理《り》に触れる翼竜《スカイドラゴン》を墜とす槍《スピア》――⑦

「しばらくここに滞在しようと思うんだ」


に触れる翼竜スカイドラゴン】を討伐したのちのこと。


 諸々もろもろ一段落ついてから伝えられた、お師匠様からの突飛な提案に、ボクたちは驚き――は、しなかった。


 そうなるかもしれないとは、思っていたから。


「いやァ、本当にね、素晴らしい討伐成果だ、最上位の討伐者セイバーでさえげられたかは分からない討伐任務をこなしたキミたちの実力は、もはや証明されたようなものだろう。いやホントに。――――……ただ……」


 お師匠様は、その空恐そらおそろしい笑みに、一滴の汗を浮かせて言ったのだった。


「なんか、思ったより、死にかけてたねェ……」


 お師匠様、まあ、こんなもんですよ!


 私たちの実力、ヘヘ、しっかり見てくれた!?


 ――こういった感じの現実を、お師匠様は想像していたのかもしれない。

 実際のボクたちは、【に触れる翼竜スカイドラゴン】討伐後、三半規管の損傷そんしょうで歩くこともままならなかった。


 頑張ったほうだと思うんだけどな……といった、モニカのしょぼくれた顔を見つめながら、お師匠様は話を続けた。


始終しじゅうここにいることはできないんだけれどね、しばらくは、ここを拠点きょてんにしようということだ。そして、ここに帰ってくるたびに、私はキミたちに新しい討伐依頼を持ってこようと思う。ひまな時間を見て稽古もつけられるしねェ、今のキミたちなら私との稽古も意味をすだろうから、それがいいと思ったんだよ。――うん、本当に、確かに成長はしていたねェ」


「へへ……!」


「『アレ? なんか、また死にかけてないか……?』とも、正直、思ってしまったけれど」


「うぅ……」


「まあ、そこらへんも、修行でどうにかなるだろう、きっとね。キミたちは確実に『成長することを実現していた』のだから。キミたちならば、現実として、更に邁進まいしんすることだろう」


「「頑張りますッ。――ご指導ご鞭撻お願いいたします!」」


 そんなわけで、これからは時たまに、お師匠様がこの家を訪れてくれる事となった。


 お師匠様と、また顔を合わせる機会が増えることは、嬉しい。


 ただ――……。


「お師匠様。でも手心はお願いしますね」


 それだけは、ボクは汗の浮いた笑顔で伝えたのだった。


 ――しかし悲しかな、お師匠様はそれについては冗談としかとらえてくれず、フッ――と、どんなボクたちの心情を想像しているのか、またあの達観たっかんな笑顔で、んだのだった。


 ボクとモニカは顔を見合わせて、この先々に待ち受ける試練に、さまざまな思いを宿やどした一滴の汗をらした。


 きっと大丈夫。

 でも、ボクたちのさきは、前途多難ぜんとたなんだ。




に触れる翼竜スカイドラゴンを墜とすスピア』――了




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壱里。

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