『私』『メダカ』『カイコ』
この三者が読み手にはどのように映るのか。
いじめという許されない行為に存在するのは様々な隠匿性。
どこからどこまでがいじめなのか。被害者でさえも気が付きづらい自分が置かれている状況への違和感。蝕まれていく自分という存在の認識。
読書という体験の中ではありますが、グジュグジュとした人間の恐さ、教室内の空気の薄さなどを感じました。
また、注目するべきはメダカとカイコの描写。
それぞれの質感を上手に捉えた生命の描写と主人公との対比が魅力的でした。
居場所のない閉塞的な空間の中で、自分の存在すらも揺らぎかねない危険な状況。
『私』をこの場に繋ぎ止める二つの生命は何を『私』に伝えようとしているのか。
等しく檻に閉じ込められた三者が抉り出すのは儚くとも強い生命の在り方。
いじめを受ける『私』の居場所は果たしてどこにあるのか。
丁寧に描かれた存在たちを是非、観測してみてください。
素晴らしい作品をありがとうございました。