9 金髪ロング斜め前髪お姉さん白ギャル欲求つよつよ美少女コスプレイヤー・写真部の先輩で牧場娘の姉とナイショの個人撮影で……



 塩茹でしたササミを食べたい。

 うっすら味がついてる程度の淡白なものでいい。


 翌る日の放課後になっても、僕の口は昨日の甘味テロ攻撃から復活しきれていなかった。


 糖分と脂質を中心に、カロリーの摂りすぎ。


 僕は毎日、お風呂上がりに体重計に乗ったりして色んな数値をパーソナルトレーナーに報告しなきゃいけないのだけど、昨夜はかなり厳しめに注意されてしまった。

 健康的なカラダ作りはバランスのいい食生活から。

 そんなこと、もちろん言われるまでもなかったのに、僕はダメなヤツだ。

 女の子に頼られると、ついカッコイイところを見せつけたくなってムチャをしてしまう。


 限られた青春のなかで一刻も早く理想の上位雄になるためにも、脂肪に付け入る隙を与えている暇はないというのに。


 なので、今日のお昼ご飯はミク姉に頼んで、筋肉大歓喜ダイエット弁当にしてもらった。

 鶏胸肉とブロッコリーのネギ塩焼きに、タコとブロッコリーのバジルソース和え、納豆巻きに茹で卵、ルイボスティーというラインナップ。某有名AV男優もオススメしている。

 カロリーは抑え目ながら、全体的にタンパク質を多めに、且つ、栄養もきちんと摂れる素晴らしいお弁当だ。味付けも文句のつけようがない。


 それでも、放課後になる頃には不思議なもので、若々しい肉体は小腹を満たせと訴え始める。

 僕の口は塩茹でしたササミを求めていた。


 喝!


 気合いを入れた。

 過食はリスキーである。

 胃が拡張される恐れもあるし、すでに充分な量の食事を摂っていても胃に空きがあるから、脳が不満足だと錯覚してしまう可能性がある。

 ストイックに生きろ、柊木柚子太郎。

 僕はハラペコキャラじゃない。

 何か別のことに集中していれば、お腹の虫も気にならなくなるはずだ。


 そんなワケで、今日は写真部にお邪魔しようと思う。


 九十九坂学園での放課後の過ごし方は、文芸部での活動を除けば時々で変わる。

 そして今日は、写真部の先輩に声をかけられていた。


「やっほー、ゆっきゅん。今日の放課後ってヒマ?」

「はい。ヒマです」

「マジィ? ヤッバっ、私ってば超ツイてるんですけど!」

「白牛先輩。えっと、ご用件は?」

「あね? ゆっきゅんに頼みがあるんだけどー、カメラマンやってくんない?」

「カメラマン?」

「そ! ウチの部活に限らずなんだけどさ? どこもカソカソじゃん? でも今日は特に人手が足りなくて、撮ってくれる係やってほしんだよね〜」

「あー、写真部の撮影係ってことですかね? 僕、カメラ詳しくないですけど、それでも大丈夫でしょうか?」

「ダイジョブダイジョブ! んじゃ、放課後になったらシクヨロでーす!」


 シクヨロって、平成でも死語じゃなかったっけ?

 もはや忘れたけど、このパラレルワールドでも流行が何度か繰り返されているんだろう。ギャル文字が一部若い女の子のあいだでコミュニケーションツール化しているくらいだ。

 授業の合間の休み時間、体育の後で更衣室から帰る途中。

 僕はひとりでトボトボ渡り廊下を歩いていたんだけど、そこにふらっと現れた三年の先輩から、写真部の撮影係を頼み込まれたのである。


 白牛みるふぃ。白牛みくるの姉。


 彼女の属性は、強めのブリーチがかかった金髪ロング。斜め前髪。まつ毛長めの猫っぽいツリ目。ふわふわいやらしい美白ボディ。妹に比べると少しだけ大人っぽいお姉さんフェイス。先輩。付け爪えぐめ。正統派着こなしだけどピチピチ制服白ギャル。エルフ好き。オンラインゲーマー。異世界系コスプレイヤー。元チアリーディング部。実家が牧場。今は写真部。裏垢持ちの噂。


 学年が違うので、スクールカースト的な立ち位置だとどのあたりに属しているのかまでは分からないけれど。

 妹である白牛さん──ややこしいので今後はみくるさんと呼称を改めよう──が、僕のクラスではトップ層に位置していることから、姉であるみるふぃ先輩も同様にスクールカーストでは上位にいるのではないかと推測できる。


 ただ、みるふぃ先輩に関してはちょっとした噂もあった。


 SNSで裏垢を営んでいて、実はひそかに百合ウリしているんじゃないかとか……

 まだ学生なのにコスメやファッションにブランドモノが多いのも、オンラインゲームを通じて見知らぬ他人とオフでエンコーしてるからじゃないかとか……

 ひょっとすると、もっとヤバいこともやってるんじゃないの? とか。

 中には過去に淫魔絡みで発禁された裏モノAVを所持していて、それのバイヤーをやってるなんて噂まである。


 おっぱいが大きくなりすぎる前は大人気のチアリーダーだったみたいなので、人気者ゆえに嫉妬を集めて、影で心ない悪口を叩かれているだけならいいのだけれども。

 みくるさんと違って、みるふぃ先輩はなんというか〝やっててもおかしくない〟雰囲気──いや、色気の凄味が凄まじいので真偽は分からない。

 少なくとも僕に関しては、大人っぽくてエッチな感じで、遊び慣れてそうな表情や声音がとかく目に毒すぎなので、いつも正常な判断力を狂わされてしまう。

 でも、それはきっと、同性である女性たちにも共通の話なのかもしれないね……

 白牛みるふぃの魅力は、そんじょそこらのモデルや女優に劣らないものがあるのだから。




 写真部の部室は、予想よりも本格的だった。


「グリーンバック? すごいですね……」

「ああこれ? まーねー? 私、パソコンとか強い系だから」

「先輩がご自分で合成とかされるんですか?」

「そだよ? プリクラの派生だと思ってやってたら、なんかいつの間にか余裕だった的な?」

「設備もすごいですね。レフ版もあるし、本当にどこかのスタジオみたいだ……」


 照明も専用のものが置かれていて、てっきり教室の中心にデジカメが置かれている程度だと予想していた僕は、キョロキョロと部室内を見回してしまう。文芸部とは驚くほどの違いだ。


「先輩が急に、プロに見えてきましたよ」

「プロ? まーいつかはそっちの道もアリかもねー」

「先輩はやっぱり、モデルのほうが?」

「うん。撮るよりぃ、撮られる方が好きぃ」

「先輩、すごく綺麗で可愛いですもんね」

「あっは! 出たね、ゆっきゅん! ちょっと〜、照れるからやめろし〜?」


 ぐいぐい♡

 みるふぃ先輩はヒジでこちらの脇腹を小突くと、全然余裕そうな表情で朗らかに笑った。

 照れるという言葉を使っておきながら、このくらいの褒め言葉は慣れていると言わんばかりだ。

 僕はヒジで小突かれながら、先輩のおっぱいがふにっ♡ ふにっ♡ と揺れるのを見て、思わず赤面しかねんばかりだったというのに。

 こういう女性の顔を、本当は今すぐにでもドロドロに蕩けたメスの顔に変えてやりたいと、深く強く鬱屈した想いを抱えているのに……


「それじゃ、私は衣装に着替えるから」

「あ、はい」

「そこのカーテン、開けちゃダメだゾ♡」

「わ、分かってますよ……」

「にしし」


 写真部の部室には簡易更衣室まであった。

 天井からカーテンを吊り下げているだけの代物なので、このあたりはDIY感がある。

 みるふぃ先輩は折り畳まれた白い布(恐らく衣装だろう)とアクセサリーの類を抱きかかえると、鼻歌混じりにそこへ入っていった。


 今日の撮影は、みるふぃ先輩の大好きな異世界系コスプレ。


 正確にはファンタジー系PCゲームのなんとかってエルフキャラクターに扮して、グリーンバックの前で写真を撮るらしい。

 背景は後々、世界観を考慮してそれっぽいのを合成するそうだ。

 ギャルなのにこうしたサブカルに興味があるなんて、最初に聞いた時はかなり意外だなと思ったものだけど、聞けばみるふぃ先輩はどちらかというと『エルフ』そのものに関心が強いらしい。


 エルフといえば、日本のサブカル界隈ではすっかり美形のイメージが浸透している。

 金髪で色白で、耳が長くて幻想的かつ妖精的。スタイルのいい美形の象徴。


 ゆえに、エルフ願望とでも言うのだろうか?


 みるふぃ先輩はそうした動機で、エルフキャラクターのコスプレを嗜むようになったのだと云う。

 写真部の壁には、実際にこれまでみるふぃ先輩が撮ったコスプレ写真も飾られていた。

 ご丁寧に額縁とタイトルまで付けられて、緑の森のアーチャー、聖なる泉の祈りしモノ、女神の末裔、輝きのハイ・エンシェントエルフ、など凝った出来栄えのものばかりだった。


「写真のなかだと、結構清楚な感じに見える……」


 思わず小声で呟いてしまった。

 それを耳ざとく、みるふぃ先輩がカーテンの内側で「えー?」とリアクションする。


「ゆっきゅんそれ、どーゆー意味ぃ? 私のこと、普段はどんなフーに思ってるのー?」

「あ、えっとっ! 魅力的だと思ってます!」

「わー! ずっる! なにその切り返しぃ? そんなの言われたら、ホントMK5だよ?」

「MK5……?」


 平成に消えたはずの死語パート2か?

 意味はたしか「マジでキレる5秒前」……だっけ!?

 ヤバい。

 僕は慌ててカーテンの前で頭を下げた。


「すいません! 悪気があったワケじゃないんです!」

「ちょ、頭下げなくたっていいしっ」

「でも、怒らせてしまったんですよね……?」

「え? ……あ、あー! そっちの意味で取られちゃったか! ごめんごめん! ダイジョブ。怒ってないよ。むしろ機嫌イイ感じ?」

「は、はぁ……」


 よく分からないが、どうやらみるふぃ先輩はMK5ではなかったようだ。

 僕の知ってる意味のほかに、何か別の意味があったってことみたいだけど……とりあえず頭を上げて問題ないだろう。

 僕は「ほっ」と胸を撫で下ろして頭を上げた。


 おっぱいがそこにあった。


「!?」

「もうすぐ着替え終わるからねー」

「──は、はい」


 カーテンの内側で、みるふぃ先輩は着替えを続行している。

 僕の前には、エアコンの風を受けてかすかに揺らめきながらも、たしかに視界を阻む布がある。

 薄いベージュ色。

 インテリアとしてはよくある色のそれは、近くで見るとうっすら透けていた。

 写真部の備品である撮影照明の眩い光のせいで、中にいる人間の輪郭がかなり分かってしまう。


(デッッッッッッッッッッッッカッ!!)


 シルエットだけでも、破壊力抜群。

 みるふぃ先輩はちょうど横向きになったようで、胸部から突き出た二つの釣鐘型が、それは見事に重力に逆らっているのがアリアリとこちらの網膜に焼き付いた。

 金髪長乳白ギャル。姉妹揃って爆乳で、しかも実家が牧場とかさぁ……お願いだから牛コスしてくれないかなぁ?

 僕はチンチンがとてもイライラしてしまった。

 しかも、みるふぃ先輩は視姦されている事実に気がついていない。

 カーテンの布を一枚隔てているから、どれだけ凝視してもバレない。


(っていうか、冷静に考えるといくらカーテンがあるからって、男女がふたりきりの空間で生着替えとかヤバすぎるでしょ……)


 手を出さない僕はバカかマヌケか、よほどのモラリストか。

 まぁそれを言い出したら、いろいろ今更ではあるんだけど……つくづく持て余してしまう。

 シュルシュル♡ 絹ずりの音。生殺し。

 一分後。


「ハァイ、お待たせ〜。じゃーんっ、今日は女神エルフのセイラ様でーす! どぉ?」

「エッチですね」

「お、おお! ゆっきゅん直球じゃん!? でもでもぉ、正解! セイラ様は見て通り、エルフの女神様なんだけどぉ、その聖なる力を狙われてしょっちゅう敵に捕まっちゃうキャラなの! お色気シーンも、かなり多い感じっ」


 最後は小声で、こしょこしょ話をするように囁かれた。

 イタズラっぽくニヤッと目を細めて、女神エルフに扮した金髪長乳白ギャルがピラっ♡ ピラっ♡ と衣装の裾をつまみカラダをくねくね。

 古代ギリシャの女神像とかが着ていそうなスリットドレスで身を飾って、頭には月桂樹の冠。腕とか足とか首には、金の輪っかのアクセサリー。エルフらしい付け耳もつけて、すっかりファンタジー感強めだ。

 けれど僕が一番気になったのは、おっぱいを包む白布だ。


 ……いや、違うか。


 その白布は、おっぱいを包み込んでなんかいない。

 むしろ逆で、おっぱいの方が白布を包み込んでいると言ってしまっても過言ではない。

 縦に長く、幅は狭く、みるふぃ先輩の特大長乳は両方ともが大事なところだけをギリギリ隠せているような有り様で、あまりの重量感ゆえか、もにっ♡ もにっ♡ と乳肉がハミ肉化している。我慢するのが過去一でキツい……


 僕、これからこんな女の子を撮るの?


「じゃあ、始めますか……」

「そだね」

「えっとそれじゃあ、このカメラを使えばいいですか?」

「あ、ううん。そうじゃないそうじゃない! ゆっきゅんはこっち〜」

「え、ちょ、ちょっと?」


 僕がグリーンバック前のカメラスタンドのところへ移動しようとしたら、みるふぃ先輩が腕を掴んでグリーンバックの方へ引っ張った。

 困惑する僕に、しかしみるふぃ先輩は例のにしし顔を浮かべる。

 その右手には、小さなリモコン。


「撮影はね、このリモコンシャッターを使うから」

「え? あの、それじゃ僕はなにをすれば……?」

「予定変更〜。ゆっきゅんには、カメラマンじゃなくて撮影アシスタントをしてもらいま〜すっ」

「撮影アシスタント?」

「そ! 具体的にはぁ、私の撮りたいのサポート係って感じ?」


 みるふぃ先輩は悪びれもなく、僕をグリーンバックの前に立たせると、自身はそのさらに前に立って背中を向けた。


「ゆっきゅん、ちょっと私の首絞めてくんない?」

「ファ?」

「も〜、さっきも言ったじゃん? セイラ様は敵にしょっちゅう捕まって、お色気シーンもたっくさんある女神エルフ様なの! だからぁ、ゆっきゅんは敵役ね?」

「マジっすか」

「マジで〜す♡」

「もしかして、さては最初からコレが目的でしたか?」

「そだよ? だってゆっきゅん、昨日みくると写真撮ったっしょ? それってズルくない?」


 みるふぃ先輩はぷくーっ! と頬を膨らませた。

 が、すぐに目を細めていつもの笑みになる。


「それに、前からこーゆーのヤッてみたかったんだよね〜。ゆっきゅん逞しいし♡」

「なるほど……」


 つまり、この状況は必然だったってことか。

 みくるさんの写真は巧妙に見えたが、みるふぃ先輩ならあの構図でも一緒に誰が写っていたか見抜けたっておかしくはない。

 姉妹ならコッソリ真相を打ち明けたという線もありえる。

 となると、これは少しだけ口止め料的な文脈も含んだ頼み事になるのか、な……?


「分かりました。出来る限りのご要望にお応えしましょう」

「イエーイ! そう来なくっちゃ!」


 僕はさっそく、みるふぃ先輩を後ろから首絞めした。

 白く細いうなじを見下ろしながら、両手を使って軽く挟み込むように圧迫感を与える。


「ッ♡ ……イイ、すっごくこれイイ!」

「僕の顔は映さないでくださいね」

「モッチロン! ちょっと写っちゃっても、あとで加工してちゃんと消すし! 最悪合成だって言えばイけるし? ねっ、ねっ、次は羽交い締めにする感じでやってぇ?」

「こうですか?」

「ッ〜〜♡♡♡ サイッコウッ!!」


 両腕を脇の下に差し込んで、ロックするように肘を曲げる。

 途端、みるふぃ先輩は分かりやすくテンションを上げて、興奮した様子でリモコンシャッターを押し始めた。

 フラッシュが連続で焚かれ、その閃光の数ごとにポーズ変更の指定が入る。

 驚くべきは、みるふぃ先輩もきちんと表情を変えて〝画作り〟に集中している点だ。

 敵に捕まり屈辱に耐える女神エルフというコンセプトを、忠実に実行している。


「ハァ……ハァ……♡ 不埒者……よくも私を……♡」


 時折りセリフまで交えて、みるふぃ先輩は撮影にのめり込んでいった。

 首を腕で絞める。お腹と首の前に腕をやって拘束する。髪を掴んでお尻を踏んで、ムリヤリのけぞらせる。

 指定されるポーズの次々に、僕も本当に不埒な気分になりかける。

 やがて、先輩は言った。


「次は……おっぱいに、手を回して……?」

「えっ」

「私のおっぱいを、こう……もみくちゃにするぞっ、て感じでさ……手を下から伸ばしてくんない……?」

「あ、ああ……分かりました」


 一瞬、ガチで触っていいのかと思って焦った。

 だが、みるふぃ先輩が言っているのは、あくまで過激な構図の話。

 僕は言われた通りに背後から手を伸ばして、ロケットみたいに突き出たおっぱいの輪郭、その先端の寸前で、五指を開いて手を静止させた。


「ダメ。もっと近くで……リアリティが大事でしょ……」

「──こう、ですか?」

「♡♡♡ フゥゥ……フゥゥ……♡ ありがと。じゃあ私は、腕をこうして……」

「──」


 歳上の先輩が、その滑るような細腕を頭上に持ち上げ、僕の顔を両側から挟み込んだ。

 リモコンシャッターの機械音と、フラッシュが瞬く。

 気づけば互いの口数は刻一刻と減っていき、湿った吐息と火照った肌が間近に感じられた。

 さすがに、空気の変化を感じ取ったのだろう。


「……あはは。い、いまのはちょっと、攻めすぎちゃった感じ……?」

「みるふぃ先輩……」

「ゆ、ゆっきゅん……」


 ポーズは変えないまま、僕の方を振り向くみるふぃ先輩。

 その瞳はよく潤み、常にはないドギマギした様子がうかがえる。頬も肩も汗ばむくらい上気している。

 僕もいよいよ、密着体勢に限界が生じてズボンの内側を堪え切れない。

 手も腰も、あるのはほんのわずかな理性と隙間だけだ。


 が、その瞬間──


 プツッ


「「?」」


 スルルルッ!


「! あっ、ちょっヤバ──!?」


 みるふぃ先輩のコスプレ衣装が壊れた。

 首元のリングに繋がっていた白布は、恐らく自作だったのだろう。

 端っこに丸い金具が留められていて、そこを糸で結んだだけのデザインだった。

 過激で大胆で、ドスケベに過ぎるエロティックコスチューム。

 だからこその魅力でもあったワケだけれど、みるふぃ先輩のおっぱいが大きすぎたこと、重たすぎたこと、サイズが最初から合っていなかったことが相まって、糸が二本とも千切れてしまったようだ。


 縦に長く幅は狭い。


 そんな白布が、「あっ」と驚く間にスルスル落ちていき──

 後ろにいた僕の目にも、その決壊は咄嗟に理解できて──

 偶然にも、僕の両手は布が落ちるのを止められる位置にあって──


「危ないッ!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜っンンンン♡♡♡♡♡」


 モ ギ ュ っ ♡

 ダ ユ ン っ ♡


 鷲掴み、両の五指が埋没する感触。

 埋没した五指と吸い付いた手のひらが、瞬く間に押し返される驚愕。

 白布の上からでも、ハッキリと脳内に充足した多幸感。

 みるふぃ先輩は自分の両手で口元を押さえて、必死に何かを堪えていた。

 堪えながら、膝から下の力が抜けていき腰が下がって行くようだった。

 そうなると僕も、手を離すワケにもいかず一緒に床に腰を落とすしかない。


 ぶるんっ♡ もみゅぅ♡

 ぶるんっ♡ むにゅゥ♡


 先ほどまで白布が果たしていた役割──すなわちおっぱいを支えて闇のなかに閉じ込める仕事を、僕の手のひらが懸命にこなす。

 とてつもない暴れぶり。ほんの些細な身じろぎひとつで、暴れ牛の猛攻かと思うほどおっぱいが突き出してくる。


 僕はもう……完全に勃起していた……


 普段は遊び慣れていそうなギャルの先輩女子が、今この一瞬、僕に乳を揉まれてへたり込んでいるのだ。

 もたれかかるように男の足の間で背中を預けて、これはもう……僕がそう思った時。


 ピー、パシャっ!


「……先輩?」

「ゆっきゅん、ゴメン……リモコン、押しちゃった……♡」

「──絶対、誰にも内緒ですよ」

「うん……ありがと、ね……♡」


 そう言って、みるふぃ先輩は子鹿のように立ち上がり、おっぱいを自分で隠しながら床に座ったままの僕に振り向く。


「ゆっきゅんのおかげで……めっちゃイイ写真撮れちゃった♡ ……ねえ」

「──なんです?」

「また、頼んでも……いーい?」

「──もちろん」

「あはっ! ゆっきゅん、ヤラシぃカオしてな〜い……?」

「そんなの、みるふぃ先輩だって……」

「……にしし」


 窓の外からは、気の早いセミの声。

 ああ、夏の鼓動が鐘を打つ。


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