
余談だが、後日、美奈子には同僚とは別の知人を紹介した。会ったその日にホテルで盛りあがったと聞いた。それ以降のことは知らない。
そして、また週末の夜の路上占い。
OLであろう、アラサー2人組が目の前に座った。美人と不美人(あくまでも僕個人のジャッジです。
「何を占いましょう?」
「恋愛と結婚!」
「私も!」
「恋愛と結婚は似て非なるものですから、恋愛と結婚、2つ占うことになりますよ」
「恋愛と結婚って、違うんですか?」
「違いますよ、恋愛に良い相手が結婚に良いとは限らないんです。恋愛に良い相手と結婚に良い相手は別です」
「じゃあ、恋愛と結婚でお願いします」
「はい・・・」
「・・・出ました」
と、占った結果を伝えていると、美人(名前:あかり)の方が口を挟んだ。
「崔さんが合コンのセッティングをしてくれたらいいじゃないですか」
「えー! またこのパターン? 嫌や、面倒臭い!」
ところが、また押しに負けて合コンのセッティングをする約束をしてもらった。僕は最初の会社の時の超イケメン先輩を頼った。ところが、またタイミングが悪くてもう1人が決まらない。僕はあかりに言った。
「1人しかつかまらんかったわ。どうする? 延期する?」
「早くお会いしたいので、予定通りでお願いします!」
女性陣は盛りあがった。先輩が超イケメンだったからだ。そして、みんなで連絡先の交換。先輩が連絡したのは、あかりだった。
あかりから連絡があった。
「崔さん、私、土曜日に〇〇さん(先輩)とデートすることになりました。〇〇さん、マジで超イケメン、大企業に勤めているし・・・ありがとうございました!」
とうことで不美人(かげり)の方に連絡した。別の男性を紹介しようと思ったのだ。
すると・・・。
かげりは僕からの連絡を拒否していた。“マジ? なんて気が短いのだろう? せっかく別の男を紹介しようと思ったのに” かげりは多分、損をしたと思う。
そしてあかり、結局先輩とは付き合うというところまではいかなかったらしい。先輩から連絡があり、わかったことだった。
ということで、あかりに別の男を紹介しようと思い連絡した。が、あかりも僕からの連絡を拒否にしていた。なんとわかりやすい2人組なのだろう? でも、彼女達は損をしたと思う。
路上占いから、思わぬ進展もあった・・・というお話。
そして或る夜。
その日は、ほとんど客がいなかった。だからと言って焦っていたわけではない。占いで食べていたわけではなかったから。だが、気合いを入れて占いに出て来たのだ。或る程度は占わせていただかないと不完全燃焼になり、モヤモヤする。
僕は、自分から“占い、どうですか?” と声をかけることは無かったのだが、その夜は僕の方から声をかけた。
「お姉さん、占い、いかがですか?」
お姉さんは、
「私?」
と言って僕の目の前の椅子に座った。目の前の椅子に座られるまで気がつかなかったが、お姉さんはかなりの美人だった。夜のお仕事の雰囲気はするが、そんなことはどうでもいい。
「何を占いましょうか」
「そうねぇ・・・」
「スゴイ! めっちゃ当たってるわ。お兄さん、スゴイね」
「いえいえ、全然、すごくはないですよ」
「ねえ、占いじゃないけど、ちょっと私の相談に乗ってくれる?」
「構いませんよ、お話を聞くのも仕事の内です」
「私ね・・・」
「そうだったんですか、それはツラかったでしょうね」
「崔君って、優しいなぁ」
「そうでもないですよ」
「なあ、一緒に飲まへん?」
「いいですよ。オススメの店とか、ありますか?」
「私の家に、いいワインがあるの」
家に誘われた。お姉さんの名は凛子。その夜は何か起こりそうな予感がした。その時、僕に恋人はいなかったから。※④に続きます。
ちなみに、“誰に断って商売しとんねん?”と絡まれた時は、
「失礼しやした~!」
と、笑顔で撤収。撤収時間は30秒だった笑
路上占い、あれこれ③【占い師は頼まれる】 崔 梨遙(再) @sairiyousai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます