第99話『たたり』


   ※


 たたり、たたられ、たたられる。


 私の家は、祟(たた)り屋だ。

 色んなひとに頼まれて、対価をもらい。ひとやなにかを祟る。


 祟りと呪いは、似ているけど別だ。

 

 祟りは神やあやかしの力をもって、災いをあたえる。呪いは呪う行為によって、災いをあたえる。

 祟りのほうが、呪いより強く。呪いのほうが、色々な制約がある。


 ものごころついてから、私は、厳しい修行をさせられた。


 神やあやかしの力を得て、祟る行為が出来るように。祖父と父に命じられて、蟲の箱の中に閉じ込められたり、怨霊との暮らしをさせられたり。

 身体と心を、ぼろぼろにされても。家の人間は助けてくれなかった。


 だから、十四歳のとき、祖父と父を祟った。


 私は、一族から一目置かれるようになり、修行をしなくて良くなった。


 祖母と母は、言いなりになり。祟りの仕事を、中三の頃から大学を卒業するまで務めた。

 

 私は、大学を卒業して、祟りの仕事をやめた。

 祖母と母が、死んだからだ。私が、仕事でミスをしたから、死んだのだ。

 

 私は、親族会議で邪魔をするなら皆を祟ると脅し、普通に生きていくことにした。

 学校の教員になり、普通の仕事と掃除業をすることになった。


 学校には、色んなものが集まる。神やあやかし、生霊、地縛霊、呪い。それらが、生きているものをおびやかすことがある。

 おびやかすものを消すのは、祟るよりとても楽だった。


 この世界は、生きているものだけでなく、色んなものから成り立っている。

 世界の秩序を保つ為、祟るという役目がいる。

 

 父と祖父に言われたとおり、ふたりの望まないかたちで生きているけれど。


 私は、この世界で、生きていくのが。とても好きだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る